ダンジョンのできた世界で、俺は世界を救えと望まれる。えっ、やだよ。ーその男、神の遊戯に巻き込まれて最強となるー

久遠 れんり

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始まった新世界

第64話 司るもの

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「綺麗」
 水の流れ込む階段を降りて、そこにやって来た一同。

 そこは、まるで水の宮殿。

 周囲は崖となっていて、壁面を水が流れ落ちてくる。
「少し寒いわね」
 ひろみがそう言うと、湯霧が後ろからジャケットを彼女の肩にかける。
「ありがとう」

「司君、あそこに居るのが精霊かね」
「そうです。面倒なのは、が彼女に対して力を示さないと、力をくれません。各自が、倒さない程度にボコってください」
 半透明な美しい女性。
 一糸まとわぬ姿に、思わず湯霧は見とれる。

 すぐに衝撃が来る。
 横にいたひろみの、えぐるようなボディブローが炸裂。
「ふぬうっ」
 湯霧はとっさにガードをしたようだが、腹を抱えて蹲る。

 空気が焦げた匂いがするし、衝撃波が来たということは、ひろみの拳は音速を超えたようだ。

「次郎さん。あんなのが好みなんですか?」
 地の底から響くような声が聞こえる。
「嫌…… そうじゃ無いよ、裸だと男はつい見てしまうんだ。ねえ司君」
 そう言いながら、湯霧は普通に立ち上がる。

「そうですか…… ねぇ?」
 俺は言葉を濁す。
 こっちに振るなと言いたい。

「ですがまあ、精霊ですから見た目だけですよね。ウンディーネやシルフは女性型だけどノームやサラマンダーはオッサンだし」
「えっ♡」
 誰かが嬉しそうな声を出す。

「まあ、各自攻撃。反撃をしてくるから、切られないでください」
「切られる?」
「ええ。水って高圧で喰らうと、簡単に腕とか切れますから、シールドでいなしてください。まっすぐに喰らうとやばいですから」
 さらっと司から爆弾発言。

「いきます」
 司と話をしている湯霧を放置して、ひろみはフロアを駆け抜ける。

 攻撃を食らわないように、左右に体を振りながら突進。
 その姿は、やる気は無かったのだろうが、見事に分身をしてウンディーネの元へ、あっという間に近接。
「次郎さんの興味を引くなんて」
 どうやら個人的な怒りが、彼女を突き動かしたようだ。

 パンと破裂音。

 拳が音速を超える。
 そして、その拳には魔力を纏っている。

「あっ」
 司が変な声を出す……

 圧倒的なオーバーキル……
 ウンディーネは、なすすべなく上半身を爆散させる。
 湯霧でさえ耐えているのに……
 いや、湯霧が異常なのか?

 とっさに水でシールドを張ったようだが、彼女の放った拳には無力だったようだ。

「あら? 弱いわね」
 ひろみは、消えていったウンディーネを見て驚く。
 その時、司が言った言葉を思い出す。
「全員が、彼女に対して力を見せないと力をくれません。倒さない程度にボコってください」
「あっ……」
 振り返りざま、きゃるんという感じでかわいこぶるが、皆の目は冷たい。

「ごめんなさい。以外と弱くてぇ」
 だが、そんな態度には騙されない。
 皆の目は冷たく、仁王立ちである。

「はうっ」
 そんな時に、ひろみに対して、ご褒美である精霊の力が流れ込んできた。
「うんっ。ああっ」
 体を抱きしめて身もだえる。

 また例によって、体が作りなおされる感覚。

 その様子を見て、さらに皆からの目は冷たくなる。
「良いわね、一人だけ」
「良かったわね。強くなって、一人だけ」
「あーあ。明日も来ないといけなくなったわね。いいわねえ、力を得て…… 一人だけ」
 皆からの言葉が、グサグサと刺さる。

「明日は営業だから、また来られるのは水曜日か?」
 とうとう、湯霧までぼやいてしまう……

「次は地属性のノームだから大丈夫だけど、一八階は火属性のサラマンダーなんだよなノームも、水をぶっかけるのが一番簡単だし、今日は帰りますか」
 司にそう言われて、皆は帰ることに。

 ちょろっとだけ、ムカッときただけなのに、ウンディーネを爆散させてしまった。
 嫉妬の力は恐ろしい。
 とりあえず、皆は帰ることになってしまった。


 だけどまあ、考えれば、明日の予定が埋まって来られないのは、湯霧とひろみだけ。
 奨学金を借りている、貧乏グループの彼女達は、日々五階の河原で石を積む……
 いや、宝石を集める日課のみ。
「良いですよ」
 司から快く返事を貰い、翌日に再トライをすることを聞いた。

 それを聞いて怒ったのは、レッドラスティネイルの三人。
 おバカな先輩達と、ひ弱な高校生達の面倒を、またゾンビ達にまみれて行わないといけない。

「先輩が、司さんの予定を壊したんですって? 中華ソバ、半チャン。餃子付き。先輩のおごりで」
「先輩のおかげで、私たちの予定まで狂ったんです。中華ソバハーフサイズ、チャーハン大盛りで。ごちそうさまです」
「先輩のおかげで、司さん成分が…… 中華ソバ、五目あんかけ。チャーハンと餃子。当然先輩のおごりですよね」

 こうして、ひろみはしばらく、バイト代がお詫びのラーメン代やチャーハンに消えることになった。

 だがその頃、岸本きしもと 莉愛りあ三浦みうら 怜奈れな上条かみじょう 結心ゆい芦屋あしや 柚花ゆずかは喜んでいた。
 いつもは、河原で石を積む彼女達。

 それが、司を貸し切り。

「じゃあくれぐれも、高圧の水流には気を付けて。ウンディーネが両手を上げると来ますから、離脱かシールドでいなしてください」
「うん。行くわよ」
 リポップしていたウンディーネは、今のところ様子見状態。

 周りを囲み、魔力を纏った拳を、彼女達はぺちぺちと当てていく。

「水流来ます」
 司が叫ぶ。

 彼女達は器用にシールドを張る。 
 ウンディーネに対して、おおよそ四五度。強烈な水流だがまっすぐ当たらなければ怖くない。
 それに、至近距離じゃなければ、かなり力も減衰する。

 途中で、莉愛が思いつく。
 シールドを張ったまま回転させる。
 それは、なかなか器用な技。
 普通は張って消すを繰り返す。
 だが彼女は張ったシールドを、盾のように使ってシールドバッシュを決めた。


 吹っ飛んでいくウンディーネ。
 上むきに舞い上がった水流が霧となり、周囲の光りを屈折・反射・分散して、周りに虹が出来る。

「ふわぁ、綺麗…… 今の何?」
「シールドを張ったまま振り回したの」
 そう言いながら、エイヤという感じでやってみせる。

「えーとこう? あん。消えちゃう」
「上手く行かないわね。莉愛あんた器用なのね」
 そんな様子を、司はうんうんと微笑ましく眺めていた。

 そんな時、地面に転がされたウンディーネの目が、怒りのためか怪しく光った……
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