ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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ダンジョンができた世界。

第17話 初めての経験

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「はーい。皆さんこちらです」
 ここは、人里離れた富士の樹海。

 ダンジョンが出現したために、自衛隊の管理下になっている。

 そしてこのダンジョンが、基本ダンジョンであり、各都市にできたライトバージョンとは少しだけ違う。

「意外と、入り口は大きいんですね」
 ここに居るメンバーは、丸対アンケート取得特別チームだったはずだが、『ダンジョン開発準備室』と名称が変更されて、司への窓口になってしまった。

 中でも、親への反抗期山瀬 桜やませ さくら高校二年生や、ちょっとオタク気質で異世界小説好きの土屋 紗奈つちや さな中学二年生が、彼と連絡を取りまくってしまった。

 彼女達は、司のことを気に入ってしまった。
 周りに居ないタイプで、年齢の割にかなり内気で恥ずかしがりやな彼。女の勘が働き、優しくて安全なタイプだと見抜いてしまった。

 彼にとって、人と触れ合わずに過ごした七年は、人格形成に大きかった様だ。
 ある一面では、ぞっとするほど鬼畜だが、その姿はまだ誰も知らない。

 そして、メンバーは他にも、両親や妹の千尋。

 そして本命の自衛隊員と警官が十人ずつの一班ずつ。
 無論、参加をしたのは、若手の幹部連中。

 警察は、すでに警部となっている、伊藤 直人いとう まさと。柔道家。
 長谷川 達也はせがわ たつや。空手。
 近藤 裕介こんどう ゆうすけ。柔道。
 彼等の他、大卒組の警部補七人。
 彼等もまた、武道をやっている。
 だが、後藤 愛美ごとう あいみ遠藤 梨乃えんどう りのは気が強く、プライドが強めであり、上官になにか思うところがあり、リストに入れられた感じがある。

 通常の勤務では、あまり男女差を感じない。
 だが、本当の事件現場では個人的な暴走は、周りを巻き込み、無用な事故を起こす原因となる。無論有事には、学歴など意味が無い。
 彼女達は、男性の多い職場でプライドを保つために必死なのか、その辺りが分かっていないようだ。

 そして自衛隊も幹部候補生。
 全員が二十五歳。三尉である。
 陸上が四人。
 海上と航空が各三名参加している。

 陸上から参加している女性二人。
 稲垣 弥生いながき やよいは、体力的に少し落ちこぼれていて、秋山 真優あきやま まゆは跳ねっ返り。
 どちらも、意図された上官からの推薦があった。
 優秀なのは優秀なのだ。

「さあ、それでは奥に向かいます」
 警官も自衛隊も銃を装備中。
 此処は管理区域だから、一般的な日本の土地ではない。

「あの子が、特異点なの?」
「そうみたいよ」
 一応規律正しく、所属ごとに並んでいるが、前を行く公務員関係者組は、年齢も性別もバラバラ。
 防弾防刃性の欠片もない服装。

 そう、レジャーに向かうような、デニムのパンツとか、カーゴパンツ。ジャケットもブルゾンの薄い感じのものだ。
 靴も、普通のウォーキングシューズだ。
 緊張感などまるでない。

 だが、司は彼等の上司から一泊二日の予定で聞いている。
 その行程なら、一気に十階くらいまでは、行けるかなと考えていた。

 一層は、直線で三キロも歩けば、下へ降りる階段に到着をする。ただ、大体五階までは、各階三キロずつ距離が長くなる。

 当然ダンジョン内では、ドロップもある。
 主に、竹の器に入っているパンなのだが、魔力を豊富に含んで美味い。日本のうま味を超える、第六の味である。
 体が、本能が欲する味なのだ。
 まあ魔力回路がないと、いまいちな味のパンになるらしい。
 家族には食わせたが、反応が悪かった。

「これが絶品のパンなんだよ」
 そう言って渡すと、興味芯々だったのに、一口かじると、焼いてみたり、パターやジャムが無言で出てきた。
 その反応を、司は理解ができなかった。

 後のドロップは、棍棒とか、錆びたナイフとか、冗談で言ったたわしとか…… 浅い階層はあんまり良いものは出ない。
 そうそう、ドロップがドロップすることがある。
 これは、シンのご褒美らしい。
 だが、ハッカのドロップ率が多い。

 司が最初に嫌がったら、ハッカの白い奴が多めに出始めた。
 どこまでも、シンは性格が悪いようだ。

「出ないね」
「モンスターの氾濫で、みんな出てしまったのかしら?」
 家族からそんな声が聞こえる。
 最初は、足がガクガクだったのだが、何もないために緊張感が切れてきたようだ。訓練を受けていない人間は、そんなに長時間集中していられない。

 実はいる。
 だけど、司がいるために、気配を感じてゴブリン達は奥へ奥へと追われていた。

ぐっっぎゃあやべえ。なんかやべえのが来る
 そんな事を言いながら……

 そうして、追い詰められて行った先は、下り階段。
 彼等は、謎の法則により通常時は階層を越える事が出来ない。

 そのため、階段前には五から六十匹のゴブリンが、ガクブル状態で彼等を迎えていた。

「やっと居たけど、何あれ?」
 千尋は、先日の光景を思い出す。
 よく分からない表情だけど、ゴブリン達は嬉しそうに彼女達に対して、攻撃をしてきていた。
 だけど今日は、猿団子のように固まって動かない。

「新世くん。攻撃をして良いのかね」
 代表なのか、対策室班長の山瀬 秀樹やませ ひできさんが聞いてくる。まだ三キロくらいしか歩いてないのに、多少お疲れのようだ。

 まあモンスターの居るダンジョン。
 薄暗いし、緊張と恐怖が、通常よりも疲労させているのだろう。
 「ええと、こっちが三十三人なので、一匹ずつくらいですね。銃を使うのなら、弾の跳ねっ返りに気を付けてください。こっちの面子には、とりあえず一匹ずつ連れてきますから」
 そう言って、一瞬姿が消えると、とりあえず一匹を捕まえてくる。

 その間にも、出来る者達は、攻撃をしていいのだが、誰も攻撃をしない。
 山瀬さんに、渡した棍棒で殴るように言ったのだが、完全に及び腰である。

 そう。どう見ても生き物。
 違うと言われても、実際に司が首根っこを押さえていると、もがきながら、何か呻いているのだ。
 肌の色が違うが薄暗くてよくわからないし、一見すると子どもが嫌がってもがいているとしか見えない。
「本当に、生き物じゃないんだね」
「ええ。シン。神が言うには、魔素によるよどみのようなものだと。日本で言う穢れですかね。神話にも結構登場をしていたとか」
 実際、平安の頃には、物の怪を作り、もっと小規模ながら人に戒めを行っていたようだ。
 共通の敵を作るのは、今も昔も人には効くようだ。

「ぬう。うりゃあ」
 ゴンと言うよりは、ぐしゃっと何かが潰れる感触が手に伝わる。山瀬は自分でやったのだが、嫌そうな顔になる。

「さあ、次ですね」
 一瞬姿が消えると、次のゴブリン生け贄が捕まえてこられる。
 だがその時には、山瀬が胸を押さえて蹲る……
「山瀬さん」
「お父さん」
 周りにいる対策室の面々や、娘の桜が寄ってくる。
 反抗期でも、呻く父親をみると、心配なようだ。
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