異世界の管理が悪く、(影の)管理者として派遣されました

久遠 れんり

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第3章 世の平定 獣人領

第61話 攻防戦?

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 クオーレル側、ダンジョン出口。

 侵攻の最前線から逃げてきて、物資を消耗しながら、怠惰な生活をしていた教会関係者。
「あんな泥臭い、罠ばかり。獣人族のくせに頭を使うとはな……」

「そうですな。記録では、侵攻をすれば。強い獣人が現れ、すぐに一騎打ちを望んでくるのを袋叩きにして、一気に歩を進める予定でしたのに。どういう事でしょう?」
「さあな、小狡い(こずるい)者が王にでも収まったか? 試合をして勝てば王になれるらしいからな」
「なるほど。さすがは、獣どもですな」

 その時、兵が走りこんで来る。
「敵襲です」
「なっどうして?」
 兵士は、指示を仰ぐ。

「ご指示をお願いいたします。ダンジョンの入り口に向かって、両側から敵は来ております」
「ええい。ダンジョン側にひいて対応しろ」
 すぐに兵は、敬礼をして立ち去る。

「おおぃ。護衛を……ちっ。おおい、誰かいないかー?」
 周りからは返事がない。
「ダンジョン内へ撤退しろー」という声だけが、あちらこちらから聞こえてくる。

 軍としての、統制などは全くなされていない。ただ兵たちは思い思いに逃げていく。

 自分に関係ないものは、すべて放棄して……。
「ええい仕方がない、司教逃げるぞ」
「お待ちを。大司教さま」

 司教は慌てて酒や、金目の物を集めて無造作にカバンへ詰め込んでいく。
 その様子を見た大司教も、あわてて荷造りを始めてしまう。

 金目のものと言っても、破棄された村にあった、祭祀用のものだったりたいした価値はないのだが……。

 慌てて外を見回し。
 荷車を見つけると、中に積まれていた食料を地面にばらまく。
 この食料は、前線へと送られるため、用意がされていたものだ。

 開けた部分へ、鞄を詰め込み始める。

 その時。ダンジョンの入り口を中心に、青白く染まり、火球が広がっていく。
「ズズーン。ドーン」

 何かが落下したような音の後。
 ドーンという巨大な太鼓のような、空気が押し出された音がした。

 半径100mほどの円形に、すべてが燃え。
 真ん中に、ダンジョンの口が開いている。
 外周部分の立木は外側に傾いだまま、今も燃えている状況。
 円の中は、すでに攻撃を受けた瞬間。
 炭となっている。

「あらぁー。……すごいな、これは」
「この者の本領発揮じゃな。わが身の魔力だけでなく、周りの魔素にも働きかけ威力を増大させる。それに、酸素じゃったか?燃焼に必要なものは何だという、問いかけに対する回答が、あの青い炎なのじゃろう」

 俺たちの横で魔法を放った本人。賢者である坂下妙子は口を開けたままで固まっている。チョコレートを放り込んでみる。
 それを見た、みんなが。口を開けるので、次々に放り込んでいく。
「このチョコレートというのは、甘くていいのう」
「おいしいでしょ」

 まったりとしているが、あそこにいたヒューマンはどのくらいいたんだろうか? 一瞬で蒸発したのが救いかもな。
「あれ。あれ。あれ。本当に、脅しのつもりでしか撃っていないんです。ほんとに軽くで。魔力も減っていなくて……」

「努力すれば、そのくらいの力があったようだね。練習すれば、小さなものでも。今はきっちりと制御ができているから。次はもっとうまくできるだろう」
「これで前みたいに、思いっきり撃つと。怖いんですけど」
「しばらくは、必要ないだろう」

「まあ。とどめに、2か所くらい。脅しで撃っておこうかな。ほい」

 目線の先。
 空中に火球が二つ浮かぶ。
 今回魔法を撃ったのは俺だ。
 目測で、10kmくらい間隔をあけてある。
 放った魔法に干渉して、酸素を風魔法を利用して、空気から分離させ、注ぎ込んでいく。
「うん。赤から青になって来たな。ほい」
 火球が、地面に向けて落下する。

 賢者の魔法と違い、
「キュン? ともキン? とも聞こえる音の後。パーンと言う破裂音がしたな。圧を掛けたんでデトネーションでも起きたのかな?」
 おお。うわぁ。ここまで衝撃が来た。

「まあ。これでしばらくは、兵站の復旧に時間がかかるだろう」
 と言って振り向くと、みんながこぼれそうな眼をして口を開けていた。

「ななな。あっあ主」
「はい?」
「なんで放った魔法に対して、干渉ができるのじゃ?」
「ああ。あれはあそこで構築していて、浮いていた時にはまだ放っていないの。俺の中では」
「あんな遠くで構築って……」
 まだみんながびっくりしている。なんで?

「と言うことは、主は空間的に認識ができれば、どこでも魔法を構築できるのか?」
「まあ。できるだろう。手のひら以外でも発動ができるのだから、少々距離が遠くてもいいだろう。その方が、自分にとっても安全だし」

「それはそうじゃが、普通距離ができれば、構築できずに霧散するんじゃがの。妙子修行じゃな」
「はい……」



「はあっ? 兵站が来ない?」
「はい。逃げてきた兵の話によると、火の玉が3つ降ってきて、すべてが消えたということです」
「やっぱりぃ。来たじゃあないかぁ。行くも地獄う。帰るも地獄う。引き返してもその超級魔法で兵士が消滅するだけだ」
 いかんなパニクったせいで口調が安田さんになってしまった。 対決列島 ~甘いもの〇盗り物語~が始まってしまう。

 ストレスで、牛乳を吐きそう……。
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