地球に奇跡を。-地球で魔法のある生活が、始まりました-

久遠 れんり

文字の大きさ
29 / 109
第二章 宇宙人来襲

第30話 秘密

しおりを挟む
「うーむ」

 バサッと出す。意識的に出すのは出来る。だが、力を使ったり、レベルがアップすると勝手に出る。
 この時は、意識をしても消せないな。

「これはあれかな、昔マイリが言っていた、魂の階位の問題で、翼が生えるというあれか?」
「ええ。魂が肥大化をして、肉体の容量を超えてしまった時の。要するに進化ね」
 この時はそう思っていたが、実は、はみ出したエネルギー。
 そうでなければ、消える事への説明ができない。

「なるほどね」
 目の前のオークを、消滅させる。

「体に収まらない魂か。偽装か何かが出来ないのかね」
「リングならあるわよ」
「ああ、変身リングね。あの子供だましの」
「この星なら、きっとばれないわよ」
「それもそうか」
 彼女に取り寄せて貰う。

 大きさの関係で、右手の中指に指輪をはめる。リングを右手の中指にはめると、邪気から身を守るとか意味があるらしい。そんな事を思い出す。

 誤魔化しだが、リングの力で、何とか対応できた。羽が消えたようなので、家へと帰る。
 あっそうそう。犬としての登録名も面倒だからマイリにした。
 犬だと、家から出かけるのに、散歩という言い訳ができるから良いね。

 家へ帰ると、「お帰り」といいながら、何故か皆がじっとりとみてくる。

 思わず、後ろを振り返る。当然誰も居ない。
「竜ちゃんだよね」
 彩が聞いてくる。

「えっ。そうだよ」
 そう答えるが、じっとりと見てくる。

「どうして、恐竜なの?」
「へっ。あっ」
 あわてて、指輪を外す。

「あっ戻った」
 通りがかった、伶菜まで驚いていた。

「何それ? ゆびわ」
「あーうん。モンスターを倒したら、ドロップをして」
「へー。恐竜人? に変化できるって、どんな意味があるのかしら?」
 彩がおもしろがって、手を伸ばしてくる。

「やめときなさいよ。もし変化をして戻れなくなったら討伐対象よ」
 伶菜がそう言うと、のびてきていた手が引っ込む。

「それもそうね。竜ちゃんも、おもしろがって使わないほうが良いわよ。戻れなくなったら、本当の竜ちゃんになるから」
 そう言って、彩とまどか。そして、伶菜が笑う。

 これの設定って、どうやるんだったっけ? 指輪を見つめる。

 あとで、マイリと悩もう。


「うーん。基本は、遺伝子情報を読んで動作するはずなのに。本当にミー=キャエルっていま地球人なの? 周りの子が言っていた言葉だと、皆にはドラガシメル人として見えていたと言うことでしょう?」
「お前は、どう見えていたんだ?」
「普通の地球人」
「それは、どういう事だ? これは光学的に光をゆがめて、絵を見せるものじゃなかったのか?」
 そう言うと彼女も悩み始める。

「ノーマルじゃないのかもしれない。宇宙船に積んであったから、賢者の造ったものだとしたら、秘匿性を高めるために、精神波で直接相手の視覚をコントロールをしているのかも?」
 彼女は悩みながらそう言うが、それなら機械をごまかせない。性能的にグレードが下がっていることになる。

「それはおかしい。カメラをごまかせない事になる」
「ああっ。それもそうね。単純に光学タイプのほうが良いわね」
「マニュアルは?」
「あるでしょ。普通にイメージをすれば、脳にロードされるはず」
 ああ、そうだった。

 もう一度はめ直し、意識を集中する。

「おおっ。ロードしたという事は、ミー=キャエルなのね。おめでとう。今は種族が違う様だけれど、望めば、あなた用のオプテミウムモデルを用意できているわ。連絡を待っているから、帰ってくるなら彼女に伝えてね」
 そう言って、いきなりメッセージが切れる。

 そして、仕様が頭へロードされる。

 この指輪はやはり特別製。
 自分のイメージした姿を、光学的にも精神的にも強制的に与える。
 さっきは、マイリと話をしていて、過去の自分を思い出していた。

 だからデフォルトでは、ドラガシメル人としてみせる。
 だが、マイリは、俺を地球人としてみている。
 だから、指輪はマイリに対してだけ、意図的にそう見せた。

 高性能の為、面倒な状態が作られた。

 地球人の羽なしを、基本として記憶させ、デフォルトにする。
 今度は、マイリに対しては、ミー=キャエルとしての姿をデフォルトとしてみる。

「なっ。ミー=キャエル。あなた……」
 犬なのに、驚き。目を見開く。そして、その双眼から涙がこぼれ始める。
「ずるいわよ」
 そう言って、寝転がっている俺の胸に顔を埋める。

「嫌か? それなら地球人に変えるが?」
 すると、呆れたような顔になる。

「そういうのを、意地悪というのよ。何千年も生きているのに、あなたは本当に……」

 そう言って、親愛の情を示す。顎を擦り付けてくる。

「お邪魔かな?」
 いつもの様に、伶菜がやって来る。

「いや。お疲れ」
 そう言って布団の端を捲り、伶菜を迎える。

「この娘、あなたと交尾をしたいのよ」
「知っている。だが、あと二人も一緒だろ」
「ああ。そうね」
 そう言われて、マイリは思い出す。
 ミー=キャエルを見たときの、二人の変化。
 匂いと発汗。そして心拍数と、体温の上昇。
 すべてが、感情を示している。

「この国では、基本は一夫一婦制といって、基本は一つがいと決まっている」
「あら。それは素敵ね」
「だが、そのせいで、遺伝子の多様性は広がりが遅い。驚異的な病原菌をまだ克服できていないから、何かの時には滅ぶ可能性がある」
「私たちも昔在ったわね。歴史で習ったわ」

 先祖が地球を離れ、他の銀河で、居住可能な惑星を発見。
 居住環境を整えていく中で、土着の単細胞生物が凶悪化。
 早急に、賢者達が対応し。人口が三〇パーセント減っただけで沈静化をさせた。

 彼らは、特異であり。炭素系ではなく、ケイ素系の生物で網をくぐり抜けた。
 ドラガシメル人なら、必ず習う年表だ。

「ねえ。昨日から気になっていたけれど、その犬と知り合いなの? それとその言葉は何語なの?」
 伶菜の双眸が、此方を見つめる。

 まあ犬が言葉をしゃべり、俺と会話をしている。
 疑問は、もっともだ。
 真剣な目。それを見て、俺はついごまかしてしまった。
 抱きしめて、キスをする。

 びっくりした様子の彼女は、俺の肩に腕を回したままこういった。
「分かった。いえるようになったら言ってね。それと、私に触れてくれると嬉しい」
 そう言うと、真っ赤になって俺の胸に顔を埋める。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界で魔法が使えない少女は怪力でゴリ押しします!

ninjin
ファンタジー
病弱だった少女は14歳の若さで命を失ってしまった・・・かに思えたが、実は異世界に転移していた。異世界に転移した少女は病弱だった頃になりたかった元気な体を手に入れた。しかし、異世界に転移して手いれた体は想像以上に頑丈で怪力だった。魔法が全ての異世界で、魔法が使えない少女は頑丈な体と超絶な怪力で無双する。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

処理中です...