神の都合と俺の都合

久遠 れんり

文字の大きさ
54 / 55
第三章 未来のために

第54話 統一と、皇帝の即位

しおりを挟む
「ファースティナ王国も、結局食い物を配るだけで終わったな」
 大陸の中央部、山脈の麓に新たな城を建てる。

 実質、三カ国は簡単に陥落をして統治下に入った。
 問題は、国民性。
 国の成り立ちで、力を持った者達が既得権益を握り、好き勝手をしてきた。
 そのため、賄賂など小ずるい物の考えが蔓延中で、国民までがそれを普通だと考えている。
 自分さえ良ければ、何をしても良いと……

「子どもを集め、道徳教育。親などからつまらんことを吹き込まれるから、悪さをする奴は徹底的に取り締まれ、国民全体がズルいことをするのは、損だと思うまでな」
 町中到る処に間者を忍ばせて、密告をさせる。

 罰金は、利益額に応じて十倍を徴収。
 それを繰り返すことで、馬鹿馬鹿しいと思わせる。
「それじゃあ、真面目に働いた方が得じゃないか」
 居酒屋や、むふふなお店にも、広告塔になる者を忍ばせた。
 まあ悪事で稼げば、そう言うところでぽろっと漏らす。
 すると密告。
 罰金を払って愚痴れば、真面目に…… と話をして諭す。

 仕事を与え、国民の所得が上がればズルい者が馬鹿を見る。
 賄賂を持ってくれば、取引停止を徹底させる。

 その間に、法整備と組織の組み立て。
 
 知識不足のマルタとゲルデが困らないように……
 ただまあ、二人共が毎日感謝をして泣いてくれる。
 貧乏農村の娘と、町のスラム出身。

 クラスの女の子達は、お気楽に暮らしているが、三十歳を越えだした頃から泣き始める。
 俺と八重が年を取らないからだ。
 いや二十歳くらいまではきちんと年を取った。
 でも、その後はもう良いかと止めた。

 おかげで、ぼつぼつと帰ると言い始めた。
 俺としては、子どもが二十歳まではと思ったが、許してもらえない様だ。

「まあ俺達はいつでも来られるから、十五歳で良いか」
「そうねえ、ちょくちょく来ましょ」
 八重とそんなことを話していると、皆がごねる。
「なら私たちも子どもを……」
 そう言って詰め寄って来る。

「だからそれをしても、お前達はこっちに来られないから」
「なに? 悠人君こっちの神より力が無いのぉ……」
 皆が考えついたようだ。
 人のプライドをくすぐって、理を変えさせようと……

 にまにま顔が並び、さらに……
「できないのぉ、最強の死に神でしょうぉ」

「…………」
「仕方が無いわね、悠人には無理でも私ができるわ」
 八重が折れた。

「それに、向こうで地上にいるわけにはいかないからね。私がこっちで見ておくから。皆安心をして」
「理を曲げていいのか?」
「元々理を曲げたのは、こちらの神よ。知ったこっちゃないわ。たとえ罰を受けて消滅をしてもね。その場合私がこの世界を見るわ」

 八重はそう言ってふんぞり返る。
「じゃあ、陣を創るか」

 じじい神が創ったより完璧な物を創る。
 向こうから来た者は、この世界にいる間、年を取らない。
 帰ると向こうでは時が進んでいない。
 検疫と浄化。

「できるじゃない」
「そりゃできるさ、上の方が怒ったら、お前がなんとかしろよ」
「あーうん。相手に寄るけれど」
 なんか中途半端な返事。

 子どもを創り、誕生させる。
 その子達が五歳の時、レギン達が成人。
 皇帝とさせて、グレートエンパイアを発足。
 まあ偉大なる帝国と、少し若さがほとばしった名前だが、それで行く。

 多少魔導具を充実させて、生活と衛生を進めた。
「それじゃあ後は、お前達と八重に任せた」
 そう言って、帰ろうとして、ふと気が付く。

「俺が切るから、すぐに死体は隠せ」
 そう言うと、八重は理解をした様だ。

 瞬速で皆の魂を切る。
 俺は狭間の空間へ転移。
 八重は皆の死体を隠す。

 これで見送りが成功。
 俺達は、高校生に戻った。

 俺を除く、皆の魂が狭間の空間にやって来ると、結界が溶ける。
 学校の教室。
 元の昼休み。
 弁当の食いかけや、はしゃいでいる奴、様々。

 戻ってきたが、教室はシーンとしている。
 委員長達は俺を見つけて走ってくる。
 
 にらみ合いをする奴ら、周りを確認をして泣き出す奴ら、色々だ。
 各自死んだ瞬間に、戻ってきた感じだしな。
 
 混乱をするだろ。
 幾人かは、教室から飛び出し、本当に戻ってきたのかを確認をする。

 まあ混乱は、先生がきても続く。
 ひたすら、ざわざわざわと……

「どうした、お前達。まあいい昨日の続きからだな。山田からだな読め」
「えっ昨日? 読め? えっえっ?」
「どうした、昨日のことだぞ」
「今日何日でしょうか?」
 与野が先生に聞く。

 皆がそんな感じで、先生もおかしいと思い始める。
「ちょっと、みんな待っていろ」
 先生は職員室へ帰り、午前中の様子を他の先生に聞きに行った様だ。

 ドヤドヤと幾人か先生がやって来る。
「昼に何があった?」
「異世界に連れて行かれていました。殺されたんです盗賊に、マルタも……」
 安心しろ、松井。マルタは立派なお母さんとなっている。

 俺が思ったことが聞こえたわけではないだろうが、沙織達がこっちを見てにまにましやがる。

「昼に寝ていたのか?」
「「「「「違います。皆一緒に行っていました」」」」」
 でまあ、その日は騒ぎになり、なんだろうスクールカウンセラーさんから連絡が行き、医者が走ってくる。集団ストレスがどうとか?

 精神的な鑑定と、記憶の齟齬がどうとか?
 だけど、クラスのみんなで記憶の一致が有り、何かが起こったのは確かだと騒ぎになる。
 そして、見事に学力が落ちていた……

 大人になってから、思い出したように高校のテストを受けてみろよ解けないから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
 毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 連載時、HOT 1位ありがとうございました! その他、多数投稿しています。 こちらもよろしくお願いします! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~

桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。 交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。 そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。 その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。 だが、それが不幸の始まりだった。 世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。 彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。 さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。 金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。 面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。 本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。 ※小説家になろう・カクヨムでも更新中 ※表紙:あニキさん ※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ ※月、水、金、更新予定!

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

処理中です...