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第3章 本格的侵攻開始   か?

第14話 静かな年の始まり?

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 井守先生を、美月と送って行く。

 なぜかこの時間でも、電車が動いていてびっくりしたが、年末年始は動いていると常識のように返された。ただ最近は、運休が増えてきているらしい。

 電車の駅3つほどで、目的の駅に着く。
 先生の事務所と同じ駅だ。
 事務所からほど近いマンションのロビーで先生と別れ。
 建物を出た所で、美月と二人ゲートに沈んでいく。

「ただいまぁ」
 一応。深夜なので、静かに帰宅のあいさつをする。
こっちが早く帰ってきている感じはないので、ダンジョン側にいるのかと思ったら、ダイニングで皆がうどんをすすっていた。

「こんな夜中に、何やっているんだ?」
「いや、結構寒かったので、うどんを茹でて食ってます」
「それは良いけど、釜揚げか。卵を乗せて、醤油とかポン酢とかバターもうまいらしい」
「釜揚げって何ですか?」
「うどんは茹でてから、一度水で締める。それを湯で温めてから湯切り後、出汁を張るとかけうどん。その水で締める行程をなくしたのが釜揚げ。まあうまいけどな」

「へー」
「釜揚げは、一気に食わないと伸びるぞ」
「そうなんですか?」
 一気に掻き込もうとする、芳雄達。

「冗談だ、口の中やけどするなよ」
「……」
 食おうと大口を開けて止まる芳雄達。ちょっとにらんでいる。子供たちは素直だな。

「……しょうがないな、ショウガを入れてあげよう」
「やめてください」
「……一司、私でも、無理だわ」

「何がだよ。釜揚げは、ショウガを入れるとうまいんだぞ」
「さっきの駄洒落じゃないの?」
「あん?」
「えっ俺は、ショウガが不得意なので、断っただけです」
 一翔は、ショウガが嫌いなのか、ネギも嫌いとか言っていたな。ガキみたいなガキだな。

「えっ、駄洒落と思ったのは、私だけなの?」
「ショウガの下りか、そんなものに突っ込むなよ」
「だって……」

「まあいい。明日の午後から、松沼家に突撃する。全員参加だ」
「えっ人数が増えるなら、連絡しておかないとだめね」
「2~3人くらい大丈夫だろう」
「毎年、仕事関係の人が、挨拶をしに来たりするのよ」
「と言う事は、警察関係者とかが、わさわさしている所へ突っ込むのか?」
「そうね、でも一司は、一度きちんと顔見世をしておいた方がいいわよ。いろんな所で警察とも絡むんだから」
「まあそれは、そうだな。もめ事を一々説明するのも、面倒なんだよな。そういうのも顔が売れれば減るか。明日はスーツを出そう」

「まあそれじゃあ、みんな早く寝ろよ」
「「「おやすみなさい」」」


 ダンジョン側に移動をして、と考え。ダイニングから廊下へ出たときに、電話がプルプル震える?
 新年のこんな時間に着信? 一翔の姉ちゃんじゃないよな。あの人から電話受けるとなぜか後ろに居そうな気になるんだよな。

 電話を見ると、会計課課長、永瀬さんの文字。
 ため息をつきながら、電話を取る。

「おめでとうございます。永瀬課長さん」
「ああ、おめでとうございます。出てくれて良かったよ。それで早々で悪いが、対応してくれないかね」
「どうしたんですか?」

「〇〇町のダンジョンだが、なぜかオーガが出て来てね。非常にまずいんだよ。近くに神社があって、人通りもまだあってね。警察が囲んで、野次馬を近づけないようにしているが、なるべく早く解決したい」
「わかりました、ちょっと待ってください」

 電話を口元からはずし、美月に「ちょっと仕事に行ってくる」と伝える。
 玄関へ行き靴を履くと通話しながらゲートに潜る。
 なぜか、分かるようになったモンスターの背後に現れ、通話を再開。
「今現場に来たんですが、永瀬さん。この一匹だけでしょうか?」
「えっ、ああそうだ。しかし何でもありだな」

 オーガの周りをシールドで包み首を飛ばす。
「終わりましたので、帰りますね」
「ああっ、ご苦労様でした。プチ ツーツー」

 電話を切って、ゲートを開き戻ろうとしたが、周りにいた警察官が何か言っているし、フラッシュもたかれているな…… 面倒になる予感がガンガンにするが、これも会社の宣伝だ。周りを相手にせず、ゲートに潜って帰った。

 後で聞いたが、永瀬課長さんが警察にすぐに連絡を入れ、現場は解散となったようだ。全く正月早々。初殺生だ。ろくでもない。

 家に戻って、ダンジョン側の風呂に行く。利用人数が増えたので、年末に増設して男湯と女湯に分けた。少しゆっくりとして、風呂上りにビールの350mlをあおる。
 時計を見ると4時過ぎ。なんとなく、ご来光を拝みたいなと思ったが、たぶんまだ3時間くらいはある。明日は午後に合わせて松沼家だし無理だな。

 風呂場から出て自分の部屋に向かうと、途中で美月の部屋に引っ張り込まれて、今年の初めての行事を半強制的に執行された。

 そして、朝6時50分頃、あったかいコーヒーの入ったマグカップを両手で抱え、家の屋根の上で俺は初日の出を眺めている。

 寒い……。
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