泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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穂とめぐみと和音 はっぴいと?

第3話 買い物とその後

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 彼女は、赤くなったまま歩みが止まったので、駅前の店まで手を繋いで引っ張っていった。無論彼女を見てスピードを合わせ、車道側を歩く。
 昔女の子と付き合ったときに、覚えた行動。

「此処の雑貨屋さんに、色々あったと思う」
 そう言って、エレベーターに入る。
 意外と狭いタイプだが、そこまで寄ってこなくても。

「意外と、エレベーターって、動き出しと止まるときが怖いですよね」
「そうか、そうだね。昔事故とかもあったし」
「そう。でも今の位の大きさって良いな」
 ぼそっと何かを言った後、フロアに広がる雑貨を見て、目がキラキラと輝き、表情が明るくなった。

「ここって、凄いですね」
「来たことなかったの?」
「ええ。あまり外に出ないもので」
 タンブラーを見に行こうと思ったけれど、彼女はふらふらと光り物へと向かってしまう。
 こう言うのって、女の子の特性なのか?

「凄い。イヤリングとかも安いですね」
「最近100均とかにも、あるよね」
「そうなんですか?」
「行かないの?」
「あんまり。小学校の時は、おとうさんそんな所へ行かなかったし、中学生の時も家で部屋に籠もっていて。友達も多い感じじゃなかったし。高校は寮だったので」
 そう言って指折り数える、彼女につい謝ってしまった。

「なんだか、ごめん。安くて悪いけど、お詫びにどれか気に入ったのがあれば、プレゼントするよ」
 そう言うと、びっくりした顔をする。

「いえ。悪いですそんなの。今日会ったばかり? 今日会ったばかりですよね。そんな気がしませんけれど」
「まあ、それのお詫びもかねて、どう? こっち半分はピアスだね」
「かわいいのは、ピアスの方がありますけれど、穴を空けるのが怖そうですね」
「そうだね。聞いた感じだと自分ですると、感染して腫れたり、化膿するから病院でした方が良いみたい」
「そんなのって、どこでするのでしょう?」
「うん? 普通に美容整形とか、ちょっと待ってね」
 調べると。

「耳鼻科や皮膚科でも、いけるみたい。うわすご」
 思わず、検索してピアッシングのマニアな画像がヒットした。
「うわー。痛くないのでしょうか?」
「さあ、どうだろう? まあ普通に耳で良いんじゃない?」
 すると、じっとスマホを見ている彼女。

「どうしたの?」
「いえ。何でもありません」
 そういう彼女だが、見ていたのはもっときわどい画像。
 女子ばかりの環境だと、興味が出るのか?

「うーんかわいいのは、やっぱりピアスですね。どうしよう? あっそうだ。ピアスを買って、穴を開けるとき付いてきていただけません?」
「うん。いいよ。でも確か、すぐには付けちゃ駄目だよ。専用のがあるとか何とか」
 そうして、また彼女が凝視していたページが、ロックを解除すると見える。
 うん痛そう。

 それに気がついたのか、赤くなる。彼女。見た目はかなり、おとなしそうなんだけどな。
「興味あるの?」
「えっまあ。お年頃ですから。見知らぬ男の人に、お願いをするぐらい」
 そう言われて、笑ってしまった。
「確かに。危ないよ」
「そうですね。これからは、知らない人に声をかけられても、ついて行きません」
「あっうん。それが良い」
 つい頭をなでる。

「あっ。えへっ」

 まあそれで、その後食事したり、プリントシール機を撮ったり。
 夕方まで遊んで、連絡先を交換して、家の近くまで送っていき別れた。

 彼女は誘いたがったが、「部屋の中が、さすがに恥ずかしすぎて駄目です」そう言って泣きそうになっていた。その代わりではないが、キスをしてきたので受け入れた。
「今日は、初めてが一杯です」
 そう言って、帰って行った。

「まあ俺にとっても、予想外の連続だよ」
 帰り際、ついぼそっと言葉に出たが、本心だ。


 帰り道、駅前で例の彼女が歌っていた。彼女を間違える元になった彼女。
 ややっこしいが、辻田和音さんが歌っていた。
 彼女は、長渕さんの曲をよく歌う。
 それも、『激愛』とか『素顔』とか、まあ別の歌手が歌う、最近の流行の曲も歌うけれど。
 この2曲は、歌い込み方というか、感情が凄い。

 しばらく聞いていて、間が開いたので、投げ銭をしに行く。
「お疲れ」
 その声に、ふとこちらを向く。
「あっ。ありがとう」
 何故か赤い顔をして、お礼を言われる。
 夕方の光のせい?

「あっ。やば。深瀬さん。お願い。ケース持ってきて」
 そう言って、ギターとかを持って走り出す。道の向こうに警官が一人。
 また未許可か。

 彼女について、走って行く。
 後ろで、まとめられた、髪の毛が馬の尻尾のように揺れる。

「どれ、ギターも持ってあげようか?」
「あっ。ごめん。これは良いの」

 しばらく逃げて、息をつく。

 お互い肩で息をするが、彼女の方が回復が早い。
「凄いな結構走ったのに。もう復活?」
「歌の特訓と称した走り込みの成果ね。警察との追いかけっこで、鍛えあがっちゃった。まあそのおかげで、ロングトーンが凄くよくなった。中島みゆきさんの『麦の唄』が歌えそうよ」
 そう言って、屈託なく笑う。
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