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第二章 宇宙人来襲

第33話 彼は天使

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 学校へ行く途中。

「おう竜司。有名人だな」
 声をかけてきたのは、伶菜のお父さん。

「なんですか?」
「これだよこれ」
 スマホで見せてくるのは、見たことのあるコーヒーショップで、翼を出した俺。

 竜一さんが、SNSをしていたことにびっくりだよ。
「ああ。かっこいいですね。誰でしょうねこれ?」
「とぼけんなお前だろ。出してみろよ」
「はっ?」
「羽だよ羽」
「いやですよ。あっいえ。人違いです。学校に遅れますので」
 そう言って逃げる。

 後ろでは、お父さんを叱っている、伶菜の声が聞こえる。

「もうっ。羽のことは、私たちだけの秘密だったのに」
 彩がぶつぶつと文句を言う。

「そう言えば、周りの目がかなりあるわね」
 これは、彩達の活躍も結構広がっているからだ。
 本人達は、気にしていないようだが、実は噂が広がっているのは俺も知っている。

 しかも、彩などは、地獄の炎使いとかって言われて、一部では有名。

 無表情で、放つ炎は獲物を燃やし尽くすまで消えない。
 放つときの無表情と、燃えていくときに浮かべる薄笑い。

 その非情さに、ファンがいるようだ。
 まどかはまだ、目立っていないから大丈夫。

 そして、俺が目立った。
 ドラゴンズアイは、密かに有名になっていく。

「おおうっ。天使様の登校だぜ」
 お調子者の馬鹿が、はやし立てる。

 松村栄光(まつむらてるみつ)と言う名前。
 栄田とかと連んでいたはずだが、彼がいなくなったため。
 ピンとなり、いま自身の存在証明を示そうと頑張っている。
 そんな悲しい奴。

 だが、俺をネタに選ぶのはNGだ。

 クラスの雰囲気が一変する。
「まどか。あんまり気にしていないから、ほどほどにな」
 そう言ったが、返事がない。

 松村。自業自得だが、強く生きろ。

「いえぇー。てんしさまぁあっ? …… 何だよおまえら。目が怖いぞ」
 いきなり、誰かがぶん殴ってしまった。
 転がる松村。

「ひっ。痛てぇ。何だよ。来るなよ」
「まつむら。さあ行こうか」
 気のせいか、インペリアル・マーチが聞こえてくる。

 そこへ先生がやって来て、松村は連れて行かれてしまった。

「なんだこれ?」
「何でも良いのよ」
 やっと正気に戻ったのか、まどかが返事をしてきた。

 松村は何故かアフリカへ、ではなく、停学三日を喰らった。
 先生に聞くと、しなければいけないと思った。悔いは無いと語っていたそうだ。


 そして学校では、モンスター来襲時の非常訓練が行われる。

「モンスターがきたとして、どうするのが良いと思いますか?」
 教頭先生が張り切っている。

「はい。燃やします。周りには気を付けます」
 むろん。彩だ。

「もや…… ああそうね。あなたは、確かハンターだったわね。でも炎とか扱えない人は?」
「水流で切り刻みます」
 別のクラスだが、水使いもいたのか?

「空気の波動で内側から破壊します。むろん切り刻むのも、周りに迷惑を掛けなければ有効」
 別からも声が上がる。

「あなた達も、ハンターなのね」
 教頭先生がオロオロし始める。

「はーい。助けを呼びます」
 誰かが言った。期待をした回答に、先生もにっこり。

 だが。
「そうね。まず、安全を確保して、警察とかじえい……」
「佐藤さーん。竜司さーん。たすけてー」
 うん? うちのクラスの連中?
 ニヤニヤと、まどかが笑っている。

「おい。何やってんだよ」
 まどかにそっと聞くと、いきなり、何か波動がやって来る。

 精神攻撃波かこれ。

 意識を強めに保ち、やって来る精神波をはじく。
 前に比べて、かなり強くなっている。

 だが、効かん。

「「「おおおおっ」」」
 精神攻撃には耐えたのに、翼が出ている? 皆が俺の背後を見ている。
 このゆびわ、壊れたんじゃないのか?

「はい。モンスターは倒します」
 それだけ言って、しゃがみ込む。
 指輪。設定ウインドウ。コマンド。デフォルト。

 うえ? なんでデフォルトが、翼ありになっているんだ?
 ええい修正。

 ゴタゴタやっている間に、教頭先生が切れた。

「いい加減にしなさい。まず自分の安全を確保して、警察や自衛隊を呼ぶの」
 それを聞いて、誰かが叫ぶ。

「助けが間に合わない場合、どうすればいいんでしょう?」
 そんな意地悪に、教頭先生はひるまない。

「間に合うから」
「本当でしょうか? その証拠を見せてください」
 そこで、教頭先生は切れたようだ。

「間に合わないと思ったら、自己判断で逃げなさい」
「捕まったら」
「捕まるのが悪い。逃げなさい」
 論破しようとした学生は、鬼気迫る教頭先生の圧力に屈した。

 グラウンド中から、どよめきが上がる。

 しかし、逃げる訓練て、どうやるんだ?
「モンスターが校門付近に出たぞ。皆落ち着いて、校舎へ避難」
 なるほど。

 すたこらさっさと、皆が校舎へ走り込み。
「皆入ったかぁ」
 誰かが声をかけて、鍵を閉める。

 本番さながらの訓練。

 むろん先生達は外だ。

 まだ午前中。

 昼に売店へ向かう誰かが開けるまで、非情にも無視をされたようだ。
 今日は寒かった。

 午後からの授業は、いつもにまして厳しいものとなった。

 まどかはその晩、スマホを見ながら、にやついている。
 学校の校庭で、翼を広げた俺を撮影して、それをぼーっと眺めていた。
 そう。まどかは写真が欲しいがため。騒動を起こした。
 とんでもない奴だ。

 そして、伶菜は素直にお願いをする。
「ねえ、今度どこかで、翼を出した姿の写真を撮らせて」
「まあ、人目に付かない所でなら、良いよ」
「うわい。やったぁ」
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