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第二章 宇宙人来襲

第17話 魔法使いは、育っていた。

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 あわてて、一発殴った。
 頭から突っ込んでくるから、つい目の前へ来た顔を。
 すると、手応えはあまりなく、首が百八十度回転をしてしまった。
「あれっ」

 力なく倒れ込む彼だが、よく見ると彼は、ボロボロだった。
「これって、俺。殺人なのか?」
 当然だが、顔は見知ったもの。

 スマホから、警察にと思ったが、キャリアが消えたままだった。
 とりあえず、家へと入り電話をしようと家へと駆け込む。
 むろんドアは閉めて。

 ドアが閉まった後。
 彼はむくっと起き上がり、意識なく外へ出て行く。

 ぐらつく頭をぐりっと戻し、本来の本能を取り戻したかのように、餌を求めて歩いて行った。


 家へ入ったが、IP電話のためか接続が出来ない。
 昔のアナログ回線ではない場合、電源供給が無いと使えなくなる。
 便利になった通信網は、災害時に脆弱性を露呈する。

「仕方が無い、非常時だ」
 近くの交番へ行き、直接連絡をする事にする。

「玄関先に、いつまでもあると面倒だしな」
 ぼやきながら、そっと外へ出ると、いなくなっていた。

「あれ? どうして?」
 首は反対を向いていた。普通なら即死だろうが。
「まあ、生きていたなら良いが」
 そう言いながら、周囲をぐるっと確認をする。

 だが、彼はいなかった。

 現状ドアが壊れかけなので、さっさと戻る。

 人が、一仕事をして戻ると、晩餐会は宴もたけなわ状態で、三人が盛り上がっていた。

「お疲れ。何だったのあれ?」
 そう聞かれて一瞬戸惑うが、答える? 見知った奴が相手だと、見られた伶菜が気にするのではないか?
 そんな思いが、一瞬浮かぶ。
 奴の状況から考えると、言いふらすことはないだろう。

 一瞬教室に、あの容姿の栄田が友人達と輪になって、だべっている姿を想像する。
「おれ。黒木の裸を見ちまった」
「えーいいなあ栄田君。でも、のぞきは犯罪だよ」
 うーん。無いなあ。

「ひょろ長い、変なモンスターだった。ぶん殴ったら逃げていったよ」
 そう答える。

「そう。よかったあ」
「ニュースは? どうなっている?」
 スマホで探すと、かなり近くでも惨劇が起こっている。
 他のモンスターも居て、市街戦の様相で大騒ぎのようだ。

 基本的に、日本中で大騒ぎ。いや世界中か?

 ソーシャル・ネットワーキング・サービスでは、『助けて』と言う言葉が飛び交っていた。

 家族が、モンスターに。ペットが。友人が。その流れは止まらない。
 さらに増えていく。

 特に、人口の多い国は、もっと悲惨なようだった。
 あっという間に、警察や軍の人数を追い越してしまう。

 某国では、業を煮やし。民衆ごと、殲滅する事態まで発生をする。

 その日は後に、『審判の日』と呼ばれ、記録に残ることになる。

 この日の事は、すでに予言されていた。
 これから、炎で人類は焼き尽くされる。
 そんな言葉が飛び交う。

 核なのか、それとも大規模噴火なのか? そんな予想が叫ばれる。

 そして、日本では通学路の脇に自動小銃を持った警官が立つようになった。
 モンスターを倒すためには、最低でも、七・六十二ミリのNATO弾が必要だと分かったからだ。

 人の多いところには、ゴブリンぽいモンスターが現れる。

 いま政府は、ハンターギルドシステムに加入するかを判断をしているが、国民が武器を携帯する事を警戒し、判断が下せないようだ。
 その判断の遅れで、国民を危険にさらしていると言いながらも、武器を持った国民による犯罪抑止はどうする気だと言われると声が小さくなる。
 いつもの様に、千日手の様相を呈する。

 そこで緊急に、警官への小銃配備となった。

 だが、威力が強いということは、跳弾も危険。
 モンスターを捕まえて、テストを繰り返し。拳銃と小銃の使い分けをマニュアル化する。

 そんな中、先延ばしにしていた、魔法の存在が再浮上をする。
 時が経ち、初期はちょっとした手品だった魔法だが、時間と共に練度と威力がまし政府関係者の予想を超えていた。

 銃や武器そんなレベルではない、人間兵器。強力な力を使う者が存在する。

 オーストラリアのロック=ウインストンという少年は、光を槍のように射ちだして、戦車の装甲を貫いた。当然ミサイルの直撃でもシールドを展開。周囲が吹っ飛ぶ中、平然と立っていた。

 そんな情報を得て、諦めた政府は、魔法を使えるものはハンターギルドへ登録し、一元管理をさせる。
 ハンター証を所持しているものは、近くでモンスターが発生していれば、速やかにそれに対処。討伐をしなければならない。その際、周辺の人民や建築物への被害は最小限にとどめる事。また意図的に被害を拡大した場合は、罰則を適用する。

 等々、緊急にまとめて法案を通す。
 色々な妥協の産物が、できあがった。

 そして、彩とまどかは、はれてハンターギルド会員となった。
 力を全国民テスト。
 能力者は脳波を測ると、特殊な波が出ているらしい。
 むろん、自分の力に気がついていない人も居る。

 そして、まどかのように攻撃には適さない能力もある。

 そのため、会員証を二タイプに分け、戦闘向けと非戦闘。
 車の免許証のように、色が違う。何故か、赤と白。
 そしてモンスター討伐義務は、戦闘向け赤色会員のみに、義務化と改訂された。

 そしてその後。
 精神系魔法使いは、また色分けされ。ブルーが追加された。
 国としては、非常に危険だからである。

 そのテストの様子は秘匿されたが、能力者は他人を操り。被害者はその間の事を覚えていない。
 気がつけば、血のついたナイフを持ち、死体のよこで「何で俺は?」などという事が簡単にできてしまう。
 当然危険。監視対象となる。
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