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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第54話 天使降臨。その反応。

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 今の世の中、情報はあっという間に拡散される。

 六枚羽の天使。
 地球では熾天使してんしと呼ばれ、四大天使ラファエル、ウリエル、ミカエル、ガブリエルはかなり有名。

 それが降臨して、モンスターを倒し、けが人を一瞬で癒やした。
 もうね、まさに奇跡。
 見た目ゾンビな人たちは、こぞって、インタビューを受ける。

 怪我をして、救われた人たち。
 だが、死にかかっていた人間、「なんか暖かい光を感じて、すっと体が楽になりました」それ以上は、情報を得られない。

 そして、彼は保護対象である。
 むやみに、探ってはいけないなどと言う通知が、国から降ってくる。
 不利益を受けた場合は、弁済を求める。
 そんな文言まで。

「この不利益って、何だろうなぁ」
「さあ天使だから、バチカンとが捕まえに来るとか?」
「宗派によっちゃあ、天使を認めないところがあるなあ。聖戦か? 日本で」
「そりゃ、やばそうだ。服屋に頼んで、顔が分かったのに残念だ、そんなので弁済を求められたら、会社が潰れるぜ」
「それで済むか? 相手はけが人を一瞬で治すんだ」
「ひょっとして、病気もか? そりゃやべえ。天文学的数字だぜ」

 ある国では。
「ジャパン? なぜ。敬虔な我が国ではなく、無神論者の固まりである国に」
「いや逆だ、ジャパンはすべてのものに、神が宿ると説いている」
「ワッ、それはそれでおかしい」
 そこに一人加わる。

「ジャパンでは、クライストと仏陀が、仲良く暮らしているらしい」
 二人は、それを聞いて絶句する。
「そりゃ、天使もいるさ」

 そして。
「彼か」
「彼ですな。大司教の一人が先走り、怒りを買った」
「上手くすれば、今頃彼を迎え入れて……」
「言っても詮無きこと…… 縁があれば、その内お導きが来るだろう」


 だが、別の方面では。
「この水龍、シーサペントと言われるらしいですが、簡単な解析ではありますが、吐き出す水は、毎秒四十立方メートル程度と試算されます。フーバーダムの排水が四二立方メートルですから、それに匹敵しますな」
 ミーティングルームで、どよめきが発生する。

「そして、この未確認生物。天使形状の生物はシールド。ここからこの範囲。見えていませんが、構築されています。そして、市街地や群衆に被害が出ないように、形状を工夫して海へと排出。これにより理知的生物だと思われます」
「それがジャパンの秘密兵器だとか、宇宙人だとか憶測されているが、本当のところはどうなのだ?」
 当然の、質問がやって来る。
 だが答えられないと思ったが、以外と優秀だったようだ。

「秘密裏に、現在ジャパンにおいて奇跡の会合というものが、行われております。状態は秘密結社的な立ち位置で、参加者には世界中の富豪や重要人物がリストを埋めています」
「つまらんな、イエローごときが奇跡だと?」
 偉そうな奴が、偉そうに発言する。

「ですが。それに対して、この生物が多分関わっています」

「するとあれか、宇宙人だとすれば、ジャパンが捕らえて秘匿。奇跡を、さも嬉しそうにお披露目して、自国の地位。それの向上を図っていると?」
「まあ、そういう見方もありますが、宇宙人ではありません。古くから戸籍が存在して、リュウジサトウ。セブンティーンの、ハイスクールスチューデントとなっています」
「入れ替わっていると言うことは?」
 手が上がり、質問がやって来る。

「可能性は低いと思われます。ペアレントならびにガールフレンド。その他ファミリーが、監視対象となっており、ギルドシステムのチームにも登録。この事から推測をされるに、今回の世界的異常現象で、力を得たと考えるのが、一番無難だと思います」
「「「むううっ」」」

「危険だな。奇跡と強力な攻撃力。あの光で人工衛星が消滅したのだろ?」
 そう聞かれて、レターサイズの綴りを捲る。

「我が国のものではないため、詳細は不明です。ですが、監視エリアには当時複数のものがありましたが、事件後ロストしています」
 フムという顔で頷き、何かを考える。

「拉致ってみるか?」
 その一言で、ルーム内がザワつく。

「ジャパン国内で、相手は監視対象です」
「どうせジャパンだ、何かあってもヘラヘラと聞いてくるくらいだろう。此方が強気ならしっぽを巻くさ。二チームも居れば大丈夫だろ。くっ付いてるガードを、一チームが牽制、その間に捕縛。宇宙人じゃなければ麻酔も効くだろう。眠らせば力も使えまい。基地からちょろっとでて、拉致後輸送機で運んでこい。国内基地へ入ればジャパンも何も言えんだろ」
「奴ら一線は、越えんからな。規定ですからぁ。とか言ってな」
 嫌みな台詞がボロボロ出てくる。そして嘲笑も。

 そうして、安易に考えられて実行された作戦『奇跡。ジャパンの町中で、我々は伝説の生物を捕らえた』は、最悪の状況を発生させる。

 相手は監視対象で、強力な力を持つ。
 そして、日本人ではあるが、ドラガシメル人の兵として数千年勤めていた歴戦の猛者。この作戦ルームの誰よりも軍人だった。

「ねえ、橋本さん。何かこの近辺で、自衛隊が作戦をしています?」
「いや、聞いていないが。それよりも、玄関には鍵がかかっていたはずだが?」
 警備部の橋本さん。
 勤務が終了したばかりなのか、百田さんと嬉しそうに乾杯をしていた。
 じとっとみる。

「橋本さんて、四〇過ぎですよね」
「四二歳だが、結婚は?」
「竜司君。結婚はね触れ合う時間が少ないと、意外と簡単に破綻をするんだよ」
 その瞳に、竜司は何かを感じる。

「失礼しました。でも、モモちゃんは若すぎでしょ」
「いやあねえ。男と女、色々とあるのよ」
 百田さんがそう言うと、橋本さんが噴き出す。
 目が本気で? そんな疑問を投げかける。

「冗談よ。それで、その異変はなに?」
 百田さんは軽くいなしたが、橋本さんはがっくりと頭を垂れる。

「ああ、この周囲を分隊ですかね。個別の二チームくらいに分かれて、ファイブマンセルで二チームがこっちへ向かい、後方で一〇人が何かをしています。車二ついや三つかな」
「隊長、問い合わせ」
「ハイ」
 奥の部屋にある無線機に、橋本さんが走って行く。
 その間に、簡単な地図を描いて説明をする。

「各国から通知は来ていないとよ」
 やれやれという感じで、橋本さんから報告。

「じゃあ、ちょっと相手をしてきます」
 そう言うと、百田さんが止めてくる。

「ちょっと待って」
 そう言って止めてくる百田さんだが、さらっと言ってみる。
「ああ、マイリもいるので大丈夫。それに軍歴は俺の方が長いから」
「日本人で、数千年のキャリアなんかいないわよ」
 当然だが、そう言って呆れられた。

 マイリと合流して、説明をする。
「さあ行こうか」
「はい」
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