神の都合と俺の都合

久遠 れんり

文字の大きさ
22 / 55
第二章 異世界暮らし

第22話 災難

しおりを挟む
 マルタはなんとか逃げた。
 他の人達ミリー、ピア、ノヴァー……
 そして、晋也。
 旦那様と言うより、エッチが好きなお兄ちゃん。
 かれも、名前よりもお兄ちゃんと呼ばれるのが好きだった。

「マルタ。お兄ちゃんのことが好きかい?」
「うん、お兄ちゃん好き」
「ようし、ご褒美をあげよう」
 エッチをする前の謎の儀式。

 でも優しかった。
 村との生活とは違い、ご飯が食べられたし、美味しかった。
 彼らはそう、ご飯に無茶苦茶拘っていた。

「血抜きが甘い、誰だこれを処置したのは?」
「あんばいが悪い」
「獣臭さが残っているわ、湯通しをして」
 そんなことを、日々言っていた。

 私たちは、食べられるだけで満足だったのに。
 マルタは法面を転がるように河原へと落ちる。

 今朝までの、幸せだった生活の後。

 足跡を消しながら、川を下る。
 出てきたけれど、町に戻って、説明をしよう。

 そうして、偶然なのか、数日前にここを通った悠人達の殲滅が極悪だったのか、危険な目に遭わず、町へと帰ってきた。

 そうして、工事中の悠人達を見つけて、飛びつく。
 そして泣きながら説明をする。

「そりゃ、行かなきゃな」
「ひょっとすると、生きているかもな」
 ないとは思いながらも、武神と竜司は燃える。
 単に、石運びに飽きたわけではない。

 最悪なことに、盗賊退治は女子には危険だからと言いくるめて、彼らは出発をする。
 いやな人殺しのはずなのに、軽くスキップをしながら。
 石運びに材木運搬。
 木の切り出しと乾燥、そして製材。

 大変なことは分かっている。
 だが、男には立ち向かわねばならないときがある。
 それが今なのだ!!

 とまあ、現場に向かう。
 マルタから、大体の場所は聞いたし、勝手に行こうとしたら付いてきた。
「危険だぞ」
「うん、でも、悠人お兄ちゃんが守ってくれるんでしょ」
 顎の前に両の拳。
 祈るように、瞳に涙を溜めながらこちらを見上げて、お願いしてくる。

 その時、お兄ちゃんという単語が、悠人の中で何かを芽吹かせる。
 たとえ、反応を見て、マルタがこいつチョロいと思っていても……

 兄妹が居たことは無い。
 それはどこか憧れで、新鮮な響き。
 熟れきった八重とは違う。

 伸ばされた手を何も考えず取り、仲良く歩く。
 歩幅の違いから、遅れるマルタ。

 それに、武神達は足早に町から離れようとしている。
 まあ助けに行くなら早いほうがいい。たぶん、それ以外ではないだろう。
 振り返り、気が付いた女子が追いかけてこないだろうなとか、きっと考えてはいない。

 そうそれは正義のために行くのだ。

「おんぶしてやる。ほら」
「ありがとうお兄ちゃん。でも、お兄ちゃんが疲れちゃうよ」
「大丈夫だよ。お兄ちゃんは強いからね」
「ほんとう?」
「ああ、大丈夫だ……」
 そう言うと、彼女は怖々背中へと張り付いてくる。

 頭の中では、彼に触れられた、このままなんとか子種をもらえるように頑張る。でゅふふふ。などと考えていても、かわいいは正義。

 彼女の体が少し小さく、足ではなく、尻を支えることになる。
 足早に歩く振動は、彼女に妙な刺激を与える事になる。
 そう彼女は、経験者。

 栄養状態が悪く、少し小さかっただけ。
 そうは言っても、若いんだけどね。

 彼女は、思った以上の刺激に、少し苦労をすることになる。
 撥ねるから、胸の先とか、手が触れているお尻とか、敏感な前側とか、自転車のサドルどころではない。

 背中に乗っているだけで、彼女は上気し、軽く達してしまう。

 憧れの、悠人様の背中で。

 彼らと出会い、少し経ってから気が付いた。
 彼ら自身では気が付いていないようだけど、明らかに手を抜いている。
 自らが出しゃばらず、力を誇示するわけでもなく、でも強い。
 そうこのグループを率いるのは、悠人様なのにどうして?

 この世界では強い男が、表に立ちすべてを手に入れる。
 それが普通。
 それなのに、彼はどちらかと言うと裏へ回り皆を助けている。

 ミリー達も気が付いていて、彼の物になりたいと言っていた。
 確かに、鈴木様達も優れていた、世界の常識には少し疎いけれど、すぐに計算をして、何かあっても答えを出す。
 でもそれは、このグループ。黒い人達は全員がそう。
 女の人でも、学校という所で、きちんと教育を受けているのだそうだ。

 考えられないところ。
 ファースティナ王国の秘術により、強制的にここへ連れてこられたと言っていた。
 帰りたいと、日々誰かがぼやいていた。

 そんな中で、やはり異色なのが、悠人様と彼の横に立つ八重という女の人。
 よく見れば、彼女は悠人様以外とほとんど関わらず、興味が無い。
 私たちを見る目は、路傍の石。
 
 そう、見えていても、見えていない。
 興味など全くない。

 ふつう、そんな感じだとギクシャクする人間関係が、なにもない様に行われる。
 あの人は、本当に人間だろうか?
 噂では、魔族は人を騙すと、あの戦争の時説明をされた。
 魔族では? そう思ったが、それなら悠人様が気が付かないはずはない。

 そう……

 でも、いい加減到着をしないと、彼に気が付かれるほど流れ出てきてしまう。
 もう幾度、私は達したのか……

 うん? 我慢できずにお漏らしか? 小さな子だから仕方ないか……
 そっと浄化をする。
 憧れの悠人様には、すでに気が付かれていたことを、彼女は知らない……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...