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第4章 少しずつ変わって行く世界

第24話 昼下がりの雑事

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 明日は、鵜戸家の人を連れてダンジョンへ行く。
 その段取りをしていると、携帯の謎アプリに着信があった。

〔はい、神崎です〕
〔私はアメリカ大統領をしている。ジェンセン・アレクスというものだがね〕
〔それは…… どうもご丁寧に〕
 何か怪しいな? 

〔実は、フランスに行ってもらいたいんのだよ。今こっちは夜中なのに、起こされた〕
〔それは、ご苦労様です〕

 その疲れた声に、つい笑いが出た。聞こえたようで
〔笑い事じゃないのだよ。君に連絡するのをみんなが怖がってね。な・ぜ・か!〕
〔別に、取って食いやしませんけどね〕
〔口を滑らすと、都市のひとつでも消えそうだと、噂になっていてね〕
〔まあ、そんな事もあるんじゃないですか?〕
〔あるのか?〕
〔冗談です。アメリカじゃあるまいし〕
 そう返すと、言葉に詰まった。

〔ぬっ。あれはだな……きっと色々とあったのだよ。それでだ、フランスの軍事省(ぐんじしょう)のアラン・スフレと言う奴がだ。君の実力が見たいから、すぐ寄越せと言ってきたらしい〕
 都合が悪くなって、話を切り替えたな。時差はあれ? 今午後2時過ぎだから、アメリカ1時過ぎかフランスは7時過ぎ……か。大変だな大統領。

〔それでだな、8時にこの座標。パリのヴァンセンヌ城だな、座標は添付して送った。フランス人なのに、時間厳守と言ってきた。ふふっ、笑えるだろ。彼らが遅れても、城を壊さないようにな。頼んだよ。私は寝る〕
 そう言って通信が切られた。

 添付ファイルには、テキストで『48.84309070642712, 2.43545391606089』の文字。地図にペーストする。
 ここか。時間を見ると午後2時35分。
「ちょっと着替えて、行ってくるか」

「あと12分くらい。ちょうどいいな」
 意識を広げ、パリのヴァンセンヌ城前の広場を見る。
 軍関係者かな? 城の中に人の反応はない。
 広場へと行ってみるか。

〔中に入れないとは、どういうことだ。我々は国の安全を守るために、努めておると言うのに〕
〔朝が早いので、担当者に連絡が取れないとのことです〕
 なんだか、わいわい言っているが、あれかな?

〔すいません。神崎と言います。アラン・スフレという方に、呼ばれたようですがどこにいるか分かります?〕
〔アラン・スフレは私だ。君が神崎か〕

 そう言って、腕時計をちらっと見る。
〔ほう。感心だな。時間前じゃないか〕
〔いや普通でしょう。日本で時間に遅れるなんて切腹させられますよ〕
〔腹切り! いやそこまででは、ないだろう?〕

〔いえ。1分遅れても、休みを出してタダ働きだし、万死に値するとまで言われます。それが日本です〕
 そう答えると、口をパクパクしていた。日本のハードル上げすぎたか? あらん、スフレ。なんていうふざけた名前だ、3歩歩けば忘れるだろう。

 だが、この言葉に感銘を受けたアラン・スフレは、厳格な行動規範を作成。実行させて軍の中で恐怖の大王と呼ばれることになる。

〔じゃあ、話は聞いていますが、国内の野良モンスター殲滅でよろしいですか?〕
〔そうだ。わが軍の力を持っても、うまくいかない事案だ。チームかと思ったが、君一人が来て、いか程の結果が出せるのかが楽しみだ。そのちか……〕
 横でうだうだ言っている、おっさんの言葉を遮る雷の轟音。それは、フランス中で起こった。

〔終わったぞ。確認してくれ〕
〔なんだ今のは? 終わった? ふざけるな。お前が来てまだ、1分も経っていない。我々が、弾薬と兵をどれだけつぎ込んで……〕
 そこへ、兵が報告をしに来た。

〔先ほど発生した雷に打たれ、野良モンスターが消滅しました。魔石も残っていないようです〕
〔雷? それが、君の能力という証拠は?〕
 それに応えるために、無言でおっさんの周りを囲むように雷を落とす。
 5発ほど打ち込んで、
〔もっと踊って確認するか?〕
 そう聞いてみる。少し威圧をかけて。

〔いや、すまない十分だ〕
 プルプルしながら、彼が答えた。

 満足頂いたようなので、携帯の謎アプリを起動して連絡をする。
 するとなぜか、
〔大統領首席補佐官 ジャレッド・バタツギです。大統領に頼まれて報告をお待ちしていました〕
 大統領め、寝るのを優先したな。

〔夜中に大変ですね。フランス終わりました。スフレさんに代わります?〕
〔そうだね。代わってくれるかい〕
 携帯を、いまだパクパクしているアラン・スフレさんに渡す。
〔アメリカ合衆国大統領首席補佐官 ジャレッド・バタツギさんです。代わってほしいと〕
 そう言うと、口ぱくぱくから、目玉真ん丸に変わった。

〔彼の実力は、存分に見ていただけたでしょうか?〕
〔ああ確認した。いや、しました〕
〔それは良かった。では、確認も取れましたので、携帯を彼に渡していただけますか?〕
〔承知した〕
 そう答えた、彼は携帯を返して来た。

〔じゃあ、もう帰っていいかな?〕
〔はい。お疲れ様でした〕
 その言葉を聞いて、ゲートを開く。

 彼が帰った後……。
 さっき起こったのは、夢ではないかと思った。
 そんな刹那の出来事。
 この作戦が始まって3か月以上。消しても消しても湧いてくるモンスター達。それが一瞬だ。
 それに、なんで直接アメリカ合衆国大統領首席補佐官に電話をできる。

 やつ、いや彼は何者だ? モンスター駆除会社のスタッフではなかったのか? そんな彼は、少しして再起動をする。
 頭を切り替え、ダンジョン掃討へと作戦をシフトする命令を出した。
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