僕は仲間とともに、覇王の道を進む。

久遠 れんり

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第三章 王国貴族時代

第40話 両家の思惑と帝国の思惑

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「うーん。要するに辺境伯の所から上がる税収。これを目当てに父上達は画策をしていたのか?」
「そうでございます。土地は広く人手もある。穀物類はその分多く採れます。そして帝国からの輸入物。入領に税を取り辺境伯領が独占をしております」

 実際は、アンセルモ=リザンドロ伯爵とペートルス=ナウマン子爵は、入領時に高い税を取るため。商人たちが嫌い、迂回を始めただけ。
 さらに農地も、金を出さず人も出さず、計画をしてもモンスターに攻撃をされ頓挫をする。
 家宰は、新たなる領主レジナルド=リザンドロ伯爵に偏った教育を施す。

 それは同じく、スタニスラ=ナウマン子爵家でも同様に行われた。

 そして戦争により、利益を得ようとしたが、新武器は徹底的に秘匿されてつかめず。
 武勲においても失敗続き。
 その矛先は、ハンター達へと向き、レオン達がその怒りをかぶっていた。

 だが、先代からの繋がりは、ぷつりと切れ。中央側と距離が遠くなる。
 繋がりは、血縁だけではなく、弱みを握り傀儡としていたものが大きい。
 本人達が死に、情報が引き継がれていないのならば、従う必要は無い。
 多くの者達はそう考えた。

 実際、新領主就任の挨拶状を送ったが、上から目線の内容も相まって反応は芳しくなく、祝いの品はごく少数であった。

「ええい。どいつもこいつも」
 家督を相続をしてから、上手く行かない状態に憤慨をするレジナルド。

「旦那様、お客様です」
 案内されてきたのは、羽振りの良さそうな商人。

「何の用だ?」

 その言いぶりに、少し驚いた商人だが、話を始める。
「用向きは、伯爵様の領主就任へのご挨拶と、お祝いの品を幾ばくか持参しております。ただし、入領時に税としてかなり目減りをしてしまい。申し訳ありませんでした」

 少し危険だが、少しの嫌みと、自分に対する配慮を匂わせるが、当然気が付かない。
 この会話だけで、相手の格を商人は理解をする。

 さあてと、御しやすそうだが、どう持っていくかだな。
 悪徳商人こと、ギュンター=フランツェン。
 彼は新設された帝国戦略特務課の特務中尉。
 潜入戦略が主な任務。

 今回の命令は、王国貴族による内紛の幇助ほうじょ
 『弱体化をさせよ』
 女帝テレーズバイル様より、直接の訓令を頂いた。

 トゥーン領とマースカント領は、このリザンドロ伯爵領とナウマン子爵領と南北の位置。

 つまりこの四領で内戦でも起きれば、王都側と、辺境伯側は分断される。
 その間に、王都側でも騒動を起こせば、一番の問題とされている辺境伯が介入が出来ない。

 話を聞けば、帝国において戦争の天才として名を馳せていた、ジャンマルコ=ヤクウィン伯爵を討ち下している。
 彼を介入させないことが、今回の作戦において肝となる。

 ギュンターはそう考えていた。

 少しだけ間違った情報。
 それにより、彼の意識はゼウスト=ヴェネジクト辺境伯へと向いてしまった。

 まさか最大の壁が、自身が通ってきた山道で、道行くものに気さくに声をかけ。
「商人さん。此処に水場や休憩所があったら嬉しいかい?」
 そんな事を聞いてきた、若い兵隊。

 彼たちが、最大の厄災だとは、思ってもいなかった。

 だが計画は、進み始める。


「でしたら、近場の領が持っている土地を、頂けばよい話し。話によるとトゥーン領とマースカント領はもめ事が起こっているようですし、あちらこちらに手を掛ける力は無いでしょう」
「うーむ。そうか。だが、なにも無しで私兵を率いて侵略をすれば、王が黙ってはおらんぞ」
「それはそれ。自領から民を拐かし、奴隷として鉱山で働かせているとなれば、王様も文句を言わないでしょう。それどころか、援軍をくれるかも知れませんよ」
「なに。そうか。では調べさせてみよう」
 嬉しそうに、そんなことを言い出す。

 つい、ギュンターは、ため息を付いてしまう。
 あわてて、隠したために、リザンドロ伯爵は気が付かなかったようだが。

「良いでしょうか。伯爵様。事実はどうでも良いのです。それを大義と掲げ進軍すればいい。それがなかったことは、必要なら相手側が証明すれば良いのです。自身の身の潔白を晴らすために」
 むろん、すでに事実は作られている。マースカント伯爵の望みのままに。

 こうして、王国の四領とナルディーノ=モランド大将が絡み、内戦状態へと突入をする。

 ここまでは、あっという間の出来事だった。
 意表を突かれた、マースカント伯爵だったが、たまたま派遣されてきていた、モランド大将を巻き込む。

 王国軍の野営地へ、リザンドロ伯爵の私兵を引き込むことに成功。
 両軍は戦闘となる。

 リザンドロ伯爵が放った斥候。その目の前を、わざとらしく兵糧を運ぶ兵達が走って行ったのである。

「およそ一千の兵が、進軍の準備を行っているようであります」
「なんだと、先に潰してしまえ」
 領軍など、集めても数千しかいない。
 その状態での千人は大きい。

 リザンドロ伯爵は確かめもせず、攻撃命令をする。
 部下達はすぐに、装備が違うことに気が付いたようだが、『攻撃せよ』そんな命令が降ってきた。
 ならば戦うしかない。

 こうして、王国を地理的に分断する内戦が勃発をした。
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