神の都合と俺の都合

久遠 れんり

文字の大きさ
11 / 55
第一章 召喚

第11話 攻撃開始

しおりを挟む
 五〇メートルくらいで、攻撃が始まった。

 矢が放たれ、空を埋め尽くす。
 あれ何本か作らされたが、結構面倒だったのに。
 空を飛んでいき、木の葉でガサガサと失速をして落ちている。

 そう、結構な数が無駄打ち。

 そして、相手からは強力な魔法が花火のように飛んでくる。
 音はない。
 無音だが、ヒューン。パアァンという感じ。

 火球が飛んできて、兵の中で破裂する。
 大きな櫓の間を見事に打ち抜く。
 おかげで、櫓の後ろへみんなが集まっていく。
 そのままじりじりと前へ進む。
 だがその先には、木が茂り、櫓は進めなくなる。


「なんだか、イメージをしていた戦争と違うな」
 そうファランクスを組み、わーという感じで長槍を持っていくかと思ったのだが、最初から銃器の代わりとなる魔法がある所為か、独自の作戦をとっているようだ。


「ええい。誰かなんとかしろ」
 叫ぶ声が聞こえる。
 後ろから……

 いつの間にか、辺境伯達は後ろへと下がったようだ。

 その間に、いやな予感がする。

「八重。逃げるぞ」
「そうね」
 言わなくとも分かっていたようだ。

 前方の森にやばいほど魔力が集まってきている。
 なんで周りの奴らが、あれに気が付いてないのか判らない。

 ジャマな奴らを、手でかき分けて走る。
「きゃあ。霧霞くん。久枝灘さんも、どこへ行くの?」
「前方の森、やばい。絶対でかい魔法が来る」
 言ってしまってから、やばいと思ったが、もう仕方が無い。

 周囲に居た奴で、俺のことを信じた奴らまで逃げ始めた。

「あいつら、逃げるのか? おれらも逃げよう」

 最初に、胸を鎧の上から揉んだのは委員長、稲葉 沙織。
 その後俺達の様子を見て、古川 竜司も気が付き逃げ始める。
 無論目ざとい奴らは、それに続く。

「なんだあいつら、腰抜けめぇ。前が空いた、行くぜ」
 こんな馬鹿もいる。


 そして、人の塊を抜け出して、脇に生えた林の比較的大きな木の陰に身を潜める。
 気が付けば、クラスの連中が結構来てやがった。

 そして、人数が増えたためか、兵が追いかけて来ていて文句を言われる。
「馬鹿者。持ち場に戻れ。敵前逃亡は死罪だ」
 剣を抜いてきやがる。

「馬鹿野郎はお前だ、気が付かないのか? 避難させないと敵からでかいのが来る。全員死ぬぞ」
「何を言う、逃れたいがために、そんな張ったりを」
「バカ。あれを見ろよ」
「ぬわにっっっ」
 何を? とでも言いたかったのだろうが言葉が止まる。
 森から、炎の核が隊の上まで来た後、赤を通り越して、白く輝く火球へと変化をする。

 そして、それは一瞬だった。
 出来上がった火球は、密集をした隊の人達の上にドスンと落ちた。

「まずっ」
 俺と八重が、とっさに張ったシールド。
 その中へ、クラスの連中が断りもなく走り込む。

「バカやろう、自分で張れ」
「霧霞の方が強い」
「霧霞くん。お願い私も入れてぇ」
 畜生、訓練のときの所為か。
 妙な信用を貰ってしまった。

 そして…… 戦場にいた数千人くらいが、一瞬で消えた。

 さっき偉そうに言っていた兵も、ちゃっかりオレの後ろにいた。

「さっきのは…… あれは何だ?」
「だから、向こうの魔法だよ」

 暴風が落ち着いた後。
「いやあぁあ、ドニ-」
 叫びながら、委員長の稲葉 沙織が走っていく。
 それを見て、川瀬 陽子。あのプルルンレベルランク五あの子も走っていく。
 隊長達が居たあたりに向かっているが。

 まだ煙が立ち、地表は赤く燃えている。
 この環境で、まあ普通は生きていられない。


 ―― うちのクラスで無敵の強さを持つ、霧霞君が何かを感じて逃げた。
 私は考える。
 きっと彼は、私には判らない何かを感じたのだと、私は、クラスのみんなに声をかけながら逃げた。
 そして、それは起こった。

 ものすごく大きな炎の球。
 空にいきなりそんなモノができあがり、王国兵の上に落ちた。

 私たちが隠れていた、木など簡単に抜け、折れ、燃えた。
 霧霞君と久枝灘さんが張ったシールド? その後ろへ隠れる。
 一瞬で大きなガラスの壁のようなモノが展開されて、周りに居た人はその後ろへ隠れるのと爆風が来るのは同時だった。

 周囲で、世界が吹き飛ばされていく。
 動画サイトで見た、大きな台風のような光景。
 一瞬で木が抜け、飛んで行き、折れて飛び、耐えたモノは燃え始める。

 それは一瞬だったと思うけれど、すごく長く感じた。
 みんなしゃがんで、耳を塞いでいる。
 急激に変わった、気圧のせいで耳が痛い。
 
 それが終わったとき、思い出す。
 一瞬のことで、自分のことしか考えられなかった。
 そう彼のこと。

 彼は不安でいっぱいだった私を、慰め癒やしてくれた。

 そう、私はクラス委員などしているけれど、稲葉 沙織いなば さおりはみんなが思うほど優秀ではない。
 
 子どもの頃から、要領が悪い子だった。
 お母さんはそれを見て、心配をしたのか、私に家庭教師をつけた。

「良い。これからの時代、女は自立をするのよ。男なんかに依存しないで生きるの」
 そんなことを言い続けられた。

 でもそんな事を言うお母さんは、専業主婦。
 結婚前にちょろっと働いていたけれど。
 その後私たちができて、家にいた。
 子どもの頃にもめていたときは、働きに出るとか出ないとかでもめていた。

 お母さんのランチとかが意外と出費として大きく、家計が大変だったとか?

 その後、家庭教師さんが来て、ついでに弟も勉強を習い、私は、友達と遊ぶこともできず友達は居なくなった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...