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第五章 星々は移ろい、種族は邂逅する。

第110話 導く者が住まう、母なる星

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 ゴタゴタから十年後。
 すっかり生活が変わった地球。

 転移ステーションの設置により、航空機や電車が無くなり、物流も世界中何処へでも数時間内に配達が出来る世界。

 許可が無ければ、ステーションを通ることが出来ないため、犯罪を犯した者は筏でも使わないと海を渡れない。
 むろん、自治区同士もシールドで区切られているため、無許可で移動は出来ない。
 つまり、攻撃など出来ない。

 世界中で、兵器が無意味になった。

 神宮路、織戸、久賀の経営するグループが、新エネルギー事業と医療を独占する中で、健康などと言う物は当然となり、ほぼ種族的限界、百二十五歳の直前まで健康に生きられるように調整される。

 だがそんな中で、ハンター達は人を超え、ハイヒューマンとも言える種族になっていることが発表される。

 細胞レベルで変質をして、まるで別の種となっていると。

 予想寿命は五百年。
 流石に翼は生えないが、それでも。いつまでも若い姿に、皆が憧れるようになる。

 腕に付けたリングから、情報が直接脳へと送られ、実際に目に見えているように情報が流れる。
 考えるだけで、情報にアクセスが出来る。

 そんなリングが、市民証となっていた。

 生産と物流は自動化されたが、それ以外は生き残り、仕事として存在。
 ただ、自治区としての決定は上から降ってくるため、議員などはすべて無くなった。実務としての職員。それが残るのみ。

 後は代表。

 そうこの頃には、仕事は暇つぶしに行うものとなっていた。
 ベーシックインカム。お小遣い制度。
 それでは足りないという人間だけが、仕事をする。
 後は趣味的に農産物を作るとか釣りをする。

 だが、大抵の物が申請すれば支給される。
 これでは、ペットだ。
 そんな声も出たが、人はすぐなれる。
 だがその、ペット化のおかげで、趣味的犯罪以外はなくなった。

 大きく急激に変わった世界に、いきなり通達がやって来る。

 本星から、ビーキュラマグノールムが来ると通達が来る。
 それは、偉大なる者達の乗り物。
 つまり、賢者がやって来るという御触れ。

 大多数の地球人は、ピンと来ないが、代表達。
 特に、十年前の通達に絡んだもの達は記憶していた。

 あわてるが、来ると言うだけで、何処へなのか、何のためにが明文化されていない。

 だがそんな世界で、確実に日本だけは焦っていた。
「目的は、彼の所へでしょうね」
「他に何があるんだ」

 当然だが、本人には連絡が来ている。
「えっ。就任? 何にに?」
「言っただろ、代表だ。我らの上に就きな。なあに、生活を変える必要は無い。それに議論をしたが、体もそのままでいい。ミー=キャエル、ドラガシメル人の体も再生はしたが、人種的融和を促すためにヒト型で、指導者の証である翼を持ったほうが、こちらでの跳ねっ返りが出づらいだろうと判断をした。どうしたって地球人を蔑む者が多いからね。そっちへ行くから挨拶をおし。じゃあね」
 また言いたいことを言って、ブチッと切られる。

 そうしてまたである。

 東京湾沖に、全長六キロのとんでもない船が到着をする。

 だがそれ以外に、軍関係の船が二十隻ほど、随員を乗せてやって来た。

 それはもう、圧巻。

 それは良いが、三角形をした、他の船と違い。妙に尖り流線型。しかも真っ赤。

 それを見たマイリが、にまにましている。
「あれは、赤髭です。イタリア語でバルバロッサ。気に入ったのでデータを送ってみました。サイズも違うし、大丈夫です。そうなると、竜司様の船は白ですよね。名前はやはり北欧神話から頂きましょうか?」

 そんな、意味不明なことを言い始める。

 まあそんな事はいい。
「来たよ。おいで」
 とまあ有無を言わさず、連絡が来る。

 乗るところを見せるため、わざわざ一度海岸へ行く。

 長い階段が伸びてきて、踏み出すとエスカレーターになっていた。
 マイリと共に、乗り込んでいく。

 そう言えば、因子を組み合わせたおかげか、マイリが、セクスタプレトに変わっている。
 あの時には、大泣きをしてなだめるのが大変だった。
 ドラガシメル人と違って、どうも地球人の因子は、努力をすると進化をするようだ。
 
 まだ種族として、進化の途中なのかもしれない。

「さて来たね。服を作ろう。翼を出せるように」
 賢者達に迎えられるのは緊張をする。

 そしてお披露目が始まると、事もあろうに、賢者達がこちらに向かい礼を取る。

 その中央で、俺は翼を広げて挨拶をする。

「母なる星。地球。そこに生まれし者達が正式に手を取り十年の月日が流れた。この良き日に、賢者達の願いを聞き入れ、我、ミー=キャエルが宣言する。人とドラガシメル人。それらを統べ、導くものとなろう。両種族が共に手を取り合い。さらなる高みへ登ろうではないか。わたしは見た、さらなる髙次とそこに住まう存在を。この宇宙を創造する者が居る。そこへ至るために共に精進をするが良い。わたしがそれを導こう」

 そう言いながら、例の金色に見えた髙次の力。それを解放をする。

 残念ながら今の俺の力では、銀河の状態を戻すことは出来ないが、願ったとおり、少しだけ速度が遅くなったようだ。
 今はこれで良い。

 定期的に、魔王は湧くし、地球人に進化をしてもらいながら、状況を変えていこう。

 こうして、地球はドラガシメル人にとって、指導者が住まう星と付加価値がつき、地球人の進化についての考察が、有名な教授により発表されると、見方が変わったようだ。

 そう、ずっと眠っていた教授。
 彼は、いきなり起こされ、命令される。
「贖罪として、働きな」
 賢者達が見つめる中。

 そして、自分が殺した俺が、人となり、その背中に輝く翼。
 それを持ち、賢者達の一段上で座っている。

 彼は賢く、すぐに理解をして受け入れた。

 まあ完全に、力なき者を払拭するのは無理だろうが、これから、ハイヒューマンが増えれば変わるだろう。

 年々変わっていく地球を見ながら、家族と、ただそれを見守っていく……


 ――つもりだったが、事あるごとに呼び出される竜司。
「畜生。詐欺だ。賢者と指導者が、こんなに忙しいなんて聞いていないぃ」
 今日も、マイリと共に、どこかへ飛んで行く。



 お読みくださり、ありがとうございました。
 途中で、設定資料が飛んでしまい、怪しいところがあったかも知れません。
 時間が出来れば、全体を推敲いたします。申し訳ありません。
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