僕は仲間とともに、覇王の道を進む。

久遠 れんり

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第二章 王国兵士時代

第23話 模擬戦と兵団への加入

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「では始め」
 練兵場に声が響く。

 主催は騎士団だが、関係者が見守る。

「なんだかなあ」
 ぼやくのは、ダレル。

「敵は小隊。五〇人。囲まれれば終わりだが。君達の力は道中拝見した。レオン君達なら勝てるだろ」
 力は認めたようで、ミヒャルが気楽に言う。
 ミヒャル本人は、盾も何も持たず無手だ。

「僕は、軍略は得意だが、剣技は不得意なんだ。君達に任せる。サンタラ君守ってくれよ」
「なっ。いい加減こっちが少ないんだ。ふざけたことを言うな」
 当然サンタラは焦って文句を言う。

 だが、レオンが笑いながら言う。
「ミヒャルがそう言うんだ。騎士達はいないし、四人で勝てると踏んでいるんだろ」
 レオンがそう言うと、当然のように言う。

「勝てるだろう。それに勝たないと、伯爵様の顔を潰すことになる。そうなると、お嬢。クリス、様の立場も悪くなる。それだけは阻止しなければいけない」
 珍しく、ミヒャルが感情をあらわにする。
 
 彼にとって、クリスは幼馴染み。
 そして、年の近い異性。
 自覚は薄いが、恋心を抱いていた。

 父親が亡命し、人との関わりをなるべく絶って隠遁生活。そのため知り合いは少ない。
 辺境伯との繋がりの中で、父の得意な戦術などを習得するのに、クリスへの思いはかなり大きく影響をした。
 肉体的な不足は、知識で補い辺境伯を支える。
 それは、クリスのため。

 紹介され、王都へ来る道中。
 程度の差はあるが、シグナの集いは、全員魔法を使い少し非常識な体力を持っている。
 それは、道中で野盗や盗賊と戦うときに、他の兵と見比べたときに差となって目に見えた。
 それは、ミヒャルを驚かせ、少し嫉妬を覚えた。
 こいつら強い。
 さらに、レオンは、器用に何でもこなす。

 戦闘で壊れた武具を直し、刃物のメンテナンスまでこなす。
 同じ歳に近く、それは驚くのに値する。
 本人は、自分の価値を理解していない。何も考えていないバカだが。

 見たところ、盾とやり。盾と剣。
 敵の装備はそれだけ。
 王都内で警備するにはそれが主で、弓兵などは今回混ざっていない。
 ならば、化け物じみた体力を持った、レオン達の勝ちだろう。

 数刻の時間の中でその判断をして、ミヒャルは安心をした。
「最初に、正面から魔法を打ち放し、切り込めばあなた方は化け物だから勝てます。向こうは、のようですから。油断さえしなければ」
 そんな、ふわっとしたアドバイスを残し、サンタラの後ろに隠れる。

 そしてはじめの号令が掛かり、レオン達は言われたとおり、火焔魔法を相手に撃ち込む。
 剣使いと思っていたが、いきなり魔法が来て驚く。
 王都でも、得意なモノを鍛えて任官をする。むろん学校も別。
 役割は分担され、両者は仲が悪い。

 その初手で、小隊の連中は動揺する。
 そうなれば、レオン達の相手になどならない。

 たかだか四人で、五〇人を打ち倒す。

「なっ卑怯な」
 騎士団長フセーヴォロト=ヴァーシェンは思わず声に出す。

 だが、兵団長ダヴィト=プリーヴァは、笑みを浮かべる。

「ほう。卿の言った通り強いねぇ。実質四人で五〇人を倒してしまった。それも、あっという間に」
 王と辺境伯も当然ながら見ていた。

「重要なのは人材です」
 辺境伯は、思惑通り、事成し胸をなで下ろす。
「その様だね。我が兵団思ったよりも弱いようだ。考えよう」
 王の横で宰相アルテュール=ファンヴェイクも頷く。

 気が付けば、レオン達は少尉待遇で任官。
 ミヒャルは希望により准尉として、任官しレオンの補佐に就くことを希望する。
 そして、シグナの集いは意図的にバラされ配属される。

 王国兵団は、その時から生まれ変わる。
 混ざり込んだ異分子達。その者達は普通ではなかった。

 狂った二人の教師。
 その教えを守り、実行した。

 
 そして、一部貴族に疎まれているが為に、過酷な任務に就かされ、トントン拍子に手柄を立てる事になる。

「うらあ寝るな。走れ」
 王国の外。平原に今日も声が響く。

 農村部の外苑。
 モンスター退治と農地拡大。
 兵団や、ましてや騎士団では受けない仕事。
 むろん王国としては、極めて重要ではある。

 そんな塩付け案件が命令される。
 喜んだのは、レオン達。
 受ける部隊など、シグナの集い以外にはいない。
 必然として、彼らは集う。

「部下の訓練になる」
 普通なら、簡易な宿営所を作る距離。
 彼らは部下を、日参させた。

 王都から、走り。
 現地で労働とモンスター狩り。
 そして帰ってくる。当然走って。

 それは上に報告されると、「なんと非効率な。現地で宿営すれば良いものを」そんな言葉が出る。嘲笑と共に。
 日々訓練は、決められたところで、決められた時間などと言う、常識を信じる者達には奇異な行動としか思えない。

 だが、兵達は自分の体が変わったことに気が付く。
 そして、クワも力を入れず、重さで振れば良いことに気が付く。

 彼らは、農民出身ではなく、多くは貴族の三男坊以下。
 クワなど振ったことがなかったが、剣技との共通点に気が付く。持ち手は右利きだと左手が重要。剣と同じ。
 細かな修正を右手が行い、当てたときに固める。
 それだけで、重さに振り回されていた剣がピタリと止まる。

「これは…… 隊長の言っていた意味がわかった」
 この気づきは兵の間で広がり、この開墾に意味があることだと理解する。

 そして、脳筋部隊が誕生していく。
 隊長達シグナの集いに心酔する兵達。
 そこから、伝説の第一歩が始まった。
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