泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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導かれたのか?

第4話 うつろい

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 社長をしている洞野 吹谷ほらの ふきやさん二十八歳。

 彼に会ったのは、チープな婚活イベント。

 今付き合っている一颯と、将来について話したとき…… 
 共稼ぎで良いだろうと彼は言った。私は、専業主婦がしたいのに……

 だから、私は行動を開始した。よりよい結婚生活を。安定した人生を求めて。
 情報を拾うと、本気で探すなら、若い内じゃないと駄目だという。
 一颯は良い人だけど、スペックが普通。
 将来の生活が見えてしまう。

 中学校のときから、周囲に私に見合うのはハイスペックな男よ。
 そう宣言をしていた私に、彼は合わない。
 まあ優しいし、いい人なんだけれど。


 運の良い私。
 一回目で社長さんをゲット。
 会場で周りを見まわしたとき、真面目に相手を探している女は、四十歳を 超えたような人ばかり。
 そう。この会場内で若い女は、私だけだという状態。
 周りには、人だかりができて、私の承認欲求と優越感を刺激する。
 そうよ。私はモテるのよぉ。そんな事を大声で叫びたい。

 一颯には悪いけれど、彼はそこそこモテるし、普通の女と普通の人生を歩めば良いわ。一時期でも私と付き合えたことを自慢することね。
 あの社長夫人、響子じゃないか? そんな奴と付き合っていたのか俺は……
 そう言いながら、落ち込む一颯……
 絶対にないだろうと思える妄想を、膨らませる彼女。

 社長夫人として、有名になった自分を想像する。
 憧れた、セレブな生活……


 彼とはすぐに深い仲になった。
 ただ彼は忙しく、なかなか会えない。
 彼の都合が付く日に連絡が来て、待ち合わせをして、エッチをして別れるだけ。
 でも良いの。

 今は彼をつなぎ止めるため、たまの食事とエッチだけで。

 それが、丁度お盆休み一颯は実家へ帰るという。
 彼に連絡をすると、会社もお盆休みとなり時間がとれるという。
 私は思いきって、マンションに誘った。

 いつもは、一颯と暮らす部屋。
 無論、見られるとやばそうな、彼の物は隠した。

 そして、此の空間に吹谷さんが来たとき、妙な背徳感が私を興奮させる。
 作ったことのなかった、イタリアンな料理を本とにらめっこをしながら作った。
 何とか、飾り付けや見栄えでごまかして、彼に振る舞う。

 昼からワインを飲み。すっかり出来上がる……
 彼も、時間があるせいなのか、じっくりと楽しんでくれる。

 途中で買い物に行ったり、彼との楽しく優雅な生活がシミレーションできる。
「幸せ」
「そうかい? そう言ってくれるとうれしいよ」
 そう言って彼は、嬉しそうに笑う。
 だけど、この人は目が笑わない。
 でもそんな事は、些細な事。

 私は、彼の望むことをする。
 彼を捕まえるために。



 ―― 一方。汽車の中では。
「来るときは、高速バスだったんです」
 高速バスなら、直接市内までの直通便がある。
「そっちの方が安いもんなぁ。汽車だと時間がかかるし」
 この地方は、まだ電車になっておらず、ディーゼルの機関車が客車を引っ張る。
 瀬戸内海側に出ると、流石に電車となるが俺達は話し合いの結果、琴平で降りてバカみたいに長い参道を登り、奥の院にまで参拝をする。

「ここは海の見守る神様で、江戸時代とかから参拝に来ていたんですよ」
 彼女が言うように、日本最古の芝居小屋『金丸座』も存在をする。

 彼女も、帰ると言ったものの、休みはまだある。
 俺も帰るわけには行かないし、途中下車して観光地をふらふらと巡る。

 半ば強引に誘ったのだが、彼女もそれが楽しそうで、霊場があるため幾つもの寺があったり、古の戦場が残るこの地。見どころを検索しながら、二人でふらふらと巡る。
 お互いに、引かれ合い。
 そう。なる様になった。

「一颯さんは、モテそうなのに彼女さんとか居ないの?」
 そう聞かれて、ドキッとする。
 やつは浮気をしているが、まだ別れた訳ではない。

「あーごめん。実は……」
 今、別れるための調査中でという話しをする。

 証拠の動画を見せる。
 そう、彼女が…… 紬葵が、悲しそうな顔をしたからだ。

「君を騙そうとか、遊びな訳じゃない。その…… 本気で好きになって。そうだ。証拠はあるし、この場で別れを送るよ。それで俺はフリーになれる」
 俺は少し焦りながらそう言ったのだが、彼女はやはり悲しそうな顔。

「良いんですか? まだ話し合いとかすれば……」
「いや、無理だ。彼女の理想は、年収一千万以上の男らしいからな」
「えっ? そんな希望を持つ人って、今でも本当に居るんですか?」
 本気で彼女は驚いていた。

 自分の給料、そして周囲に居る人間の給料は大体分かる。

「三高って言葉は、バブル時代。一九八〇年代に生まれたらしいな」
「そうですよね。お母さん達の世代ですよね」
 そんな彼女を? させるために、勢いもあり。少し前倒しで別れを実行する。

「ビデオのカットはこれで、いくつかは写真に書き出して…… 送信すれば……。文面は、『お前は、お前の好きにすれば良い。別れよう。』これで良いかな? ぽちっとな」
 スマホに送信完了の表示が出る。
 連絡はないとは思うが、連絡先を削除。
 アプリの方はブロック。

 だがその後で、荷物をどうしようと思ったのだが、引っ越し屋さんに依頼しようと思いつく。小規模のやつなら高くないだろうし、人が居ればあいつも騒がないだろう。

「本当に送ったんですね? よかったのですか?」
「良いんだよ。じいさんの七回忌で久しぶりに帰って。地元の社で君と出会った。ある意味、じいさんが引き合わせてくれた奇蹟のような気がする。俺は君に会えてうれしいんだけど…… 君は違うのか?」
 そう聞くと、彼女は俺の胸に額をつけて、布団に少し潜る。

「いじわる。嫌ならこんな事しません。誰とでもなんて私は無理」
 彼女の体温が上がるのを感じる。

「よかった」
 俺はそう言うと、彼女を抱きしめる。
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