不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第5章 獣人国平定

第55話 祭の始まり

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「なんだか昨日、宴会の流れから、やっちゃった人が多かったみたいよ」
 今日は朝から、町がザワついている。

「あの魚のせいじゃないの?」
 視線の先には、シーサベント。

「まあ、捌いて冷凍しておこう」
 
 今余った内臓とか骨は、粉砕後に乾燥させて肥料に使っていた。
 これも商売。
 やはり商売は、多角的にしなければいけない。
 
 日本でも、繊維を主に行っていた会社の株価が暴落をしていた。
 安い海外製の繊維に負けた結果だ。

 まあ今俺は、帝という立場なのだが、何時から商売人に?
 この国で使う貨幣を、少し稼ごうとしただけなのに……
 この所の売上額が、ものすごいことになっている。

「魔導具が止まります」
 なんとこの骨、鉄とかでは砕けない。

「石灰質の構造じゃないのか?」
 昔、骨はカルシウム、牛乳を飲みましょうと言っていたコマーシャルの記憶があるが、どうやら、この骨は違う様だ。

 実はエナメル質とアモルファス化した物質、そしてセラミック。
 珪石けいせきにシリコンやダイヤモンド、ジルコニア、強化アルミナ等々が複雑に混ざり込んでいた。

 硬質でありながら、ある程度の柔軟性を持つ。
 そして、よく判らないが、魔力によりさらに柔らかくなる。

 首長竜のような見た目とでかい体を、水中でくねくねと動かすには、必要な進化だったのだろう。
 
 現時点では積んでおくしかない。

 だが、広場に積んでいたことで、子ども達の遊び場になり、謎が解けた。

「ねえおじちゃん、この骨曲がるよ」
「えっ?」
 積んでいたことで、子どもが遊ぶと危険だと、クレームが来た。

 それで様子を見に来たのだが、ヒレの一部なのか細長い骨をその子は持っていた。
 それが、鞭のようにしなっている。

 鉛筆を振って起こる錯覚『ラバー・ペンシル・イリュージョン』ではない。
 明らかに、あの硬かった骨がくにゃっとなっている。

「どうして…… どうやって?」
 しゃがみ込み、その子と目線を合わせて優しく聞く。

「あのねえ、体の中にある力を、流すの。そしたらこんなになったの」
「そうか、ありがとう」
 つい頭をなでる。

 あっ、力。一瞬やばいと思った、だが相手は、女の子とはいえ五歳くらいの獣人。
 大丈夫だったようだ。

 少し離れた所で、その子はヨシュートを見つめる。
「―― あの人が、パパなら良かったのに……」
 多少、家庭不和の予感を残しながら……


「よし」
 骨全体に魔力を流すと、骨格模型が崩れていく。
 さらにイメージをする。
 すると、一繋がりの何かが出来た。

「なにか、見たことがある形、数珠っぽいがあまり教育に良くないな」
 そう、ビーズが繋がっていて、元の骨のサイズにより大きさが違う。 
 先端の小さな玉から、ドンドン大きくなる一繋がりの何か……
 超巨大だから、使うと壊れるな。
 何とは言わないが。

 もっと明確に意識をする。
 すると、積みやすい柱となった。

 兵達に、船へと運んで貰うが、見た目よりも重い。
 一つを、試しに剣にしてみる。
 すると、結構バランスも良い感じ。
 少し見回して、近くにあった木を切ってみる。

 手に来る衝撃。うん、斧で叩いた感じ。
 たんなる剣だ。

 木の幹は、三十センチくらいのふとさだが、半分食い込んだくらい。
「叩き付けると、こんなものなのか」
 結構、力を入れたが、切れないものだ。

 何も考えずに魔力を流すと、へにょんとなる。
 まあ、刃こぼれはしないし、もし欠けても簡単に修正ができる。
 便利だという事で、剣を造り兵に装備させた。
 この世界で見たことのない、白い刀身。

 まあその剣だけではなく、弓とかも作ったし盾やプロテクターも作った。
 プロテクターは、装備者の意識で変形をするから使いやすい。
 特に女の人は、胸当てとか形状が複雑だから……
 なぜ皆、俺の前に並ぶ……
「魔力を流せば、自由に形が変わるから、調整は自分でやれ」
「「「えー」」」

 
 まあそんな日々を過ごしたある日、振れが出る。
 立て看板の前で、この国の兵だろう高らかに宣言がされる。
「今年は、獣王様選定の年。参加者はこの地で開かれる予選会に参加するように」

 人数が多いためか、町単位で代表を選ぶ予選を開催。
 その後、王都で予選。
 そして、各国代表で本戦という流れのようだ。

「結構、大変そうだな」
「決勝まで、一年掛かるそうですよ。やはり武力で」
「やめい」
 ロニーの脳天に、チョップを落とす。

 こいつ最近、こそこそと何かをしている。
 ふいに姿が見えなくなるんだよ。

 そう、ロニーは布教活動をしていた。
 真の神教、ルーク。
 そう、ヨシュート様は、人々に光を与え幸せに導く。ここに集え、教えを広めよ。
 そう言いながら、シーサベントの肉を使い、サバトのようなものを開く。

 完全に怪しい宗教……

 そう獣王とは別に、アングラな支配。
 すべてはヨシュート様のために。
 本気だから質が悪い。


 まあいい。
 町の外れで、予選が始まる。
 参加費は、銀貨一枚。
 半分は運営がとり、残りは賞金。

 そして、光栄戦士選出投票と言われるギャンブル。
 そう光栄なのだよ、民からの支持を得たものが王たり得る、その者を選定せよ……
 とかまあ。

 名前を広めるには、便利と言えば便利、勝てば知名度は上がっていく。
 オッズと共に。

 
 そしてどんなものかと思えば、かなりの人数が詰めかける。
 近隣の村からも、村の力自慢が、村人から集めた銀貨を握りしめてやって来る。
 そう村人の期待と責任を一身に受けて。

 若そうな獣人君は、参加者を見て、鼻水と涙を流し、ぷるぷるしている。
 背後に控えるのは応援団だろうが、背後の圧がすごい。

 そんな光景が、あちらこちらで見られる。

「予選中は、無手だから気楽だ」
 そう獣王たるもの、おのれ自身が強くなければいけない。

 だけど、本戦は武器を使えるのがよく判らないが、武器を買うとなれば金が掛かる。まあそう言うことだろう。

 農民とかには、出場に必要な銀貨でも大金なのだ。

 そして、静に? こそっと、神聖なる戦いの中に異物が混ざる。
「対戦者、よしゅーとぉー」
「「「「「わー、みかどーぉ」」」」」
「「「「「勝ったら、抱かせてあげるぅ」」」」」
 獣人の中に、ファンクラブができていた。

「モテモテですね」
 ヴァレリーとベルトーネは、俺がぬいぐるみを苦手なのは知っているので余裕の笑顔。
 その横で、ユキが優しく微笑む。
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