スローライフとは何なのか? のんびり建国記

久遠 れんり

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第七章 望のスローライフ

第112話 統合、そして

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 場を見回す。

「そちらからの、随分自分勝手な言い分だが、すでに関わりはあるし、独断で潰した国もある。自治権。まあ、良いだろう」
 そこで言葉を句切る。

 みんなの顔は緊張して、とてもじゃないが一国の王だとは思えない。

「暴露をすると、私は、メリディアム国によって魔王を退治する目的で、別の世界から強制的に召喚され。ここへとやって来た。そして、そこに居る好実と共に、勇者のおまけとされた。つまり不要な人間だな」
 そう言うと、全員がメリディアム国の新王である、マリチオニス=ランヴァルド元辺境伯を睨む。とばっちりだが、仕方が無い。

「そして、教会で祈り、リギュウムディへと導かれた。そこからは、滅んでいた王都を復活させ、ウーベル=ナーレと関わることとなる。後は知っての通り。今回魔王となった。――まあいい。望むなら世界をしよう。ただし、つまらないことをするなら、許さない、それだけは理解しておいて貰おう」

「「「おおう」」」

 こうして、あっさりと話は決まった。

 今なら、意識すれば大陸全体を感じられる。
 問題は無い。

 この後、魔力通信、いわゆる念話を利用して、王達は使い倒されることになる。

 どこどこに盗賊がいる。
 アジトが、あそこにできている。
 そんな情報が、天声のように降ってくる。
 何処で何をしていてもお構いなしに。


 そして本人は、衆人にじっとりと見られながら、獣人国に居た。

「雑ね」
「それになんだか臭い」
 文句を言っているのは、危ないからと言っても、「ケモ耳見たい」と言って付いてきた二人。好実と美葉。

 今獣人国の王都に居るが、人など見たことないのだろう。
 見た目、耳があるかないか、それと体毛、しっぽの有無くらいだと思うのだが、妙に目立つ。
 いや、結構違うか。

「おい、おまえらなんだ」
 兵が周りを取り囲む。

「獣人王戦に、友人が出ているので応援だ」
「友人? 誰だ」
「メルーだ」
 そう言った瞬間、腰が引ける。

 うん? 徹底的にやれとは言ったが、妙に恐れられている?

「ヤンカン村の爪弾きつまはじきあいつだ」
「ああ村でいなくなったと思ったら、ふらっと現れ、今回出場をした」
「そうだ。あんな顔をして、悪魔か魔人のように強い」
「血も涙もない、魔王のような奴だ」
 兵達から口々に、説明をいただきました。

 だが、髪の毛くるくるの中に角がクルクルして、結構かわいいんだけどな。
 黒目しかないから、じっと見られるとちょっと怖いけど。

「なんだ? かわいい奴だぞ、賢いし」
「かっ、かわいくなんか無いやい」
 そう言って、走って行ってしまった。

 周りに話を聞くと、あいつらは兵ではなく、冒険者のグループらしく、俺達が珍しくて寄ってきたようだ。
 知り合いが大会に出て、コテンパンに打ち負かされたようだ。
 しかも、跳ねっ返り盛りの一五歳程度だという。
 獣人の歳は分からない。

 さて、中央の通りをまっすぐ行くと、左手に大きなスタジアムが見えてきた。
 絶賛試合中らしく、大盛り上がり。

 出店も出ており、串焼きに、鉄板焼きに、シシカバブのような雰囲気だが、何かの丸焼きを量り売り。
 肉肉肉、のオンパレード。

 片側には、野菜の量り売り? こっちは野菜ばかり。

 民族性というか、実に面白い。

 中には、虫。それも芋虫の量り売りまであった。

「肉と野菜、別々なのは良いけれど、野菜は映画館のポップコーンくらいの容器よ」
 好実はそう言っておいて、映画館を思いだしたのだろう。
 表情が暗くなる。
 こっちの世界に、すっかりなれてはきているが、ふと向こうを思いだし、落ち込んでいるのを見かける。

 ガシガシと頭をなで、抱き寄せる。

「少し考えてみるか……」
「えっ?」
「何でも無い」

 意識を広げて、メルーを探す。

 控え室だろうか、他の奴らも居る。

 ザルな事に、警備員もいないようだ。

 ドカドカと部屋へ入り込むと、メルーが此方を見つけて、膝をつく。
「ああ、礼は良い」
「はい、申し訳ありません」
「順調か?」
「まだ予選段階ですので、何とも言えないです。本戦にはシード選手もいるようですので」
「分かった。それ以外のとき、十分気を付けろ」
 そう言うと、周りに控えている、魔族五人衆が頭を下げてくる。
 闇討ちとか、十分ありえそうだ。

 そばにくっ付いている魔族五人衆。そうこいつらは、テノフォー系。
 今は獣人に変身している。
 何処にでも入り込めるし、味方になれば重宝をする。諜報だけに。

 さて、話をしていても、背中側から威圧を感じる。

 振り返り、圧を掛けてみる。

 室内の空気が一瞬で変わり、異様な重さと冷たさ。
「ひっ」
 さっき睨んでいた奴らが、目をそらす。

 だが、脚は震え冷や汗を流している。
 部屋のドアがノックされ、呼び出しが来る。
「メルー選手とサミー選手此方へ」

 奇しくも、威圧していた奴は、対戦相手だったようだ。
 試合前から、ふらふらした足取りで、出ていった。

「悪い事をしたかな?」
 メルー達に続き、観客席へ移動した。


「ありゃ? 誰も居ないのか?」
「あーすみません。王達は今獣人国へ行っています。すぐに帰ってくると思いますので、此方でおくつろぎください。御義父様」
 和やかな表情で、エリサベトは一行を迎え入れる。
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