新しい年、新しい自分、変わる切っ掛けは…… 一つの出逢い

久遠 れんり

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第15話 おかしな出来事

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「えっこれは?」
「持っていけ。気にするな」
 そう…… 話を聞いてみると困っているんだろと言う、なんと言うか善意。

 だが、普通は怖くて受け取れない……

 本人にしてみれば、勝手にできた金。
 これから先を考えれば全然足りないが、彼は疎い……
 一〇年何も考えずに暮らして、そこに親の死があって本当に降って湧いたもの。

 彼は生来いい人なのだ、目の前に金に困っている人がいる。
 自分は持っている。
 だから渡す。
 ただやるとか、返してもらうのか、まだそこまでも考えていない。

「ですが……」
「困っているんだろ」
 そういう彼の目は、妙に迫力があり怖い。

 でも…… 
 昨夜一晩肌を重ね、彼は優しくて暖かかった。
 強引でも独りよがりでもなく、逆に幾度も喜ばされて、希実はぐちゃぐちゃになって達しまくった。

 そう、初めての深い快楽を得た。
 新道は、奈木と柚葉、二人との関わりを経て、パワーアップしていた。
 奈木からテクニックと、攻めるポイント。
 柚葉から観察をして相手を見ること、そして弱点を見つけて攻める。
 そして優しさの重要性。

 そして、彼女にそれをつぎ込んだ。
 彼女は、それを受けて考える。
 誰かに聞いた話し、筋の人はエッチで骨抜きにして、今度は骨の髄までしゃぶられるわよ。
 今なら理解出来る。
 この人のことが…… 好き。
 ずっと一緒に居たい。

 でも…… 今は優しくても、落ちていくのはこわい。

 彼女は、一応借用書を書いて、その金を受け取った。
 そう、自分の名前や住所を彼に晒した。
「おら来いや」
 そう言って彼が迎えに来れば、彼女は付いてくるだろう。
 そこまで好きになっていた。
 女たらしが、いま静に爆誕していた。


 そして時は少し戻る。
 柚葉を峠に置き去りにして家に帰った西園寺 蓮さいおんじ れんは、次の偽名を、有栖川 優翔ありすがわ ゆうしょうに決めて二十五歳設定。
 複数の会社経営というストーリーを決めた。

 そうして、いくつかの出会い系に登録をする。
 探せば、本人確認が甘い所は幾つもある。
 偽造の身分証明は、幾つもなぜか持っている。

 正面写真そして厚みを撮影して、パソコンで画像を加工、写真のみ差し替える。
 その画像をスマホで撮影する。

 そうして彼は、狩り場へと出向き、七樂 光ならく ひかりに目を付けた。
 会場で慣れてない様子と、おどおどした態度。
 友人と来ている様子もない。

「あれは、男自体になれてねえな」
 美人系では無く、かわいい系。
 だけど、職業柄かパーソナルスペースが妙に狭い。
 そのちぐはぐ感。

 阿久井 霧掛は、少し悩む。
 美容師とか水商売系ならもっと男の扱いも慣れているだろう、何だろうな。
 まるで、旦那の浮気にむかついて、意気込んできた主婦のような?
 今絶賛、後悔中みたいな……

「まあいい、プロフィールとかは見られるから行くか」
 そうして彼女は、コロッと騙された。
 無知であったために。
 ただ妙に身持ちが堅いために、さっさと金を毟られることになり切り捨てられた。

 絶望の中で、情報不足から迷走していくことになる。
 
 彼女が、病院で退職について話しをしているとき、病棟の一室では、一組の家族が喜んでいた。
 未承認の治療だったが、効果が出て状態が改善に向かっていった。
「原発不明ですが、免疫治療の新薬が効いたようですね」
「ありがとうございます」

 父親が医師と話している横で、希実は彼に会いたいのを我慢していた。
 きっと、そうすれば良い夫婦になって幸せに暮らし、光と新道は新年の廃墟で出会うことはなかった。
 今がその分岐点だった。

 だけど、彼女は二の足を踏んでしまう。
 彼に会いたい、でも、溺れてしまい、またあの倶楽部のような所に沈むのはいや。
 ―― まだ誤解中だった。

 こうして彼は、わずかな間に三人を惚れさせたのに別れるという、奇妙な運命に翻弄される。
 だが関わった三人は何かが変わり、将来的には前を向いて歩き始めることになる。

 人の縁とは不思議な物……


 そして、それは続く。

「ちょっと、恋人の振りでもして」
 気の強そうな女が一人、いきなり、腕を組んできた。
 一応驚いたが、合わせる新道。

「何だ一体?」
 見ると、自分と同じ様な黒縁サングラスだが、一廻り大きな物をかけて、ライトベージュのキャップを目深にかぶっている。

「あの二人を追いかけているの、暇でしょ手伝って」
 確かに暇だが平日の昼間、普通なら仕事をしている時間。
 新道の格好は、グレー系のスラックスにカットソー素材のブラウンジャケット。
 少しおっさん臭い格好。
 だが、人を暇だと断言するのはどうだ?

 松島 涼子まつしま りょうこは三十二歳、結婚三年、子どもはおらず……  と言うか、結婚をしてからすぐにレスとなった。
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 彼女は理解をしていないが、まともな男とのつい合いもなく、興味も無かった。
 適当に紹介された男と結婚したのが今。
 子作りが目的セックスで、夫婦においてのスキンシップなど、その行為には一切ない。

 当然、彼女とのそんな行為に、旦那は嫌気を覚える。
 彼女が疑ったとおり、彼は浮気をしている。
 営業の若い部下。
 仕事を教える中で、仕事以外も教える良くあるパターン。
 
 経費をケチり、追いかけていた。
 なんとなくおもしろそうだから、付いていく。
 そうして、営業の傍ら、ファッションホテルへと入る二人の写真を撮る。
「行くわよ」
 彼女は点滅しながら移動をする、エレベーターのパネルを眺める。
「三階ね」
 三階の隣、おそらくだが…… 部屋を選び追いかける。
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