51 / 55
第三章 未来のために
第51話 王太子の憂鬱
しおりを挟む
「馬鹿者どもが……」
王は王国内に、手出し無用と通達をしていた。なのに、目先の欲で手を出した。
王国内の他の地が不作でも、あの地だけは豊作。
嵐で、各領で被害が出ても、あそこだけは被害が出ない。
そのため、目端の利く者達は、あの地に習いに行っていた。
礼を尽くせば、共に発展をしましょうと教えてくれる。
無論それを持ち帰り、自分だけの利を得ようとしたものは潰された。
そう、知識は与える。
だが物は、自身で研究をして行けと。
子どもが生まれ、次の治世のため、なかなかに強か。
連中の男達が死に絶えていたのには驚いたが、生き残った彼は別格のようだ。
王はそう考えた。
だが、王太子は、霧霞 悠人が怖かった。
王や宰相が頭を下げて、一介の領主に頭を下げて教えを請う。
その考えと教えは、王国の常識をあっさりと覆す。
幼き頃から、教育を受けてきた、努力をした。
先人の教え、それを元に発展型の治世を考える。
だが、それすら無駄だと、一蹴された事がある。
分からない、理解できない。
それは、いつしか畏怖へと変わる。
そして不幸なのは、王が思ったよりも早く崩御をしたこと。
悠人をおもしろく思っていなかった、能なしの貴族達に担ぎ上げられることになる。
そうそれは、王国の破滅への第一歩となる。
「そうだな。父上がどうであれ、今は私が王だ。彼の領に与えた自治権を無効として、すべてを王国へと帰属させよう。あそこの技術は一領主が持つには危険だ」
悠人に言わせば、いち王国が持つには危険なのだが。
「ふむ。本気か?」
書状を持って来た使者に問う。
使者は敵側の一人、ノービジブル=インコンペテンス伯爵。
新王の前に出て、ほらを吹いてやって来た。
「王様わたくしに、おまかせください。きゃつの心胆からしめ、泣きながら献上するように説得、いいえ、教育を施し理解をさせましょう」
彼は知らなかった、悠人について知っているのは、他国からふらっと来た暴力集団。
王国の混乱の中で、成り上がった無法者。
前王のひいきがあり、侯爵にまで成り上がったと……
意気揚々とやって来て、彼の領へ入った瞬間から、その異様さに気がつく。
道はすべて舗装され、排水設備と、崩落しそうな山肌はすべて土魔法で固められている。
農民達は全員が小綺麗で和やか。
馬車ではなく、魔導馬車が走り回り、大きな蛇のような物までが走っていた。
宿も、安く小綺麗、町中にはスラムがない。
そして糞尿の匂いもしない。
孤児達の窃盗団も……
「盗賊がいませんでしたな」
護衛についてきた兵団長。
実は、元近衛の一人。
王が崩御の後、一方的に職を辞すことにされた。
そう、旧王側の人間はすべて冷遇。
そんな人間は、悠人の元へと集まってきていた。
彼は普通の人間ではない、神の使者である。
知っているものは知っているが、目の曇ったものは信じない。
だが今は、そっちが多数派。
悠人の奇妙な迫力に、ノービジブル=インコンペテンス伯爵の体が、ガクガクと震える。
となりに控える黒髪の女も、自身のことを馬鹿にするような目で見てくる。
「まあ、こんな話は飲めん。あの王太子がこんなことを言うとはなぁ」
ぺいっと書状を投げ返す。
「なっ、王をないがしろにする行為」
「その王から、まあ前王からご意見無用の権利を貰っている。新王でもそれを簡単に覆すのはできん話だ」
「なっ、それは王国に逆らうと」
「違う。王国の決まりに逆らったのが現王。この事は引っくり返しちゃいけないのだよ」
「話にならん」
そう言い残し、足早に部屋を後にする。
体は震え、足はガクガク。
もう少しいると、気を失うところだった。
その日のうちに、領都を出立。
王都へと帰った。
「どうも面倒になったな。プワーナ王国とインペリティア王国へも使者を送っておこう」
だがこの二国でも、権力交代が起こっていた。
「はっ。前王の時に、我が国のために尽くしたと」
「知らんな。綿花栽培が禁止されて、我が国は困窮をしておる。そのなんとかという奴にお前のせいだと請求をしろ。ごねるならセコンディーナ王国も巻き込め」
この国と隣りのインペリティア王国は、大抵政変が起こり王位が変わる。
側近者達は、毒殺されることが多い。
そのため話が途切れて、条約などが通じない。
だから、ファースティナ王国がやっていたように、ごねてきたら力ずくで押さえ込むのが正解だった。
さて、セコンディーナ王国の王都では、現王が激怒。
「王国の決まりに逆らったのが私だと? 国の方針を決めるのは私だ。懲罰だ兵をそろえて、首謀者である侯爵を連れてこい」
そう叫んで、兵を挙げてしまった。
その頃、プワーナ王国とインペリティア王国から使者がやって来る。
「王国としてはそんな事は知らん。懲罰部隊をだすところだから、請求をするなら、貴国も兵をだせ」
なんと言う奇妙な采配が行われた。
そうして、三国で一万を超える兵がやって来た。
情報はあったので、領境にもう守備隊は配置しておいた。
「兵達よ、領主に対する懲罰軍だ。道を空けろ」
「やだね」
王は王国内に、手出し無用と通達をしていた。なのに、目先の欲で手を出した。
王国内の他の地が不作でも、あの地だけは豊作。
嵐で、各領で被害が出ても、あそこだけは被害が出ない。
そのため、目端の利く者達は、あの地に習いに行っていた。
礼を尽くせば、共に発展をしましょうと教えてくれる。
無論それを持ち帰り、自分だけの利を得ようとしたものは潰された。
そう、知識は与える。
だが物は、自身で研究をして行けと。
子どもが生まれ、次の治世のため、なかなかに強か。
