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第三章 未来のために
第52話 分かっていたこと
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「では、力を持って押し通る」
そう宣言後、双方自軍に戻る。
「うーん、どう見ても市販品装備だな」
「そうですね。相手の射程はまだまだですが、待つ必要もないでしょう」
もと、アキンダリア治安軍の伝令部隊隊長、ヨハン=ホッベマー準男爵
や騎士爵だった四人はうちの領に居付いた。
シドニー=ウィンザー達は、家督を兄が継いだので、兵として功績を立て、騎士爵を貰った者達。
他に行くよりは、居させてくださいと言ってきたので、大将マクシミリアーノ=ペカルスキー侯爵から貰った。
うちの領軍を任せている。
今回この場に、悠人は居ない。
プワーナ王国とインペリティア王国の態度が許せないから、ちょっと、嵐を呼びに行ったとか。
そうこの数年、この大陸に嵐は来ていない。
それは、例の騒動の時に二国の王から話を聞いて、大変だと思い、少しだけ手を出していた。
だが今回、前王の治世に結ばれた約定など知らん。お前達のおかげでこっちは損をしたと。
賠償をしろとまで言ってきた。
まあ、悠人はともかく、八重が切れた……
それで直接手を出すのもあれなので、風よ吹け嵐よ来いと願う。
そう、普通なら不能犯。
だが、二人が願えばひと味違う。
温かな海上で風が舞い踊り、上昇気流を起こし、急激に積乱雲は発達しあっさりと千メートルを超える。
台風を構成するアイウォール。その外側に急激に雲が広がりスパイラルバンドが激しい雨を降らす。
スパイラルバンドの外側にも、アウターバンドが発生。雲が広がりだす。
それは、二国へと台風を導くように伸びていく。
良い天気だったのに、急激に広がる雨雲。
まだ初夏。
それにしてもおかしい。
時間が進むにつれ、下降気流が吹き下ろす冷たい空気が二国を襲う。
色々な作物が、植えられたばかり。
気温の低下と雨は深刻なダメージを及ぼす。
それは馬鹿な指導者のせい。
後に神の怒りを買ったと言う事が判明する。
最もその時には、国が無くなっていたが。
雨はひどく、だが奇妙な降り方。
水が増えてくるときに、徐々に増え逃げられる猶予を与える。
王城に対して、選択的に雹が降る。
それを見て、国民や王都の住人はおかしいと理解し始める。
そして、その戦場。
見て取れるのは、圧倒的な戦力差。
市販品は、所詮市販品であるということ。
「おいこれ、やばくないか」
王国連合軍は焦っていた。
今まで貴族同士の内乱等で、絶対的な威力を証明してきた武具達。
それが役に立たない。
こちら側を圧倒する射程距離。
そして大きめの弾頭は、かなりの威力を見せる。
多弾頭型、魔力砲。
敵の上空で破裂し、火魔法の火球をばら撒く。
そうクラスター型。
爆発ミスを無効化する、魔力供給型。
その場で爆発しなければ、一〇分ほどで供給魔力は消費される。
そしてエグいのが、氷魔法、ニードル型。
刺さった後に溶ける。
よく、刺されたときにはナイフを抜くなと言われる。
抜くときに傷が広がるし、出血が起こるからだ。
この氷タイプは溶ける。
つまり、刺さった物による止血ができない。
そして、クラスター型を除き、どれもが市販型の盾を貫通する威力を持つ。
「だめだあ、射程内から脱出をしろ」
分隊レベルで勝手に逃亡が始まる。
当然先頭で逃げるのは、プワーナ王国とインペリティア王国の兵士達。
それに釣られて、どんどんと兵は下がっていく。
そして予想外が起こる。
領境を超えて、アキンダリア軍がやって来る。
途中で隊列を組み直そうも、その追撃は止まらない。
そしてそれは、夜も行われる。
追撃が始まると、兵運搬車が出てくる。
安眠魔導具付き。
少々揺れても目が覚めない。
それに兵が乗り込み、三交代制。八時間勤務、残業無し。
交代制だが食事と、休憩あり。
ホワイトな戦場を実現しますをうたい文句に、シフトが考えられた。
実際は、交代をするオーバーラップが三〇分ほどあるが、この世界では問題にならない。
そう実際、一方的な殲滅作業。
歩きながら、撃ちまくるだけ。
その強さに、ハイテンションな奴らが出てくる始末。
大幅に数を減らしながら、王都にまで戻ってしまった。
その期間三ヶ月。季節は夏真っ盛り。
逃亡に次ぐ逃亡。
王国連合軍は、随分前から戦闘などできるようなものでは無かった。
そして、王都内へ入っても、様子を見ていた旧王の信奉者達がほう起。
あっという間に、現王達は捕らえられてしまう。
魔導通信機により、悠人の所に連絡が入る。
「やりましたぜ兄貴」
「誰が兄貴だ。王都だな。今から行く。良いか略奪とかは絶対するな。後が治めにくくなる」
「同意の上は、良いですよね」
「ああ、本当にそうならな」
そうは言ったものの、今回の戦闘で、相当数の未亡人ができたはず。
この世界では当たり前だが、強きものにすがり食わせて貰う。
この時にはすでに、悠人の中では、レギンに王をさせるつもりだった。
そして棚ぼただが、プワーナ王国とインペリティア王国を落とし、今あるかどうかハッキリしないファースティナ王国も手中の治める。
精霊国は、もう半分統治者だし、魔人国は滅んだ。
そう、息子達やマルタとゲルデに此の大陸を統治させる。
マルタは、百年生きられないだろうが、ゲルデとアドミナは寿命が長い。
精霊国の連中に話をして、人間側の国を見させる。
