俺達は暗闇の底で、そっと世界を守る。

久遠 れんり

文字の大きさ
15 / 55
第二章 異物混入

第15話 異変

しおりを挟む
 その晩、なぜか小遣い稼ぎに颯司が来なかった。
 昼間は、学校がなんだかザワついていたし。
 雫達はねていて、震動と音に気が付かなかった。

 その晩、またもトイレ前で、颯司はアマンダと向かい合う。
 颯司は急激に解放された能力のせいで、体調が最悪だった。
 頭痛に吐き気、体は全身筋肉痛のような状態。

 親たちはニヤニヤしながら喜んでいるし、よく分からない。

 体調の悪さから、アマンダにポスンと埋まる。
「おう、どうしました。主」
 これはいけないとばかりに、アマンダは颯司を部屋へと連れて行く。

「開けます」
 ドアを開け、中へ入ると、日本の中学生の部屋。

 机と、本棚。
 そこに飾られた、雫達との仲の良さそうな写真の数々。

 ただ、手にぶら下げているモノは、見たことのないのない生き物たち、その他にも、今よりも幼い彼らが、喜んで登っているのは、体高だけで三メートル近い牛のようなモノ……
 どう見ても、顔が人間のように見える。

 アマンダは知らなかったが、くだんと呼ばれる妖怪。
 厄災や天変地異、流行病などが起きると言われている。
 一般的に、コイツが生まれた時には予言を残し、すぐに死ぬとか言われているが、そうでない物も現れ、この時は逆に厄災を及ぼした。

 まだ幼かった彼らに、親たちが勉強のために見せたもの。

 その数々の怪しい写真に、アマンダは引き込まれていく。
 颯司はベッドへ寝かされていたが、ふと気が付く。
 部屋の中に、人の気配。そして丸い何かがこちらを向いている。

 風を使おうとするが、上手く行かない。
 少し体を起こし、集中をするが、やはり言うことを聞かない。
「ああそうか、これはまた夢か」
 口の中だけでそんな事をつぶやき、はっきり見えだした記憶に残るアマンダのお尻。
 丁度暗く、アマンダは写真を見るために前屈みで見ていた。

 そのため、颯司からは、足の生えたお尻が浮いているように見えた。
 最近急に女性に対して興味がでて、こんな夢まで見始めたのかと。
 手を伸ばし触ってみる。
 それは柔らかで、暖かい。

 アマンダは驚いたが、ペタペタと触る触り方に、嫌らしさを感じず振り返る。
 急に振り返ったことで、上半身が生え驚いた颯司だが、胸に手を伸ばす。
 その行為を、アマンダは体調の悪かった颯司が、きっと母親を求めていると考えた。

 少しためらったが、ベッドの中に入り込み抱きかかえながら颯司の頭をそっとなでる。

 颯司はそっと胸に顔を埋める。

 翌朝、颯司はすっきりした頭で悩む。

 横で嬉しそうな顔で眠るアマンダ。
 彼女は、甘えてくる颯司がなんとなく嬉しかった。
 母性というのだろうか?
 いい加減、アジア人は童顔で幼く見える。
 恋愛などからは外れた存在。

 だが相手の颯司は複雑。

 まあ、アマンダを横目で見ながら、着替えて下へ降りる。
 朝は落ち着いたのか、両親もにやけ顔がなくなっていた。

「行って参ります」
 そう家はどうこうなかった。

 だが、雫達が落ち合ったすぐ後、彼女達の鼻が動き怪訝そうな顔になる。

 颯司から、濃厚な女の匂いがする。
 雫と朱莉は顔を見合わせる。
「「アイツだ」」
 無論すぐに責めたりはしない。
 だが少し濃厚すぎる匂いに、疑念を持つ。
 

 でもまさか……
 風祭の両親が、そんな事など許さないだろうと言う思いがある。

 そう、基本的に結界と、警戒の風が家の中を吹いている。
 風祭家は少し特殊なのだ。

 そんな家でまさか?
 まあ、目覚めたと言っても、まだ中一男子そんなにいきなりエロい方に走らない。
 高校生とは違うのだよ。

 その日も、風祭が起きていると、教室は騒然となったが。


 その晩はきちんと颯司はやって来た。
 だが、今朝の一件で、雫と朱莉は授業中の眠りが浅く調子が悪い。

 青坊主が現れて、人を襲うということで警戒をしていた。
 ぼやっとしていた朱莉は、トイレに行きたくなり、公園のトイレへ向かった。時間が時間ですでに真っ暗。
 仕方が無く、鬼火を灯しながら用を足していた。
 まだ設備が古く、くみ取り型。

 伝承にもあるが、青坊主はトイレから出てきて脅かすことがある。
 声にならない声を上げ、朱莉は個室から出ると、火の固まりを個室にぶち込む。

「どうしたの? 大丈夫……」
 近くにいた、雫がやって来た。
 そう大体、二人はペアで近い距離で行動している。

 だが颯司が、力を増し練習がてら遊んでいた風纏装かぜまそうのおかげで、あっという間に来た。
 トイレの炎は、雫が消し、焦げ後を手慣れた感じで洗浄をする。

 朱莉は、汚したズボンと下着を警戒心が薄く、洗って乾かしていた。
 そこに、すでに颯司が来てしまった。
 今まで幾度も見られたことがある。
 だけど、朱莉も成長をしていた。
 幼いときとは違う。

 どうしようもない、気持ちが、そう今までとは違う気持ちが湧いてくる。
「ごめん。ちょっと今見ないで」
 なぜだろうドキドキが収まらない。
 恥ずかしい。顔が赤くなる。

 颯司は背中を向け、周囲を警戒してくれている。
 その背中が、いつもと違う。

 朱莉の胸の中で、パキッと音がする。
「あんた、パンツも穿かずに何してんの? ぼちぼち陸斗が来るわよ」
 片付けの終わった雫が出てくると、朱莉の状態を見て忠告をする。

「それはやだ」
 そそくさと、下着とズボンを穿く。
 その向こうで、後ろを向く颯司に気がつく。
 雫も、少し変わった颯司に気がつく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています

浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】 ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!? 激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。 目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。 もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。 セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。 戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。 けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。 「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの? これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、 ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。 ※小説家になろうにも掲載中です。

僕の異世界攻略〜神の修行でブラッシュアップ〜

リョウ
ファンタジー
 僕は十年程闘病の末、あの世に。  そこで出会った神様に手違いで寿命が縮められたという説明をされ、地球で幸せな転生をする事になった…が何故か異世界転生してしまう。なんでだ?  幸い優しい両親と、兄と姉に囲まれ事なきを得たのだが、兄達が優秀で僕はいずれ家を出てかなきゃいけないみたい。そんな空気を読んだ僕は将来の為努力をしはじめるのだが……。   ※画像はAI作成しました。 ※現在毎日2話投稿。11時と19時にしております。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~

みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった! 無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。 追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。

処理中です...