連中の男達が死に絶えていたのには驚いたが、生き残った彼は別格のようだ。
王はそう考えた。
だが、王太子は、霧霞 悠人が怖かった。
王や宰相が頭を下げて、一介の領主に頭を下げて教えを請う。
その考えと教えは、王国の常識をあっさりと覆す。
幼き頃から、教育を受けてきた、努力をした。
先人の教え、それを元に発展型の治世を考える。
だが、それすら無駄だと、一蹴された事がある。
分からない、理解できない。
それは、いつしか畏怖へと変わる。
そして不幸なのは、王が思ったよりも早く崩御をしたこと。
悠人をおもしろく思っていなかった、能なしの貴族達に担ぎ上げられることになる。
そうそれは、王国の破滅への第一歩となる。
「そうだな。父上がどうであれ、今は私が王だ。彼の領に与えた自治権を無効として、すべてを王国へと帰属させよう。あそこの技術は一領主が持つには危険だ」
悠人に言わせば、いち王国が持つには危険なのだが。
「ふむ。本気か?」
書状を持って来た使者に問う。
使者は敵側の一人、ノービジブル=インコンペテンス伯爵。
新王の前に出て、ほらを吹いてやって来た。
「王様わたくしに、おまかせください。きゃつの心胆からしめ、泣きながら献上するように説得、いいえ、教育を施し理解をさせましょう」
彼は知らなかった、悠人について知っているのは、他国からふらっと来た暴力集団。
王国の混乱の中で、成り上がった無法者。
前王のひいきがあり、侯爵にまで成り上がったと……
意気揚々とやって来て、彼の領へ入った瞬間から、その異様さに気がつく。
道はすべて舗装され、排水設備と、崩落しそうな山肌はすべて土魔法で固められている。
農民達は全員が小綺麗で和やか。
馬車ではなく、魔導馬車が走り回り、大きな蛇のような物までが走っていた。
宿も、安く小綺麗、町中にはスラムがない。
そして糞尿の匂いもしない。
孤児達の窃盗団も……
「盗賊がいませんでしたな」
護衛についてきた兵団長。
実は、元近衛の一人。
王が崩御の後、一方的に職を辞すことにされた。
そう、旧王側の人間はすべて冷遇。
そんな人間は、悠人の元へと集まってきていた。
彼は普通の人間ではない、神の使者である。
知っているものは知っているが、目の曇ったものは信じない。
だが今は、そっちが多数派。
悠人の奇妙な迫力に、ノービジブル=インコンペテンス伯爵の体が、ガクガクと震える。
となりに控える黒髪の女も、自身のことを馬鹿にするような目で見てくる。
「まあ、こんな話は飲めん。あの王太子がこんなことを言うとはなぁ」
ぺいっと書状を投げ返す。
「なっ、王をないがしろにする行為」
「その王から、まあ前王からご意見無用の権利を貰っている。新王でもそれを簡単に覆すのはできん話だ」
「なっ、それは王国に逆らうと」
「違う。王国の決まりに逆らったのが現王。この事は引っくり返しちゃいけないのだよ」
「話にならん」
そう言い残し、足早に部屋を後にする。
体は震え、足はガクガク。
もう少しいると、気を失うところだった。
その日のうちに、領都を出立。
王都へと帰った。
「どうも面倒になったな。プワーナ王国とインペリティア王国へも使者を送っておこう」
だがこの二国でも、権力交代が起こっていた。
「はっ。前王の時に、我が国のために尽くしたと」
「知らんな。綿花栽培が禁止されて、我が国は困窮をしておる。そのなんとかという奴にお前のせいだと請求をしろ。ごねるならセコンディーナ王国も巻き込め」
この国と隣りのインペリティア王国は、大抵政変が起こり王位が変わる。
側近者達は、毒殺されることが多い。
そのため話が途切れて、条約などが通じない。
だから、ファースティナ王国がやっていたように、ごねてきたら力ずくで押さえ込むのが正解だった。
さて、セコンディーナ王国の王都では、現王が激怒。
「王国の決まりに逆らったのが私だと? 国の方針を決めるのは私だ。懲罰だ兵をそろえて、首謀者である侯爵を連れてこい」
そう叫んで、兵を挙げてしまった。
その頃、プワーナ王国とインペリティア王国から使者がやって来る。
「王国としてはそんな事は知らん。懲罰部隊をだすところだから、請求をするなら、貴国も兵をだせ」
なんと言う奇妙な采配が行われた。
そうして、三国で一万を超える兵がやって来た。
情報はあったので、領境にもう守備隊は配置しておいた。
「兵達よ、領主に対する懲罰軍だ。道を空けろ」
「やだね」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ
ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。
間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。
多分不具合だとおもう。
召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。
そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます
◇
四巻が販売されました!
今日から四巻の範囲がレンタルとなります
書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます
追加場面もあります
よろしくお願いします!
一応191話で終わりとなります
最後まで見ていただきありがとうございました
コミカライズもスタートしています
毎月最初の金曜日に更新です
お楽しみください!
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる