神の都合と俺の都合

久遠 れんり

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第二章 異世界暮らし

第21話 鈴木達の憂鬱

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「また人殺し、やっていられるか」

 戦場の報告から、王が君らを頼ることになるだろうと兵が言っていた。
 鈴木、岩崎、太田、松井が顔を突き合わせて相談をする。

「また戦争だ、やってられるか」
「そうだな、もうあの匂い、今でも思い出す」
 そう言いながら、彼らはあの時戦っていない。

 だけど、盗賊や、狩猟。生き物を殺すのは大分慣れてきた。
「どうする?」
「どうするって? 何がだ……」
「もう良いだろう、皆から、特に霧霞から離れようぜ、アイツといるとすぐに人殺しが必要になる」
 鈴木がそう言うと、岩崎がにやつく。

「そうかあ? おまえも言われたんじゃ無いか?」
「何をだ?」
「霧霞様の子種を頂いてはいけませんか? 旦那様とあの方は別格です。ってな」
「おまえも言われたのか?」
「ああ、アイツを見ていたら別格は分かるが、この世界の子、良い種をを求めるのに貪欲すぎ」
「そうだよな」
 落ち込む彼ら。

 松井は、膝の中に抱えていたマルタにそっと聞く。
「お前も、霧霞に抱かれたいのか?」
 うつらうつらしていた、マルタの目がカッと開く。

「よろしいのですか? 行って参ります」
 膝を出て、駆け出そうとする。
 あわてて手を引き、引き留める。

「コラ行くな、分かった出ようぜ。何時俺らの目をぬすんで会いに行くか分からんな。アイツ体からなんか出ているのか?」
 出ていた。

 悠人とのエッチ。
 満足はしているが、ふと見てしまった。
 冒険者のチームが、野営中に、男二人と女一人でやっているところを。
 悠人に男との事を振ってみたが、彼は今一そう。
 だから、女を一人ふやせば、もう少しおもしろいかも……
 などとまあ、彼女の欲望は、少し暴走状態へと進んでいた。

 順当に、エロインとしての才能が今、開花しようとしていた。
 実は、もう一人増えれば、あんな事をしてそんな事をしてと、ずっと思案中。

 彼女は、濡れ濡れのむれむれだった。

 そんなおかげで、鈴木達はあてもなく、町を出て行った。

 だが、すぐに出会う盗賊。
 モンスター。
 彼らも特典のおかげで、負けはしない。

 だが、どんどんと心は消耗をする。

 悠人達が、王都へ向けて出発をした頃。
 彼らはまだ元気だった。

 だが、爵位を貰い、町へ帰り部隊を使い家を造り出した頃。

「おい魚を獲ったぞ」
「サンキュウ。雷はどうやって出すんだ? どうやっても使えん」
「それはな、空気中の水分子を…… あれ? ノヴァー達は?」
「さっき木の実を採りに行ったぞ」
「そうか、でも遅くないか?」
 そう此処は日本じゃない。
 だけどすぐに忘れてしまう。
 そして彼女達は普通の人間だという事も。

 マルタは留守番。

「この植生しょくせいならきっと今の時期、瓜があるはず」
 自分たちの村とは違うが、生えている木などの感じで成る物が想像できる。

 取りやすく、分かりやすい肉や魚だけでは、お通じも悪くなる。
 特に女の子だし、彼女達の主食は、ずっと野菜だった。

 フキとかも集めて、その中に集めたキイチゴやヤマモモをまとめていく。
 結構、いい山らしく木の実などが豊富で喜んでいた。

 だがそれは、採る者達がいないため。
 それに思い至らず、彼らのテリトリーへ踏み込む。

 そう盗賊の集落。
 彼らが、動物を捕り鳥を獲るため、木の実が獲られていなかった。

 彼女らの知らぬ間に、背後へと回り込まれる。

 いきなり突き飛ばされ、四つん這いになる。
「若い女三人だ。おい周り見張れ。どれ」
 体重を掛けて潰され、腹ばい状態の背中にどっかりと腰を下ろすと、そいつは指を濡らし、おもむろに突っ込んで来た。

「おおう。初めてじゃ無さそうだ、楽で良い。初めてだと騒ぐからな」
 そいつが指笛を吹き鳴らせば、足音が集まってくる。

 当然、彼女達は、反抗する気が無くなるほどもてあそばれる。
 そんな頃になって、やっと、太田が彼らと出くわす。
 だが、そこにはドロドロにされたノヴァー。
 怒りにまかせて、彼は突入をする。

 だが、当然見張っていたし、ノヴァーの状態を見て止まった瞬間に、頭を射貫かれた。
「がっ」
 残念ながら悠人とは違い、太田は立ち上げることはなかった……
「んんんっ」
 ノヴァーは、口の中の物をかみ切り、太田に向けて走り出すが、しっかり刺さっているし、腰は捕まえられている。

 盗賊の奴らも、噛まれた仲間が呻くのを笑うだけ。
 ただまあ、ノヴァーは怒りにまかせて蹴りあげられた。

 鈴木と岩崎も、太田を発見。血の跡と、引き摺られた後を見つけて追いかける。

 その頃、松井はマルタを連れて留守番。
 いい加減遅いから、どうしようかと思案中。

 だが、マルタはきっと駄目だろうと考える。
 絶対に日が暮れる前には帰ってくるのが鉄則。
 もう暗くなってきた。
 探しに行った、岩崎達は強くて平気でもミリー達は普通の人間。

「盗賊にでも会ったのかもしれない、それかモンスターか……」
 マルタがぼそっと言う。
 それは自身での答え合わせと、納得をするため。

 村でも良くある。
 人が居なくなる。
 探しても見つからず、夜が明けてから、ボロボロの遺体が見つかるだけ。
 小さくともこの世界を生きて来た。
 岩崎達よりも判断力は正しい。

「そうか? 探しに行った方が良いか?」
 膝の中で首が横に振られる。
「駄目なの。行くなら夜が明けてから」
「そうか、ありがとうな」
 マルタの頭をなでる。

 警戒をしながら、夜明けを待つが誰も帰ってこなかった。
 明るくなり、注意をしながら、松井は山へ入ったが、昨日のことで警戒範囲を拡げていた盗賊の矢が頭を貫く。
「がっ…… マルタ…… 逃げろっ……」
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