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楽しい旅行
第7話 表側はどこ?
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裏谷キャンプ場へ到着をして、受付を行う。
「じゃあ場所の指定はないんですね」
「ああない。だけどあまり川の近くに張ると、大雨が降ったときに危険だからね」
「はい。ありがとうございます」
駐車場に車を止めて、荷物を箱形のアウトドア用キャリーカートへ積み込む。
タイヤも大きく、少々の悪路でも大丈夫なモデルだ。
キャンプファイヤー用の薪も、二束購入して積み込む。
「あっ、龍清。もう飲んでやがる」
祐司が目ざとく見つけて、文句を言ってくる。
「やかましい。昼飯のとき。俺だけ飲んでいないんだよ」
「そうなのか? どうして飲まなかったんだ?」
「全員飲んで、あの養殖場で泊まる気だったのか?」
「いや代行とか?」
そう言ってにまにま。
「バカだろお前」
「うん。バカだけど」
「だろうと思ったよ」
俺達馬鹿同士が、そんな馬鹿なことを言っている間に、皆はすでに川の方へと向かっていた。
車の鍵を掛けて追いかける。
大体到着したら、休憩用のタープを張って、その下に椅子とテーブルを並べる。
その後、場所決めと地ならしをして、テント張りとなんとなくパターンが決まっている。
雨が降りそうなときには、周囲に軽く溝を切る。
直火が許されていても、俺達は基本焚き火台を使う。
アタッチメントで、鍋をつるせたり、色々と便利なのだ。
一応ツーバーナーのコンロも持っている。
「なあ、この川。どこに繋がっているんだろう?」
祐司がそんな馬鹿なことを言い始めた。
だが丁度、美優希に声をかけられて俺は振り返る。
「ねえねえ、この川すごく綺麗。それにものすごく冷たい」
「よかったな」
美優希が嬉しそうにやって来た。
冒険コース用に着替えていたから、デニムのパンツ姿。
あのスリム系のパンツが、よく膝までまくれるなと感心をしてしまう。
自然の木漏れ日の下、嬉しそうに笑う姿がキラキラして、なんとなく眩しく感じた。
付き合いだして一年足らず。
つい顔がにやけてしまう。
「良し決めた」
祐司が何か、ろくでもないことを思いついたようだ。
「裏谷ということは表があるはず。行こうぜ」
「ええ? 面倒だし良いだろ」
「まだ時間が早いし、行こうぜ」
そう予定よりも時間が早く、時間を持て余す。そうして、強引に決められてしまう。
一応寝袋、食料などはキャリーカートへ入れて持っていく。
迷うと大変だからな。
川の横に狭いが、整備された細道が繋がっていた。
人が一人通れる幅だ。
少しの上り勾配。奥へ奥へと進み、奥に行くと結構川が下になる。
「崖になっているから落ちるなよ」
「ああ。キャリーカートがギリギリだ」
何かのメンテナンス用なのか、道は登山道ぽい道だが結構人が歩いた感じが残っている。
「ちょっと待って、休憩。男子はこの場で待機」
玲奈がそう言って、女の子を連れて、行ってしまう。
丁度十メートルほどの谷を渡る手前に、右奥へ続く道があった。
ただ、谷により木が開けているため、草が結構生えていたのだが、山峡と言えば良いのだろうか。山と山の谷間のような感じで奥は開けている。
谷はそこそこ深い。
登ってきた本筋には、きちんとコンクリートの橋が架かっているので大丈夫だが、女の子達が向かった方は、整備されていないのが少し気になる。
ダニとか、谷沿いなら山ヒルとかが居るからだ。
だが、すぐに帰ってきた。
「奥に村があって、お家があるからトイレ借りてくるね」
「この奥に村?」
俺達は草刈りがされていない道が気になったのだが、女の子達は走っていく。
「ちょっと待てよ」
そう言って追いかける。
ただ、少しの距離、草むらを少し抜けるといきなり村があった。
俺はあり得ないと思って振り返る。
すると、草の生えていない道が谷筋に続いていた。
「えっなんで」
だが、彼女達はドンドン奥へと入って行く。
石垣で区切られた棚田。
用水用の小川。
いくつか点在する家。
ただ、すべてが古民家。
屋根は茅葺き。
だが整備はあまりされていないのか、屋根に草が生えている。
どう見ても、誰も住んでいない家々。
「あっおじいさん。すみません」
物怖じをしない玲奈が声をかける。
「おや珍しい。こんな村にどうしたね」
「すみません。トイレを貸していただけませんか?」
そう言うと、じいさんは答える。
「その辺ですりゃ良いが」
そう言って笑う。
「えーと、お願いします」
そう言うと一軒の家を指さすおじいさん。
「勝手に使ってええ。庭の小屋がそうじゃ」
「ありがとうございます」
そう言って彼女達は、ずんずんと家へと向かっていく。
「俺も借りよう」
淳達も行ってしまった。
俺は悩んでいた。
じいさんが指さす前に、家はそこに存在か?
走って行く皆を、おじいさんは嬉しそうに眺めている。
「あんたは良いのか?」
「あーはい。お借りします」
男子トイレは、溝が掘られていて、そこに木桶がすえられていた。
女子トイレは一応個室でボットン。
ただしきりのドアは低く、上からご挨拶ができる。
とうぜんだが、仁王立ちの玲奈が居て、近寄らせてもらえなかった。
ようやくトイレが終わった頃、おじいさんから声が掛かる。
「もう日が暮れるから泊まっていきなさい」
「「「えっ?」」」
そう気がつけば、いつの間にか空が大分暗くなっていた……
「じゃあ場所の指定はないんですね」
「ああない。だけどあまり川の近くに張ると、大雨が降ったときに危険だからね」
「はい。ありがとうございます」
駐車場に車を止めて、荷物を箱形のアウトドア用キャリーカートへ積み込む。
タイヤも大きく、少々の悪路でも大丈夫なモデルだ。
キャンプファイヤー用の薪も、二束購入して積み込む。
「あっ、龍清。もう飲んでやがる」
祐司が目ざとく見つけて、文句を言ってくる。
「やかましい。昼飯のとき。俺だけ飲んでいないんだよ」
「そうなのか? どうして飲まなかったんだ?」
「全員飲んで、あの養殖場で泊まる気だったのか?」
「いや代行とか?」
そう言ってにまにま。
「バカだろお前」
「うん。バカだけど」
「だろうと思ったよ」
俺達馬鹿同士が、そんな馬鹿なことを言っている間に、皆はすでに川の方へと向かっていた。
車の鍵を掛けて追いかける。
大体到着したら、休憩用のタープを張って、その下に椅子とテーブルを並べる。
その後、場所決めと地ならしをして、テント張りとなんとなくパターンが決まっている。
雨が降りそうなときには、周囲に軽く溝を切る。
直火が許されていても、俺達は基本焚き火台を使う。
アタッチメントで、鍋をつるせたり、色々と便利なのだ。
一応ツーバーナーのコンロも持っている。
「なあ、この川。どこに繋がっているんだろう?」
祐司がそんな馬鹿なことを言い始めた。
だが丁度、美優希に声をかけられて俺は振り返る。
「ねえねえ、この川すごく綺麗。それにものすごく冷たい」
「よかったな」
美優希が嬉しそうにやって来た。
冒険コース用に着替えていたから、デニムのパンツ姿。
あのスリム系のパンツが、よく膝までまくれるなと感心をしてしまう。
自然の木漏れ日の下、嬉しそうに笑う姿がキラキラして、なんとなく眩しく感じた。
付き合いだして一年足らず。
つい顔がにやけてしまう。
「良し決めた」
祐司が何か、ろくでもないことを思いついたようだ。
「裏谷ということは表があるはず。行こうぜ」
「ええ? 面倒だし良いだろ」
「まだ時間が早いし、行こうぜ」
そう予定よりも時間が早く、時間を持て余す。そうして、強引に決められてしまう。
一応寝袋、食料などはキャリーカートへ入れて持っていく。
迷うと大変だからな。
川の横に狭いが、整備された細道が繋がっていた。
人が一人通れる幅だ。
少しの上り勾配。奥へ奥へと進み、奥に行くと結構川が下になる。
「崖になっているから落ちるなよ」
「ああ。キャリーカートがギリギリだ」
何かのメンテナンス用なのか、道は登山道ぽい道だが結構人が歩いた感じが残っている。
「ちょっと待って、休憩。男子はこの場で待機」
玲奈がそう言って、女の子を連れて、行ってしまう。
丁度十メートルほどの谷を渡る手前に、右奥へ続く道があった。
ただ、谷により木が開けているため、草が結構生えていたのだが、山峡と言えば良いのだろうか。山と山の谷間のような感じで奥は開けている。
谷はそこそこ深い。
登ってきた本筋には、きちんとコンクリートの橋が架かっているので大丈夫だが、女の子達が向かった方は、整備されていないのが少し気になる。
ダニとか、谷沿いなら山ヒルとかが居るからだ。
だが、すぐに帰ってきた。
「奥に村があって、お家があるからトイレ借りてくるね」
「この奥に村?」
俺達は草刈りがされていない道が気になったのだが、女の子達は走っていく。
「ちょっと待てよ」
そう言って追いかける。
ただ、少しの距離、草むらを少し抜けるといきなり村があった。
俺はあり得ないと思って振り返る。
すると、草の生えていない道が谷筋に続いていた。
「えっなんで」
だが、彼女達はドンドン奥へと入って行く。
石垣で区切られた棚田。
用水用の小川。
いくつか点在する家。
ただ、すべてが古民家。
屋根は茅葺き。
だが整備はあまりされていないのか、屋根に草が生えている。
どう見ても、誰も住んでいない家々。
「あっおじいさん。すみません」
物怖じをしない玲奈が声をかける。
「おや珍しい。こんな村にどうしたね」
「すみません。トイレを貸していただけませんか?」
そう言うと、じいさんは答える。
「その辺ですりゃ良いが」
そう言って笑う。
「えーと、お願いします」
そう言うと一軒の家を指さすおじいさん。
「勝手に使ってええ。庭の小屋がそうじゃ」
「ありがとうございます」
そう言って彼女達は、ずんずんと家へと向かっていく。
「俺も借りよう」
淳達も行ってしまった。
俺は悩んでいた。
じいさんが指さす前に、家はそこに存在か?
走って行く皆を、おじいさんは嬉しそうに眺めている。
「あんたは良いのか?」
「あーはい。お借りします」
男子トイレは、溝が掘られていて、そこに木桶がすえられていた。
女子トイレは一応個室でボットン。
ただしきりのドアは低く、上からご挨拶ができる。
とうぜんだが、仁王立ちの玲奈が居て、近寄らせてもらえなかった。
ようやくトイレが終わった頃、おじいさんから声が掛かる。
「もう日が暮れるから泊まっていきなさい」
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そう気がつけば、いつの間にか空が大分暗くなっていた……
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