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第一章 何かが起こった

第9話 過去の因縁は、萌芽する

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「ああっ? 何だと。野郎がお前の他に婚約者だぁ。おまえら、付き合っていたんじゃないのか。あぁんっ」
 伶菜のお父さんは激怒した。

 まあ、事情を知らないでの、突っ走りだが。
「いや、あんときだって、別に付きあうとは言っていなかったし。手を出したのはお父さんでしょ」
「うっ。そりゃダチだって言っても、強いには越したことはないだろう。あいつは強かった。ちと入院をしたおかげで、工事が遅れて、施主に謝ったんだ。大損だ」
 顎をさすりながら、お父さんは思い出す。

「それで、やつとは付き合うのか?」
「うーん。一応そのつもりだけれど、なかなか、あの二人の間に割り込むのも、本当は気が引けるのよね」

 竜一さんは悩む。
 お父さんの名前は竜一さんなんだよ。身長一八〇センチ位の大工さん。
 俺の名前が竜を司るので、悩んでいた。負けたので余計に。

「だが、おめえ。りゅ竜司のことを、そのぉなんだぁ。好きなんだろう?」
「そりゃそうよ」
「むう。何とかしてやりたいが。難しいな。殴り込んですむなら簡単なんだが」
「やめてね」
 娘から、奥さん。鏡子さんの血を引いているのを確信する。何かを感じた竜一。

「おう。今は、けん一択だ」


「なに? 地球表面から謎の力?」
「ええ。そうです。上位の方々の使う力。多分その放射だと思われます。データは軍が握っておりますので、まだ詳細は取れておりません」
 面倒な事になってきたようだ、少し、あの方々に情報を回して、助力を願うのが良いのかもしれんな。

 そうして、叱られる羽目になる。
 アンガ=ロス教授は、頭を抱える。

「私は、あなた様がたのことを……。ことを思い。良かれと……」
「それが浅はかと言う物。例の論文は我らも見た。その上で脅威にならぬこと、そしてその発想を元に、輪廻の根幹を制御し、再び現世に戻る道も、すでに発想を得た」

 そう説明をされ、さらに上位の者達の知の深さを垣間見る。
「おぬしは、浅はかな発想で、力あるものを屠った。そちらの方が重要だ。職を解くから、ゆっくりとするがいい。そして、その者が輪廻の壁を越えたのであれば、贖罪の方法を考察することだな。貴様は、セクスタプレト。じゃとすれば、もういい年だろう」
「くっ。はい。ありがとうございます」

 教授は、自身の未熟さを賢者達に暴露し、褒められるどころか職を失うことになった。
 さらに、やつに対しての贖罪をせよと。
 意識外の攻撃だったが、優秀な軍人なら避けろよ。
 そんな理不尽を考える。

 そして翌日。
 大学に行くと、すでに教室と、自身の部屋は閉じられ、荷物はホールに積み上げられていた。
「なっ。なんじゃこれは?」
 当然、考えられない仕打ち。
 壁の案内板からも、自身の名前が消えていた。

 事務局に向かう。
 おっ。事務局長のソロネを見つける。
 色々なことを手伝わせていたのは、この男。

「おっおい、ソロネ」
 呼び止めると、思いっきり睨まれる。

「どなたでしょうか? 部外者の立ち入りは禁じられております。それに、何故か私も昨日付けで役職がなくなって、単なる職員となっておりますので、これからを思案しております。いいえ、私だけではなく一件に関わったものすべて。裏の組織は昨夜の内に潰されたようですし、どこかに姿を隠さねばなりません。では、急ぎますので。失礼」
 そう言って、そそくさといなくなってしまう。

 元教授は、重要なものを山の中からより分けて、残りは家に送って貰う様に依頼をする。

 家は、まだある。
 情報を見ると、クレジットも全額。
 そのままあったが、賢者の言った弁済という言葉を思い出す。
「これは、行動を起こさないと、わたしは?」
 それに、元事務局長ソロネの言った、裏の組織が潰されて。姿を隠さねば……

「やばい。やばいぞ。どうしてこんな事に。じゃが、伝えてなくともあの方達は気がついておった。ひょっとして、輪廻の流れの中に干渉をして。まさか、あの方達が……」

 アンガ=ロスは、何とか伝手を使い、星間宇宙船を一隻入手をする。
 そこ以外は、潰れていた。

 そして、用意されていたかのように、丁度良い感じの宇宙船と、人工生命体の助手を入手した。
 宇宙船の操作用だと言ったが、このモデルはオプテミウム。最新で最上位。さらに特殊なカスタマイズが行われているのも見て取れる。

 それに何より、所有者登録を拒否された。
「失礼ですが。あなたでは、マスターになれません」
「なっ」
「ご命令を」
 驚く教授など、ほとんどアウトオブ眼中である。

「くっ。宇宙船の準備をして、あるところへ向かう」
「あるところとは、どちらでしょうか?」
「何故聞く」
「目的が分からなければ、準備の予定が立ちません」
「ぬうぅ。地球だ」
「正解でございます」
「なっ」

 答えを聞いて確信をする。
「賢者様の掌か」
 これからの残り。人生をかけて贖罪をせよと言うことなのか。

 教授。いや元教授アンガ=ロスは、賢者による。ざまあ計画の渦中に、己がいることを理解する。
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