俺達は暗闇の底で、そっと世界を守る。

久遠 れんり

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第三章 暗躍する者達

第27話 出逢い

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「お食事お食事」
 嬉しそうに喜んでいるのは、鬼童丸。
 食事をして、大分おっきくなってきた。
 もう少しで、高校生くらい。

 この年くらいになると、妙に美形なため、ナンパができる。

「ねえ、そこの女の子たち、時間ある?」
「えっ、あっはい」
 モテそうな切れ長の目をした美形。

 鬼達は、今流行の顔をコピーした。

 まだ、少し薄暗くなったばかりの時間。
 友達と二人。
 警戒心は薄く、相手は若そうだけれど美形。
 このチャンスには乗らなければぁ。

 彼女達は、ノリノリで相手をする。
「いやあ最近ここいらに、引っ越してきて、ほら地図はスマホで分かるけれど、店の評判は、星じゃなく、地元の人に聞きたいじゃない」
 彼はしれっとそんな事を言う。

「あーまぁ、そうですね。評判が良いけれどいくと最悪ってありますものね」
「だよね、おごるから店紹介をしてくれない?」
「ちょっと待ってください」

 そう言って彼女達は、相談を始める。
「おごってくれるならこの辺り?」
「いやあそこは、好き嫌いが分かれるから、無難にこの辺りは?」
「あんたオッサン?」
 居酒屋は、却下された。
 見た目高校生くらいを、何を思って居酒屋へ連れて行こうとしたのかは不明である。

「いや、酔わせてさ」
「未成年を飲ませば店も罰金なの、できるわけないじゃん」
「じゃあイタリアンでも行って、その後に宅飲み? あたし二年ほど彼氏いないんだわ。それにこの子なら、元彼に会っても自慢ができる」
「えー。私も欲しい」
「あんた彼氏いるじゃん」
「モチ、別れる。ソッコーで」
 そう言って、満面の笑み。

 最近は、親しくなればとりあえず寝てみるという。
 そんな軽さが流行。
 彼女達は、その類いだった。

 彼のおごりで、イタリアンのアラカルトでシェアをしながら食べる。
 ワインを飲み、彼女らは気合いを入れる。

「これで帰るのは勿体ないでしょ。うちが近くなの来ない?」
 彼女は彼の手を取り、じっと見つめる。

「じゃあ、少しだけ、まあ送っていきます」
 そうして彼女達は、家に送り鬼を招いてしまう。

「いただきまーす」
 二人がかりで、彼を襲い、大満足後。
 かれに食われることになる。

「げっ。食い過ぎだ。一人は、お持ち帰りにすれば良かった……」
 体が顫動運動せんどううんどうをする様に、変化をする。だが、食べた分だけ体が大きくなり、服がキツい。
 高校一年生が、いきなり三年生くらいとなった。

「服を買わなきゃな」
 彼は、彼女達が勧めてくれていたショップへと向かう。


「鬼は、鬼はいねぇが」
「それって逆だろ?」
「そうか?」
 なまはげは、『泣ぐは居ねがー』『悪いは居ねがー』と家々を回るが、角は有っても本来鬼では無い。

 年に一度、決まった時期に人間の世界に訪れる来訪神らいほうしんだそうだ。

「でもいたぞ」
 かれが、顎で指し示したのは女。
 橋姫はしひめが鬼となったのは、夫を横取りされて嫉妬に狂ったから。

 そう、彼女は嫉妬深い。
 女といちゃつく男を見れば襲ってくる。
 そう、理不尽なこと。

 だが、その日は、様子が違った。


「あんたら早く逃げな」
「はい、ありがとうございます」
 一般市民が逃げた後。
 目の前に居る女の口は、頬の辺りまで裂け、凶悪そうな牙が見える。

 そこから始まった戦闘は、こそっとはいかなかった。

 公園の木はなぎ倒され、公園脇の道路では戦闘の余波で車がひっくり返る。
 それはすぐに撮影をされて、拡散をされていく。

「やべえ、顔を隠せ」
「マスクしかねえよ」
「色々がぐだぐだだ」
「仕方がねえ」

 彼らは珍しく、男ばかりの世代だったようだ。

 仲は良いのだが、モチベーションに斑がある。

「風で落とせ、土檻で閉じ込める」
 凶暴な鬼。
 意識の大半が、そちらに向いてしまった。

 そう騒ぎになって、やって来るものは警察と野次馬、そして鬼の仲間……

 土檻を造ろうとしていた、土橋どばしの背中から腹に剣が一本突き通る。
「がはっ」

 風谷かぜたにはあわてて周囲を探査する。
 目の前に居た、橋姫はしひめから目を離してしまった。
 当然噛みつかれる。
 首から盛大に血が吹き出る。

「畜生」
 火向ひむかいが炎をばら撒く、しかし、橋姫の動きが速く、捉えきれない。
 そして、そっちに集中をしていると、首がなくなった流水ながれが倒れ込んでくる。
「ちく…… がっ」
 気が付けば、腹から剣が生えていた。

「ふっふ。こいつらの肉は、何か美味いんだよ。帰るぞ」
 鬼達が力を取り戻す度、こちら側の被害が、徐々に加速をしていく。


「またやられたようだ。消息不明。直前まで派手な立ち回りをして、ネット上に動画が上がっていたが、その後何かが起こったようだな」

 総本家、祭家でも危険性が認知されていく。
 そうして子ども達は、いよいよもって外出禁止となる。

「もう、なんなのよ。鬼なんかスカッと退治してよ」
 朱莉はやっと補習が終わり、夏休み本番。そして完全外出禁止が発動。
 補習は、例外措置。苦笑いをしながら許可をくれたらしい。そして、そう。近所の俺達の家へと来るくらいなら、問題は無いが、外はだめ。
 特に町中では、日々人が消えていると父さん達から聞いた。
 いきなり日本は、物騒になった様だ……

 だが……
「あんた誰? 体からそんなに死臭をさせて」
 縁がある者達は、出逢うようだ。
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