不運だけど、快楽と無双を武器に、異世界を生きていく。

久遠 れんり

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第5章 獣人国平定

第77話 格の違い

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「それで本日は、どのようなご用件でしょうか?」
 王トルクメニはあっさりと面会が出来た。
 王は虎族であるが、横には白虎族である王妃アムールが付いてきていた。

「このお庭、ステキですわね」
「ああ、王城にも欲しいな」
 虎族には、そういう趣味はなかったのだが、見ると良いものだと思えるようだ。

 そう会話をしながら、ロビーに入る。

 そこには、床がブルーに光り、窓からはステンドグラスを通して何色もの光が降っていた。それはまるで雲間から降り注ぐ光、薄明光線のようであった。

 どう言い換えても、荘厳といえる。

 床や壁に、金色の装飾が使われており、調度品すべてに高級感が漂う。

 カウンターの上には、金の招き猫が両手を挙げている。
 その横にはだるま。これまた金である。


「ベンガルーラ宰相ウスリーだ。王と王妃様が玉体を運んできた。ヨシュートとやらに面会を頼む」
 ヨシュートと呼び捨てにした瞬間に、一瞬だけ殺気が漏れる。

「おつなぎいたします、そちらのソファーでお待ちください」
 そう言うと、担当者は何やら奇妙な魔導具を耳に当てる。

 何かを、誰も居ないところに向かい、喋っているようだ。

 程なくして、奥の扉から一人の男がやって来る。
「お待たせいたしました、副官であるロニー=ウィルと申します。こちらへどうぞ」
 白い詰め襟の制服、それに光が示されているため両肩から縦に二センチほどの金糸の刺繍が煌めく。

 そして背中には、金色のフェンリルが異彩を放つ。

 王は付いていきながら、それを見てぎょっとする。
 崇拝するは白虎だが、フェンリルもその対象ではある。
 妻であるアムールは、白虎族であり、白虎の眷属、その末裔だと伝えられている。

 初めて見るエレベーター。
 促されて入ってみると、小さな小部屋。
 だが何か操作をすると、体に力が掛かる。
 横に付いている近衛が、剣の柄に手を掛ける。

「おや、エレベーターは初めてですか? 上階へ移動をしているだけでございます。そんなに警戒をしなくとも大丈夫でございます」

 やがて、軽快なベルの音と共に、停止をしてドアが開く。
「どうぞ」
 真っ先に、近衛が飛び出て警戒。
 安全を確認後、王に異動を促す。

 そのフロア、廊下にも高級そうな絨毯が敷き詰められている。
 そして、廊下の所々に、白磁の壺が置かれて、綺麗な花が生けられている。
 光は、天井全体が淡く光り、落ち着いた雰囲気を醸し出す。

 完全な防音のためか、耳に違和感がある。
 三十メートルほども歩けば、これまた立派な両開きの扉。
 前に立っていた者達が、ドアを開ける。

 中に入ると、これまた赤い絨毯が敷かれ、その先には段があり、高くなった先には立派な玉座。
 そう玉座がドンとすえられ、男が一人どっかりと座っている。
 足を組み、右の肘を肘掛けについて頬杖。
 けだるそうにこちらを見ている。
 その脇には、独特の雰囲気を持った美しい女。

 ヨシュートの態度は、当然ロニーの指導による。
「舐められてはいきません、威厳を見せ格の違いを示せばこれからのことがやりやすくなります」
 そういって興奮状態だった。

 まあこいつは、従わねば殺すタイプだからいちいちが過激なんだよなぁ。

 そして、この部屋には他に、教会の司祭達までが呼ばれていた。
 無論段の下である。

「どうした。私がヨシュートだ。許す、もう少し中へ入るが良い」

 当然王は唖然とする。
 この国では、一番偉い存在……
 だと本人は思っている。

 この男の不遜な態度はなんだ。
「わしに向かって、王よりも高いところから見下ろすとは何者のつもりじゃぁ」
 叫び、怒りのためか、ぷるぷるである。

「控えよ、天よりの使徒であり、神の御前である。無礼である」
 凜とした声が場内に響く。

 声の主は、ユキ。
 これも、ロニーの演出。
 小国の王に、格の違いを分からせましょう作戦の一つである。

「ユキ様の仰ることは、本当でございます」
 教会の司祭、白狼族の者達がそう言いながら頭を下げる。

 そして押し寄せる光。
 その光は、金色を纏い心を満たしていく。

 先に気がついたのは、アムール。
 白虎族の血のせいなのか、敏感に反応をする。

 いきなり、膝をつき頭を下げる。
 胸の前で指を組み、祈りのポーズ。
「どうした、アムール」
 その行動に、王は驚く。
 だがそれに対する答えは……

「無礼者、控えなさい」
 とまあ、ものすごい剣幕。

「このお方を、どなたと心得る、我らを治める者の一柱、フェンリル様なるぞ。ひかえ、ひかえおろうぉ」
 とまあ、言葉は違うがこんなニュアンスで、祈りのポーズは崩さずに王を叱る。

「えっ? ああ……」
 一応従うが、まだ分かっていない様子。

 そしてだ……
 また忘れた頃に、ヨシュートの能力が発動。
 そう、真田 悠人が使っていた、統べる力。
 当然ヨシュートも使える。

 突然押し寄せる多幸感。
 私、この方がいないと、生きていけないわ……
 王は何かに覚醒をする。

「ヨシュート様ぁ」

 その後、身分を明かし、他言無用で便宜を図るように促す。
 そうこの手のことは、明言をしてはいけない。
 教唆になるからね。
 上の者は、囁くだけ……

「ロニー…… おぬしも悪よのう」
「ヨシュート様もお人が悪い……」
 などという会話があったとか?
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