新しい年、新しい自分、変わる切っ掛けは…… 一つの出逢い

久遠 れんり

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第24話 出逢い

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 そして、光はやっとたどり着き、あの画面でみた光景を期待する。

 だが、実際は、憧れを持った景色はどうやって撮ったのか?
 違いに少し愕然とする。
 紅葉の終わりはもちろん、廃墟にはゴミが投げ込まれ、物が壊されて散乱し、落書きだらけ。

「こんな所で死にたくないし、人気ひとけもなさ過ぎ……」
 そう人気が無いと、発見が遅れて腐る。
 すると、法医学の先生が泣くことになる。
 冬だから多少はましだが、夏場の水死体は結構くるものがあった。

 医学部と看護学科が同じキャンパスで、夏になるとたまに変な匂いがした。
「この匂い、なんだろうね?」
「ああ、警察のバスが来ていたから、ご遺体じゃないの?」
 あっさりとその子は教えてくれた。

 こいつは要領が良く、医学部の彼氏を作りやがった。

 法医学と言って、警察から依頼があると鑑定書を作成する講座。
 二階の解剖実習室の下に実は法医解剖室があったようで、いつも通っていた。
 だから、その時期とかになると、教室の窓の横には大量のご遺体が並び、一階は一階で、結構な頻度で解剖中の方がおられた様だ。

 それが夏場はキツく、それが何かを知った後、その渡り廊下を使うことは無くなった。

「なんか思い出した、見ちゃったんだよね」
 丁度、警察の方が飛び出してきて、二重扉が向こうまで見通せた。

 叫ぶ訳にもいかず、友人と足早に通り過ぎる。
 ただその日、食堂まで行ったのに何も食べられなかった。
 と言うか、数週間肉が食べられなかったわ。

 今では、まあ平気かな。

「どうしよう?」
 本当なら、下見をして、明日……
 そう思っていたのに。


 新道は雪のせいで疲れて、到着が一時間以上遅れた。
 なんとなく昔友達と遊びに行った、床がつるつるのカートを思い出した。
 

 くねくねの山道。
 途中までは綺麗だったが、途中から道は旧道へと案内される。
 そこは川を谷底に見ながら走る道。
 山の形に添って、ひたすらくねくねと道は続く。
 此処で、さっきのように雪があると、死ねる自信がある。
 中央車線はなく、対向は何とかできる広さ。
 警笛区間など初めて見た。

 そして、自分の車、クラクションの音を初めて聞いた。
 軽自動車らしい、プーとペーが混ざったような感じの音。

 そうして、フロントのタイヤカバーが、ブレーキの熱にやられて、飛んでいってから数キロ。そうカバーはプラスチックだから、ブレーキを使いまくると熱で変形をする。無論探してきたよ。

 やっと、建物が見えてきた。
 山の谷部分を埋め立てて、作ったような土地、川に向けて山稜が挟み込んでいる。
 そのおかげで、午後三時頃なのに、もう日は当たっていない。
 そして、妙にそこだけ木の種類が違い、こんもりとした森という感じ。

 多分、元は植木だった物が野生化したのだろう。
 周囲の山は針葉樹ばかり。
 なのに、ここは、広葉樹ぽい。

 針葉樹は紅葉しないからなぁ。
 さすがに、もう紅葉のピークは過ぎて、淋しい景色となっていた。
 やはり時期を逃したらしい。

 だけど思い立って、免許を取って、車を買っていたら、今の時期にまでなってしまったのだしかたがない。

 人がいるから聞いてみる。
「すみません」
 その女の子は、淋しそうな泣きそうな顔を上げた。
 キャップを目深にかぶり、サングラスをかけていたが、なんとなく判った。

 元々此処の関係者だろうか?
 正月で帰ってきて、荒れた光景で落ち込んでいるとか?

 光は光で、こんな所に車。
 でも軽だし、違うか。

 そう金融屋さんが、追いかけてきたのかと思った。
「ここって入って良いんでしょうか?」
 そんな事を聞かれた。

「すみません、地元の人間じゃないので判らないんですが、此処に管理地の看板が立っていて、ロープの残骸があるので、きっと入るとまずいと思います」
 素直にそう言ってから、思いつく。

 起死回生の一手、この人若そうだし、誘って襲ってくれれば、一回我慢をしてするだけでお金が、大金がもらえる?

 状態によるが、強姦の場合、示談金は二百万円から五百万円くらいだそうだ。

 彼女の必要な額には足りない。
 だがそんな事を思うくらいには追い詰められていた。

 そう高校のときに、同じ様な狂言を行った、深海と同じくらいには。
 だが、新道はあっさりと助言を聞いてしまった。
「あーそうかもね。入るとまずそうだし、それじゃあありがとう」
「いいえ」
 そう言って見送ろうとした。
 だがナンバーが多分地元と違う。
 もう歩くのはいや。

「ちょっと待ってください、もしかして温泉行きます?」
「行くけど、何、一緒に入りたいの?」
 そう言ってなんとなく、サングラスをずらして彼女を確認をする。
 まだ明るいけれど、日陰だと結構暗いんだよ。

 だけど、新道の顔はちょっと怖い。
 サングラスを押し下げ、その上から睨む目は彼女を少し怖がらせる。

「一緒に入るまでは結構です。温泉地へ行くなら乗せて行ってもらえませんか? 地味に遠くて」
「あーまあ、良いよ。子宝の湯温泉郷だろ」

「そうそう、そうです」
 そう言って彼女は、ためらいもせずに乗り込んできた。
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