不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第5章 獣人国平定

第76話 噂の組織

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 『神の光芒』を傘下に従え、先ずは……
「商売だぁ」
 ノリノリでヨシュートは宣言をする。

 あらかじめ割り振られた、書類に従い皆が各方面へと走り始める。

「ええ、それはもう一瞬でございました。あのお方が一通り建物を見学、その時に不要なものは消え失せ、最上階で何かをお考えでしたが、『良し決めた』と仰ったのです。そうです。何かを決められたのですぅ……」
 そう言って、パラディウスは握りこぶしをしながら、天を仰ぐ。

「その後、静かに目をつむり、そっと開く…… すると、世界が光に包まれたのです…… その後は、皆見ればわかるでしょう。この建物の変化を、レンガを積まれて作られていた壁は、一体化をして石となり、この磨き抜かれた様子。どこの貴族の屋敷よりも、王城よりも美しく荘厳。あの方は神です、一緒にお仕事を出来ることを喜びましょう」
「「「「「はい」」」」」

 そう、あのホテル。
 改装が終了をした。
 もう目立ってもいいやと、窓には板ガラスがはめられて内部まで光が届く。
 一階のフロアには、ステンドグラスから差しこむ光が色とりどりなのだが、不思議なことに床では色が白く見える。

 そう光の三原色だが、この世界の人には不思議に思える。

 そしてステンドグラスのモチーフだが、女神二人を従えるヨシュート……
 今の所、バツはないからいいのだろう。

 それを作りながら、ヨシュートはつぶやいた。
「今、何点なんだろう?」
 その言葉は、周りの者達に困惑を生んだが、誰も問うことが出来なかった。

 ヨシュート様の奇蹟、その足跡。
 いくつか書かれた黙示録の一つに、その一節が記述されていた。

 その荘厳な宿舎は、王都でも話題になる。
 正面にある庭はイギリス式とフランス式が混ざっていた。
 当然造った本人が、違いを理解をしてないだけであるが、微妙なバランスを保っていた。

 上から見るときっちり対称だが、下で見ると庭の造りは自然を切り取りモチーフにしたもの、所々に小川や築山が存在をして、アーチや灯籠まで……
 当然それは、防衛システムで自動追尾の対人攻撃魔導具である。

 正面以外は、和風。
 縮景や借景を取り入れて、そこは自然の姿を見せる。

 ただ山をイメージする石は、防衛時の盾であり、反撃の要である。
 歩くだけで、ジャリジャリと音がする砕石が撒かれており死角はない。

 無論中庭の中央部は隠されているが、練兵場となり、各種訓練が行える。
 地下には射撃訓練場。
 今までの拠点よりは広かったため、かなり気合いが入った。

 そして、あの闘技場の奥、現地人の知らないゲートがアリ、人の住む大陸と繋がっている。
 これにより、船で来た者達は役目の交代が出来ると伝えたのだが、たまに家族と会うだけで現在の職務から離れる者達はいなかった。

 そう密かに、混ざり物と言われる毛の無い獣人がブームとなっていて、独身の男性達は妻として迎えていた。
 驚くことに、普通に子どもが生まれるようだ。

 だが、なぜか、女性で獣人を夫に迎える人は少なかった。
 理由は、不明だ。
 多少部分部分が、毛深かったり、長かったり短かったり膨らんだり抜けなくなったり、まぁ色々と問題があるようだ……

 彼らにとっても、獣人社会では長年虐げられていたが、彼らは普通に接してくれる。彼らにすれば、力のある毛のない猿だから違和感もない。
 双方がウインウイン状態であった。


「見たか、彼の者達の居住地を……」
「ああ、美しく洗練されていた、住居の庭に自然の姿。外では獣やモンスターがいるため散策が出来ない」
「噂によると、川まで流れておるそうで、透明な床の下、美しい魚たちが見えるそうだぞ」

 そうまるで、成金趣味。
 お金があることに、なれていないのだ。
 メインの建物は、ヨシュートの家でもあるのだが、地下の施設を隠すために、どうしようかと考えて、ロビーの床をガラス張りにして、ライトアップされた川の中を魚が泳ぐようにした。

 だがそれは、技術的にも発想的にも先進的で、あっという間に王にまで話が伝わる。
 そのため、かえって注目を浴びることになり、毎日のように面会の予約がやって来る。

「全部断れ、ただし、金儲けに関わる商人と教会の人間は別だ」
 などと、面倒だった貴族を切ったつもりだが、担当者はそこに王まで含めた。

 そう王などより、ヨシュートの言葉が優先。

「なに? 面会を断るだと? 来いというのではない、この玉体を運ぶというのにか?」
「それが、貴族どもが噂を聞いて殺到をした様で、さらに、権威を見せつけ二足三文で買い取ろうとした者までいるとか、それにより先方が怒った次第ですね」
「そこに、わしまで含めるのか? 貴族のリストを作れ」
 結構いい王のようで、怒りの矛先が馬鹿なことをした貴族に向いたようだ。

 宰相に伝えたすぐその後、使用人の豹人族がすっと近寄りメモを宰相に渡す。
「これは? どこからこれを?」
 宰相は、ぱっと見て、騒動の中で聞き覚えのある家を見つける。

「必要になるかと思い、当家のものが調べた様でございます」
 彼女は確か、伯爵家の娘だったな。

「うむ、使わせて頂く」
 宰相と王は、彼女の実家、カンダター伯爵家を目にかけることになった。

 そして、極めつけ。
「ヨシュート様に、拝謁頂けるように…… 御面会をお願いいたしましょうか?」
 一瞬言った拝謁が気になるが、言い間違いだろうと、とりあえず無視をしたようだ。
「「なにー」」
「出来るのか?」
「ハイ可能でございます」
 そう言って、彼女はにっこり。
 
 カンダター家は、昔盗賊だった。
 だが、戦乱の世で王国が起こり、国が造られたときに働きがあり、貴族となった。
 歴史の流れに埋もれていたが、今奇蹟のような復活を遂げる。
 ただ、王家のためにではなく、ヨシュート様のために……

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