僕は仲間とともに、覇王の道を進む。

久遠 れんり

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第三章 王国貴族時代

第39話 帝国の影

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「でもまあ、今後を考えれば、落とし穴はいるだろう」
「それよりも、後背を突くためのトンネルはどうだ?」
「それは手が掛かるし、モンスターの巣になるとこまる」
 あーでもない。こーでもないと議論が始まる。

「まあ街道に沿って、上段に道を造ろう。投石や矢を射かけるのに便利だからな」
「その辺りが無難だな。それと対岸にこちらから見えないように道を造っていこう。兵が移動をするのに、結構厳しかったらしいからな」
 結局造られた上段の道には、投石用の集積場所や、野営用の広場が造られる。

 下からは兵の移動が見えないように、道が掘り込まれ塹壕となっている。
 山側の法面には、土魔法により穴が開けられ、水場を確保してある。

「下の道にも、数カ所水場を作っておこう。商人達が喜ぶだろう」
 気が付けば、死角がない方が良いと、削れる支尾根部分を削り込み。曲がりくねっていた道が随分真っ直ぐなところが出来た。

 気が付けば、一年も遊んでいたが、その年帝国は来なかった。

 いや実はレオン達が直した街道を通り、商人に扮した者達が入り込みすでに暗躍を始めていた。
 武ではなく知略による攻撃。

 自国の兵を失わず、種さえまけば勝手に潰れていく。
 帝国の皇帝は、新型武器についての情報収集と、王国内部の切り崩しと弱体化を一気にはかりごととして実行をした。

 王国貴族達は、思った以上に統制が取れておらず簡単に踊る。
 開国時の理念は薄れて、我が利益さえ確保できれば良いという者達が、この頃は多くいた。

 それは領同士の争いを経て、王の下へとその矛先が向くようになる。

 一年レオン達が遊んでいる間に、トゥーン領とマースカント領で起こったいざこざ。鉱山を巡り勃発。

 スピナ山脈から少し離れた山塊。
 そこが、両領の境となっていたが、金が発見されていた。
 長年掘り進んだために、坑道の一つが繋がってしまう。
 当然そこが、どちらの領に含まれる場所かは不明。
 双方共に、領の資源を奪うなと言う話しになった。

 金は、王国としても重要なため。調停として王国から兵が派遣をされるが、三つ巴の争いとなる。

 派遣された軍は最初尉官レベルだったが話が付かず、すぐに将官である、ナルディーノ=モランド大将が派遣される。
 貴族位は侯爵であり、領を納める伯爵達より上位。
 これにより、争いはなぜか激化をする。

 最初は、落ち合ったあたりの距離を測ろうとしたが、鉱脈に沿って適当に掘られた坑道。真っ直ぐな距離など測ることが出来ない。

 当然折り合いは付かず、ナルディーノ=モランド大将が言い始める。
「折り合いが付かぬようなら、わしが貰ってやる。双方引け」
 とまあ、権力をかさに言いたい放題。

「侯爵様といえどそれはご無体な。ここは王より認められた鉱山。よこせというのはあまりにもあまり」
 こう言ったのは、痩せ型で見たとおり覇気のないアントンニ=トゥーン。
 親からの相続で領主となり、安穏と暮らしてきた。
 もめ事など望まない性格。

 対して。
「そうですな。毎年税として、五割を献上してその権利を頂いております。それを一方的に反故にするのであれば、少し考えを改めないといけなくなりますが」
 こちらも同じく相続をしたが、長男を謀殺ぼうさつして、領主に収まったクラーコラ=マースカント。
 一筋縄ではいかない狸。

 そもそも、マースカントが鉱脈を無視して掘り抜き、今回の火種を作った。
 彼としては、王国が出張ってくるのは予定外であった。
 そこに考えが及ばないのは、推して知るところ。

 帝国の商人から、販売量の増量をせがまれた。
「何を仰います。どのくらい出たかなど、言わなければ分かりません。鉱石など見た目は単なる石。ボロなのか鉱石なのか国のぼんくら役人に判断は付きますまい。わたくしの所へ卸していただければ、このくらいは上乗せいたしますが、如何でしょうか?」
「むっ。それはそうだが、バレれば首が飛ぶ」
「では少し増量をすればよい話し。坑道内から出さなければ、問題が無いでしょう。奴隷も融通いたします」
 そう言われて、少し考え始めるが、何かを思いついたのだろう。
 体の一部が反応し始める。

「若い。そのなんだ。女の奴隷はいないのか」
「ございますよ。ええ。たとえ在庫がなくとも、融通いたしますとも」
 商人はにっこりと笑い揉み手をする。御しやすい。
 奴隷と言っても、帝国から連れてこなくとも、他領で村から攫ってくれば良い。
 基本王国では奴隷は禁止。それを望むならこいつは隠すだろう。
 保険ですね。何かあれば、奴隷売買を囁けば良い。
 まあそんな話があり、調子に乗った伯爵は、毒まんじゅうに手を出してしまった。

 内乱への布石。
 その一つへ。

 産出量の誤魔化しは、ある程度で王国へ渡ることになっていた。
 だがその前に、変なことを伯爵がしたために、騒ぎが帝国の計画外で大きくなった。

「少し予想外ですが、次は…… ナウマン子爵ですかね。忌まわしき戦争で親と長男が死んで、ぼんくら。スタニスラ? とかいう息子が跡を継ぎ、継いだ瞬間から傀儡ですか。主家はリザンドロ伯爵。ここも同じく次男が継いでレジナルドとか言うぼんくら。踊っていただきましょうかね」

 そう両家とも、父親と長男が死に、中央との繋がりが薄くなって困っていた。
 レオン達への嫌がらせは、実は今風前の灯火ふうぜんのともしび状態だった。
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