地球に奇跡を。-地球で魔法のある生活が、始まりました-

久遠 れんり

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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第53話 竜ちゃんデビュー

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「おい、生きているか?」

 聞いてみるが、「うご、ごほっ」と言って、返事ができず。
 右腕と共に、肩も砕け、肋骨も折れているのだろう、胸が陥没をしている。

 治療の光を、少し強めにかける。
「おい、ナニをしている?」
 自衛隊の隊員さんかな、治療中に声をかけてくる。

「人の生き死にが掛かっているんだ、ふざけないで退きたまえ」
 おし終わった。
「ほい。良いですよ」
 そう言って、横に避ける。
 すると、倒れていた男は、むくっと起き上がる。

「俺は、まだまだやれる。ずえい」
 そう言って、走って行った。

「うん、大丈夫そうだな」
 一番重傷なのは、彼だった。
 ほかの奴らは、多少骨が折れたくらいだ。
 あとは、自衛隊に任せよう。
 だが、せっかく退いたのに、さっきの偉そうな自衛官は、動く気配がなかった。
 おかしな人だ。

「さて、いつもの感じだけれど、再生する様だから気を付けよう」
 そう言って、伶菜と共にサイクロプスへ立ち向かう。

 短距離の攻撃魔法に絞りつつ、胸へと攻撃。
 奴から反射的にやって来る、腕や足の攻撃を未来視しながら、伶菜に顎から頭に抜ける攻撃をさせる。

 だが、そんな最中にも、伶菜は視線のちょっと上でぷらぷらするものが気になったようで、力加減を間違えて、胸から上を吹き飛ばしてしまう。

 ひょっとすると、人工衛星がいくつか消滅したかもしれない。

 動きの固まった現場から移動し、もう一匹の方へ移動をする。

「何だ、あの二人」
 今の戦闘を見ていた人がぼやく。

 他にも。
「何だあの男、死にかかっていた人間を一気に回復したぞ」
 現場で、何で、何だ? の合唱が始まった。

 そんな頃、まどかはグリフォンの軍団を作り、その一頭にまたがる。
 そうは言っても、全部で三頭だが、彩と共に背中に乗り、掃討しつつ、大物に向かって行っていた。

「一匹大きいのが倒れた。しかもあれ、光だから竜ちゃんよ」
「じゃあ、どっちに向かおう?」
「竜ちゃんがそのまま行くのなら、左の奴だろうから、右の奴に行こう」
「ようし行こう」

 そう言いながらも、彩はついでで、周囲のモンスターに炎をばら撒く。

 それを見た現場でも、何だあれ? が広がっていく。

 そして、もう一匹の現場では、シールドを持ったまま、警察官が散乱をしていた。

 一発良いのを貰ったのだろう。

 何とか仲間達が、攻撃の合間を見ながら、救出をしている。
「やばいねこれ」
 伶菜が言うとおり、幾人かは踏まれたようで、駄目だと思える人が居る。

「助けます。背中側に倒しますので」
 そう言って声をかけるが、必死での対応で、返事など帰ってこない。

「言っている間に倒そう」
 伶菜に声をかけて、同時に攻撃をする。
 首を一発で吹っ飛ばし、再生をしないことを確認する。

 周囲の状態を探る。
 息がありそうな人には、治療の光を当てる。

「次だ。先に脅威を何とかしよう」
「うん」
 そう言って向かうが、目標方向から先に火柱が上がる。

「あの赤黒い炎は、彩ね」

 現場に到着すると、泣いているまどかと、勝ち誇る彩。
 俺をみると、まどかはダッシュをして俺に抱きつく。

「まどかあんたね。慰めてほしいから、泣いている振りじゃないでしょうね?」
 伶菜がそう言うと、ビクッとする。

「いや、使役した時間は短時間でも、情が移るものよ」
 意外とはっきりした声で、返答がされる。

「まあ、そんな事は良いが、でかいのが海にいるぞ。こっちへ来ている」
「えっ。ねえ、みんな。大きいのが来ているらしいの。けが人を避難させてぇ」
 まどかが、周囲に向けて叫ぶ。

 周囲では、まだ数の多いオーガやミノタウロスを退治している。

「小銃は効かないから、早く能力者に現場を開けろ」
 そんな怒号が聞こえる。

 各個体に一〇人ほどが集っている。
 それがジャマで攻撃がしにくい。

 能力があっても、細かい調整ができないと、向こうに居る人を巻き添えにする。
「退けや、てめえらあ」
 かなり立派な火球が、空中に浮かぶ。
 その熱を感じたのだろう。
 やっと輪がが開く。

「聞いただろ、海からでかいのが来ている、けが人を連れて下がれ」
 当然だが。
「そんな連絡は来ていない。こんな現場で嘘をつくな」
 もうね。

「あっ来た」

 そう言った瞬間、周囲が暗くなる。

 でかく細長い奴。
 海から鎌首をもたげている。
「でけえ、海蛇だ」
 モンスターが現れて、現物を見た瞬間。やっと、周りが動き始める。
 なぜか、海蛇の方へ。

「なんで…… みんな馬鹿だろ」
 幾人かは、けが人を運んでいる。
 だがさっきまで、弾がきかずオーガに苦戦した奴までが海へ向かう。

「あーあれ、無線を聞いているようだから、指揮官が馬鹿だな」
 つい、言葉に出してしまった。

 そして、海蛇っぽい奴は、収束した水流を噴き出す。

 あれが来たら、直撃部分だけじゃなく周囲の建物まで破壊され、たむろっている野次馬まで、下手をすれば数千人が一気に死ぬな。
 そこまで、一瞬で考える。

 服を脱いでいる暇はない。
 一気に力を解放する。

 翼が生え、バサッと展開をする。

 シールドを張り、水流を受け止める。

 シャツは、どこかのヒーローさながらに、はじけてしまった。
 重力を操作して、浮き上がる。

 モンスターの注意を、自分に向けるために、飛び上がったが、当然人々の注目も浴び、その姿は中継をしていた、テレビ局のレンズにもとらえられる。

 その謎の人は、荘厳な金色の光を纏い。軽く手を振ると、巨大なモンスター、後に特徴からシーサーペントだろうと推測、決定された。その首がコロッと落ちる。

 そして、周りを見回すと、光が強くなる。
 すると、けが人達が、まるでゾンビのように起き上がった。
 うん血だらけで、ボロボロの服。そう見えるよね。

 その後地上に降りて、カメラは行方を見失ったが、近くの有名なお店で、スタンドカラーのシャツと、カーディガンを買ったと情報が入った。

『天使降臨』
 このワードが、一躍トレンドに乗ったのは、間違いない。
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