そんなことを考えていた。
かなり過保護な悠人だった。
死に神なのに……
そう宣言後、双方自軍に戻る。
「うーん、どう見ても市販品装備だな」
「そうですね。相手の射程はまだまだですが、待つ必要もないでしょう」
もと、アキンダリア治安軍の伝令部隊隊長、ヨハン=ホッベマー準男爵
や騎士爵だった四人はうちの領に居付いた。
シドニー=ウィンザー達は、家督を兄が継いだので、兵として功績を立て、騎士爵を貰った者達。
他に行くよりは、居させてくださいと言ってきたので、大将マクシミリアーノ=ペカルスキー侯爵から貰った。
うちの領軍を任せている。
今回この場に、悠人は居ない。
プワーナ王国とインペリティア王国の態度が許せないから、ちょっと、嵐を呼びに行ったとか。
そうこの数年、この大陸に嵐は来ていない。
それは、例の騒動の時に二国の王から話を聞いて、大変だと思い、少しだけ手を出していた。
だが今回、前王の治世に結ばれた約定など知らん。お前達のおかげでこっちは損をしたと。
賠償をしろとまで言ってきた。
まあ、悠人はともかく、八重が切れた……
それで直接手を出すのもあれなので、風よ吹け嵐よ来いと願う。
そう、普通なら不能犯。
だが、二人が願えばひと味違う。
温かな海上で風が舞い踊り、上昇気流を起こし、急激に積乱雲は発達しあっさりと千メートルを超える。
台風を構成するアイウォール。その外側に急激に雲が広がりスパイラルバンドが激しい雨を降らす。
スパイラルバンドの外側にも、アウターバンドが発生。雲が広がりだす。
それは、二国へと台風を導くように伸びていく。
良い天気だったのに、急激に広がる雨雲。
まだ初夏。
それにしてもおかしい。
時間が進むにつれ、下降気流が吹き下ろす冷たい空気が二国を襲う。
色々な作物が、植えられたばかり。
気温の低下と雨は深刻なダメージを及ぼす。
それは馬鹿な指導者のせい。
後に神の怒りを買ったと言う事が判明する。
最もその時には、国が無くなっていたが。
雨はひどく、だが奇妙な降り方。
水が増えてくるときに、徐々に増え逃げられる猶予を与える。
王城に対して、選択的に雹が降る。
それを見て、国民や王都の住人はおかしいと理解し始める。
そして、その戦場。
見て取れるのは、圧倒的な戦力差。
市販品は、所詮市販品であるということ。
「おいこれ、やばくないか」
王国連合軍は焦っていた。
今まで貴族同士の内乱等で、絶対的な威力を証明してきた武具達。
それが役に立たない。
こちら側を圧倒する射程距離。
そして大きめの弾頭は、かなりの威力を見せる。
多弾頭型、魔力砲。
敵の上空で破裂し、火魔法の火球をばら撒く。
そうクラスター型。
爆発ミスを無効化する、魔力供給型。
その場で爆発しなければ、一〇分ほどで供給魔力は消費される。
そしてエグいのが、氷魔法、ニードル型。
刺さった後に溶ける。
よく、刺されたときにはナイフを抜くなと言われる。
抜くときに傷が広がるし、出血が起こるからだ。
この氷タイプは溶ける。
つまり、刺さった物による止血ができない。
そして、クラスター型を除き、どれもが市販型の盾を貫通する威力を持つ。
「だめだあ、射程内から脱出をしろ」
分隊レベルで勝手に逃亡が始まる。
当然先頭で逃げるのは、プワーナ王国とインペリティア王国の兵士達。
それに釣られて、どんどんと兵は下がっていく。
そして予想外が起こる。
領境を超えて、アキンダリア軍がやって来る。
途中で隊列を組み直そうも、その追撃は止まらない。
そしてそれは、夜も行われる。
追撃が始まると、兵運搬車が出てくる。
安眠魔導具付き。
少々揺れても目が覚めない。
それに兵が乗り込み、三交代制。八時間勤務、残業無し。
交代制だが食事と、休憩あり。
ホワイトな戦場を実現しますをうたい文句に、シフトが考えられた。
実際は、交代をするオーバーラップが三〇分ほどあるが、この世界では問題にならない。
そう実際、一方的な殲滅作業。
歩きながら、撃ちまくるだけ。
その強さに、ハイテンションな奴らが出てくる始末。
大幅に数を減らしながら、王都にまで戻ってしまった。
その期間三ヶ月。季節は夏真っ盛り。
逃亡に次ぐ逃亡。
王国連合軍は、随分前から戦闘などできるようなものでは無かった。
そして、王都内へ入っても、様子を見ていた旧王の信奉者達がほう起。
あっという間に、現王達は捕らえられてしまう。
魔導通信機により、悠人の所に連絡が入る。
「やりましたぜ兄貴」
「誰が兄貴だ。王都だな。今から行く。良いか略奪とかは絶対するな。後が治めにくくなる」
「同意の上は、良いですよね」
「ああ、本当にそうならな」
そうは言ったものの、今回の戦闘で、相当数の未亡人ができたはず。
この世界では当たり前だが、強きものにすがり食わせて貰う。
この時にはすでに、悠人の中では、レギンに王をさせるつもりだった。
そして棚ぼただが、プワーナ王国とインペリティア王国を落とし、今あるかどうかハッキリしないファースティナ王国も手中の治める。
精霊国は、もう半分統治者だし、魔人国は滅んだ。
そう、息子達やマルタとゲルデに此の大陸を統治させる。
マルタは、百年生きられないだろうが、ゲルデとアドミナは寿命が長い。
精霊国の連中に話をして、人間側の国を見させる。
そんなことを考えていた。
かなり過保護な悠人だった。
死に神なのに……
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