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第一章 異変の始まり

第3話 ゴブリンハント

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「では作戦」
「ちょっと待て、詳細を教えてくれ」
 食堂に併設された、カフェ側。
 この場には、まだ2人。まあ授業さぼっているからな。
 大抵、悠翔の連れが、あと5人いる。

 俺と悠翔は、情報系学科。だが、機械系学科に2人。
 工藤創次(くどうそうじ)と木下大器(きのしたともき)。
 建築系学科に2人。
 安田建太(やすだけんた)と歩坂万結(ほさかまゆ)。
 化学系学科に1人。
 薬研理花(やげんりか)。

 去年、一般教養。つまり共通科目の時に、悠翔がナンパした。
「ノート見せて」とか、「機械? おもしろそうだな。俺ら組んだら無敵じゃね」とか「建築?じゃあ設計ができるんだ」とかそんな感じで声をかけていた。
 それで釣れたのが、学科バラバラの5人。

 理花はおとなしい性格で、ぼっちだったようだ。
 逆に、万結は元気があり、よく言えば、少年のような感じ。
 こいつは、自分が女だと思っていないようで、距離感がめちゃくちゃ近い。
 親も建設関係で、子供の頃から、おっさんに囲まれていたせいだと。自分で言っている。
 ヤローどもは。まあどうでも良い。

「情報? よくわからん。WEBニュース見ろよ」
「おまえ、それだけで行くつもりか? 前回みたいに散々彷徨ったあげく。また酒飲んで、帰ってくるつもりか?」
「結構楽しかっただろ。ハイキングして打ち上げ」
「まあな」

 そう言いながらも、記事に載っている住所を地図アプリで検索。
 だが、ニュースになった時点で、大抵周辺は検索されている。
 普通は、帰ってこないと家族から捜索願が出て、予想される移動経路をしらみつぶしに当たるのが普通。
 今回。こいつが言い出したゴブリンハントとというのは、あまりにもゴブリンが原因と思われる行方不明が増えたため。
 行政が、巣を見つけたら10万円ということを始めた。

 無論。発見だけで、通報が一般的。
 だが、倒して救出すると、謝礼が増えるし。小言が追加される。
 そして、ゴブリンの巣の中にある金銭などは、特定できそうなら提出だが、そうで無ければもらって良い。これは、持ち主が亡くなっている場合が、多いからだ。
 まあ、行政側の手が足りないので、言い訳だろう。

 今回は、目撃者がいて、通報。
 山側へ、入った所までしか。見ていない様だ。
 無論、警察などがすぐにやって来て、探索は行ったが、巣は発見できなかった。

 ちなみに、ゴブリン君達。血は出ないし、ご多分に漏れず。魔石を残す。
 巷では、魔石が電池で、それによって、動いていると言われている。
 そして、生物的に違うのか、やられても妊娠はしない。
 ただ、本能的なもので襲っている様だ。だが、食われる。
 どこかの国が、拷問に使いそうだと言われている。
 死んだから、食っているなら良いが。生きたままだと辛そうだ。

「うーむ。おかしいな?」
「警察が来るまで、大体30分くらいだろ? 行動半径。どのくらいなんだろうなあ?」
「いつもの、動体カメラは、設置したのか?」
「どうだろうなあ? 工藤が前回盗まれたって、叫んでいたからな」
「安い奴でも、五千円くらいするからな。経路を見るだけなら。赤外線で良くないか? 無論有線で」
「重いよ」

「もうおまえ。餌になるか?」
「おまえがなれ」

 そんなことを言っていたら、授業が終わったのだろう。
 周囲に、人間が増え始めた。
「あー。呼び出しを食らってた人がいる」
 そう言って、万結が抱きついてくる。
 いつもの事なので、くっつけたまま無視をする。
 俺の頭の上に、胸を置いているようだが、おまえの量では少し残念だ。

「大変だったが、話は付いた。完全にこっちは被害者だ。犯人は傘だ」
「なーんだ。改。したいなら言ってね」
「やだよ。おまえ、泣きながら、逃げるじゃん」
「「えっ」」
 さっき万結と一緒にやって来た、安田も驚く。

「おまえら付き合っているの?」
 悠翔が聞いてくる。

「いんや。万結が、いい加減。経験したいって言うから、相手しようとしたけど。キスしようとしたら、泣きながら逃げた」
「ひどっ。そういう事。ばらすかな」
 そう言って、むくれる。

 そう、この。人の気持ちが分からない男。
 なぜか、好きなのよね。
 体験してみたいって、つい変な告白をして。
 その場、教室よ。まだ人だっていたのに。
 それじゃあという感じで、いきなり、キスをしようとしてきた。
 私じゃなくても、恥ずかしくて逃げるわよ。

 今だって、馬鹿みたいにばらすし。本人以外は、何でこいつ鈍いんだという視線に囲まれている。まあ皆は、私の気持ちが分かってくれたから、恥ずかしいけれど協力してもらえるか。『雨降って地固まる』的な。良かったとしよう。

「あ~。何だ。万結。頑張れ」
 ほら、皆分かっている。
 たぶん、今抱えているから見えないけれど。
 こいつだけは、分かっていないでしょう。
 ほら首がひねられた。

「改って。物事を論理的に考えるから。機微について鈍いよな」
「そうか?」
 などと、言っていたら、機械系も終わったのだろう。
 工藤と木下がやって来て、すぐに薬研も来た。

「そろったな。さて諸君。話し合おうか?」
 とりあえず、宣言する。
「いや、飯に行こうぜ」
「…………」
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