ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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始まった新世界

第40話 やっかいな、気持ちという魔物

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「なんで、増えるんだ」
 折角壁を造り、自動で攻撃をするシステムを組んだ、ヨーロッパのある国。

 一見すると上手くいったような感じだった。
 だが、それを造る度に、ダンジョンは増えていき生活圏がどんどん減っていく。
 壁だって武器だって、日々消費する弾薬もタダではない。

 だがそれを、あざ笑うようにダンジョンは増えていく。

「閣下。このリストをご覧ください」
 見せられたのは、各国別のダンジョン数の推移。

「何だ? 増加はヨーロッパだけだと?」
「はい。日本が提唱した通り、人々をダンジョンへ入れると氾濫と新規ダンジョンの増加がなくなります。そして、六階からは自然豊かな森があり、川では様々な金属や宝石がとれるとの情報も来ています」
「どこからだ?」
「日本です」
 それを聞いて悔しがる。

「日本、日本、日本。何にでも顔を突っ込み、何もかも盗んでいく。あいつらがダンジョンを創っているのじゃないのか? 二千年代の自動車締め出しをした恨みで。それともクジラか?」
「さあ? それは流石に無いでしょう」
 担当官は、苦笑いをするしかなかった。

「とにかく、各国のGDPは今年激減するだろう。経済損失が大きすぎる。ええい。仕方が無い。市民の命をダンジョンにくれてやれ。いや先ずは、移民からだな。奴らでテストをしろ」
「はっ」

 そうして、経済的に耐えきれなくなって、各国はようやっと動き始める。

 動き始めたのは、半年が経ち夏の真っ盛りの頃であった。



「試験勉強は進んでいるの?」
 いきなりノックもせずに入ってきて、開口一番そう言って仁王立ちの妹。
 大学生となり、最近は偉そうな態度に磨きが掛かっている。

「試験は月末だ。大丈夫だよ」
「何で月末なら、大丈夫なのよ」
「もうほとんど教科書は覚えた」
 司はあっさりとそんな事を言う。
 この兄は軽く言うが、それで何とかする力を持っている。

「あっそう。それで、それはなにしているの?」
「知り合いが、プールに行こうって言うんでな。今日は店が休みだし」
「知り合い? 店? もしかして創作中華外道そうさくちゅうかそとみちのひろみさん達と行くの?」
「ああ、そうだ」
 そう答えると何か考え始める。実は外道は千尋も常連になっている。
 兄が行くところに、行かないわけはない。
 特に、あのチームは女ばかり。

「私も行く」
 そう言って部屋を出て行ってしまう。

 そうして、大好きな兄に近寄る女どもを、精査しなければと気合いを入れてやって来た千尋。

 だが、待ち合わせの場所へやって来た女達は、予想以上に多かった。
 ひろみ達五人『赤の救済者メサイア』と店主の湯霧ゆきり 次郎じろうは予想通り。
 それにダンジョン開発室の山瀬やませ さくら土屋つちや 紗奈さな水津みずつ あおいは、もう何かがある時には必ず顔を出すセット。

 だが、『紅に染まる錆びた爪レッドラスティネイル』の女子高生三人。今年三年になって、随分りりしく女の子らしくなった。

 そして、司転落の目撃者。
 篠原しのはら 麻衣まい二十一歳。
 伝手から司が帰ってきたことを知り、たっぷり八ヶ月ほど悩んだ末に、彼の元を訪ねた。引っ込み思案な彼女だが、司を見て食指が動いた。
 まあ中学校の時から気にはなっていたのだし、そういう事なのだ。

「師匠って、先輩のお兄さんなんですか?」
 千尋に問いかけられた言葉。
 よく見れば、レッドラスティネイルの三人は、高校時代の後輩だ。

「えっ。うんまあ」
 去年の夏までは、妄想お兄様とかエア兄貴とか揶揄されていた存在。

「えっ師匠?」
「はい。私たち、今鍛えて貰っています」
 そう言って嬉しそうな顔だが、色気が見え隠れ。

 この子達、文化祭とか色々なところで関わりはあったのだが、もっとやる気の無い感じだった。そう。どちらかと言えば、いい加減な女子。そんな記憶しか無い。それがなぜこんなに…… はっ。きっと黒ね。千尋の目が鋭くなる。


 そして、プールへと向かう。
 市民プールとかではなく、民営のアトラクション的な物がある場所だ。

 男二人と、女十三人。
 そんな集団は、ものすごく目を引く。

「あれって、なんかモデルの団体か?」
 司や湯霧が引率に見えたようだ。

 そして、夏のプールには、モテない野郎どももやって来ている。
 そんな奴らは、当然司達のことがおもしろくない。

 そうモテモテハーレムを狙う、『暁の兵団』や『トワイライトウォーリア』。
 特に、『トワイライトウォーリア』の連中は、声をかけまくってダンジョンへ女の子を誘い、その結果でダメージを受けて、落ち込んでいる最中だった。
 彼等の予想とは違い、あこがれの目ではなく、まるで犯罪者を見るような視線と、心ない言葉でダメージを受けまくってきたところだ。

 夏の本番となり、避暑地としてダンジョンは人気となっていたのに。
 そして、この頃になると、正式に六階への到達者が出始めてきた。

 そう、小粒だが、宝石やら貴金属が採取できると人気が出ていた。

 俺達は彼女達を守って勇敢に戦った。それなのに……
「うわっ。こわっ」
「シリアルキラー発見。おまわりさん」
「通報案件ね」
 とまあ、言葉の槍が彼等の心をえぐった。

 あげく、
「大丈夫だった?」
 モンスターを倒して振り返ると、彼女達は一目散に逃げて行った。
 モンスターの中に、ゴブリンソードマンやランサーが混じっていたから、ズボンのベルトが切られたようだ。

 彼の中で、なるべく涼やかな笑顔を向けたはずだった。
 だが、運悪く、彼の下半身でズボンがストンと落ちたのだ。
 日々トレーニングを行い、太鼓気味だった腹が、この半年でヘコんだのが、裏目に出た。

「はっ、ちょっと待って。ダンジョンだから危ないよ」
 ここはダンジョン内。女の子達だけでは危ない。
 そう思って叫んだのだが、彼女達の耳から脳へと伝わる間に言葉は変換された。
「ちょっとまてぇぇ、男女なんだ。やらせろよ」
 まあそんな感じに。

「待てって。やらせろって、言っているわよ」
「いやよ。趣味じゃないし気持ち悪い」
「管理室に通報をしよ」
「そうね」

 お気づきだろうか? 彼女はダンジョンの薄明かりの中を、ライトも無しに走っていく。
 それも超速度で。

 彼女達もまた、夏休みになり、浮かれてにわかにやって来た連中を逆ナンをして、お友達になろうとか考えていた。

 彼女達が望んでいたのは、ショタというわけでもないが、かわいい男の子が弱いながらも必死でゴブリンと戦い。一生懸命になって、彼女達を守ってくれる人。
 大枠では、違っていないのだが、細かなところが絶望的に気持ちが悪かった。

 彼女達が望んでいたのは、後のことを想像をして、股間を膨らませ、鼻の穴を膨らませた顔で、薄笑いを浮かべながらゴブリンを撲殺する様なやばいやつではない。
 その姿は、絶望的に気持ちが悪かったのだ。

 中途半端に顔が良かったのも、災いをしたのかもしれない。
 期待が高いと、ギャップが大きくなる。その差は、簡単に心を絶望へと向かわせるのだ

 それは、不変。
 世のことわりと言うものである……
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