俺達は暗闇の底で、そっと世界を守る。

久遠 れんり

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第三章 暗躍する者達

第35話 奇妙な現象と噂

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 まあ新学期が始まった頃には、皆忘れているだろ。
 そう思っていたが、俺達の行動はその夜のうちに同級生に広がった。

「いつも寝ているアイツが、いつも寝ている女子とキスをしてた。それも複数……」
「なんだこりゃ? 寝ている女の子って隣のクラスの。許せん。眠り男のくせに」

 おかげで、陸斗も誤爆を受けたらしく、羨ましいぞ同士よ。などというメールが来たようだ。

 さてまあ、それは良いが、骨だよ骨。

 白い光とオーロラに包まれているが、意外とキラキラしているだけで消えない。

「消えないなぁ。父さん達が苦労している」
「手伝ってあげる」
 朱莉がこそっと、炎を放つ。

 黒い炎は目立たない。
 だが見ていると、表面に何か膜のような物が張られて、そいつが、浄化をはじいているようだ。

 俺は考える。
「朱莉、もう一回」
 ベタなことに、口移したこ焼きがきた。

「違う。火の方」
 そう言うと、ああという感じで、撃ち始める。
 それを風で包み、アイツの頂点。
 一カ所に集中的に攻撃をする。

 とうさん達の攻撃と、それをじゃましないようにコントロールをして、一カ所を壊す。
 皆には見えていないだろうが、今骨の脳天には、ちゅどどどどと風に包まれた朱莉の炎が撃ち込まれる。
 すごいことに、何でも焼き尽くす炎を、アイツのシールドは弾いている。

 風に、浄化を乗せる。
 
 白い光が、宇宙から落ちてきて、骨の脳天へと吸い込まれるような光景が、夜空に浮かび上がる。

 そして、ある点で限界を超えたらしく、奴のシールドがはじけた。

 その瞬間に、周りを囲んでいた光達が、一気に雪崩れ込む。

 それは収束をして、点となり、はじけた……

 広い光と黒い炎は混ざりながら、空へと立ちのぼっていった。

 すると、その日結構大量の流れ星が降ったらしい。
 吹き上げられて燃えた骨。
 火の玉が落下をして燃え尽きる。

 中には、いくつか人工衛星が燃えたらしいが、詳細は伝えられなかった。
 物騒な事に、未登録な物が日本の上空を回っていたようだ。
 父さんからの情報だ。

 一応手を出したことを叱られるかと思ったが、褒めてもらえた。
 もう一歩で困っていたようだ。

 だが、ほのぼのしている颯司と違い、親父さん達の顔は、驚きそして少し呆れていた。
「血筋というか才能だな」
 やっと封じたと言うより滅した、がしゃどくろ。
 術を放っていた親父さん達も、実は危なかった。
 術を使うのも、個人の限界という物がある。


「ああまあ、鬼と呼ばれたあの方の遺伝子を持ったクローンだし、強化されていたんだろう」
 過去の記憶。
 多くは未だに封じられ、情報は秘匿されている。
 預かり監視をしながら、颯司を育てている風祭 飄重かざまつり ひょうえは苦笑いをする。

「情報は秘匿されて少ないが、そうだな。枠が人間からはみ出しているらしい」
 ほうという感じで、周りの三家は驚く。


「あの出力と、浄化の能力は俺達と少し違うな」
 確かにという感じで、火祭 剛炎ひまつり ごうえんが顎の無精髭をなでる。

「ああ、浄化の光。金色が混じり美しかったよ」
 一番近くで見ていた、飄重はうんうんと頷く。

「他人事みたいに言うんじゃないよ。颯司が暴走をしたとき、滅する事が出来るのか?」
 水祭 流水みずまつり ながれが、睨む。
 最近雫が、颯司に懐いているために、少し機嫌が悪い。
 もう少し距離を取って、清く正しい付き合いををしろと言ったら、最強の呪文言霊。『お父さん嫌い』を喰らったそうだ。
 三日寝込んだとか……

「いや、今でも無理だろう。アイツは強い。するなら不意打ちだな。女には弱そうだ」
 そう言ってニヤニヤしている。
 アマンダの前で見せる、ギクシャクとした態度。
 颯司の弱点として、風祭の家で共有されている。

「その辺りは後天的な物か? あのお方ははべらしていたと聞いたが」
「そうかもな。修行を積むとあのお方のようになるのかもしれんが、それまでには結果が出るだろう。滅するか、敬い奉るか」
「そうだな。力があれば、俺達が楽ができる」
「ちがいない」

 普段は、穏やかで優しい表情の颯司。
 よほどのことがなければ、このまま真っ直ぐに育つだろう。

 悪しき心に染まり、おのれを見失ったりしない限りは大丈夫だろう。
 善と悪、神と魔は表裏一体。
 阿修羅となるのか、菩薩となるのかは本人次第。

 俺達の組織でもアイツのような奴がでるんだ。
 そのおかげで、颯司は生まれたのだが…… 彼は、大事な物を失い、届かない力を求めた。
 
 そう、祭 成業まつり じょうごう元祭家の当主。
 現当主の祭 導示まつり どうじの父親。

 妻を失い、狂ってしまう。
 妻の組織、そして偉大なる術士だった父親祭 神部まつり かんべの遺伝子を使い、鬼の因子を加えた遺伝子改変を行った。

 秘密裏に行われていた実験だが、明るみに出た。
「おやめください」
 そう言って皆が押し入ったとき、ご当主は満足そうに笑っていた。

 そう、傍らで泣いていたのが、颯司。
 奥方であった、夕月様の特徴を持った男の子。

 成業様は、目を離した隙に自害をした。

 そして、俺達はすべてを廃棄し、事実を隠蔽。
 すべてを知っているのは、四人と、現当主の祭 導示まつり どうじのみ。
『その子を育て、力となるようなら迎え、害となる様なら滅せよ』

 そう言われて、一二年、いや、もう一三年。
「どうなることか……」

「風祭って言う奴、女たらしだそうだぞ」
「違うわ、風祭君がたらされているのよ。守る会を結成すべきね」
 夏休み明けには、騒動の起こる予感が吹き荒れていた……
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