泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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譲れない戦い

第6話 後悔と葛藤

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 それから、三年。
 友達の居ない生活が変わった。
 彼の好みとか、自分の欲。
 あまり贅沢はできないけれど、普通の生活をしていたと思う。

 だけどその頃、取引先の課長さんとか、結構な頻度で食事とかどうと誘われて、無視をずっとするのも、あまりにも気が引けて、行く事になった。
 
 課長さんが与えてくれたのは、一ランク上の生活。
 イタリアンとか、フレンチ。
 高級な焼き肉。
 ホテルへ……

 彼には悪いと思った。
 自分が変われたのは、彼のおかげ。
 でも、上を知ってしまうと、普通の生活は急激に色あせていってしまった。

 貧乏性。
 これが欲しいけれど、今は買えない。
 今これがなくても、生活にはこまらない。
 ボーナスでも出て、余裕があれば……
 そんな言い訳をする生活。

 だけど、課長さんは違う。 無理しなくても良いんじゃない?
「確かに少しは高いと思うけれど、君が欲しいなら買えばいい」
 そう言って物を与えてくれる。

 本物を……

 そんな生活を二年。
 彼が言い出す。
「もうそろそろ、結婚をしないか?」
 その言葉は嬉しい。
 だけど…… でも……

 彼との暮らし、この先に見える生活に、私は我慢が出来なかった。

 共稼ぎでも、一千万などまだ遠い。
 課長さんに貰った本物と、彼と買い求めたアクセサリーを並べて見つめる。

 ただ、課長さんは既婚者。
 だけど私はまだ若い。
 今結婚をして、よく居る生活に疲れた女になりたくない。

 昔の私なら、嬉しくてきっと素直に彼の手を取った。
 でも…… 確かに、彼のおかげで、変わった私。

 ごめんなさい。
 私は、あなたのおかげで変われたの、変わった私に見合った生き方をするわ。

 そうして私は、彼を捨てた。
 私を変えてくれたのは、あなた…… でも、私は幸せになりたい。
 親のような生活、必死で生きるのはいや。

 そう思ったのに……
 課長さんも、無理をしていたみたい。
 がっかり。

 年収は、六百七十万とか言っていたのに、そんなに余裕があるわけではなく、私のために借金までして尽くしたんだとか言っていたけれど、奥さんに借金がバレて、芋づる式に私との浮気がバレた。
 そして、他の女もいた。

「うちは離婚をします。あなたにも慰謝料を払っていただきます」
 なんだか弁護士さんが来て、長々と説明をされる。
 付き合いは二年なのに、彼の結婚期間が何年で、あなたとの関係がそれを破綻させるのに有責であると言われた。それにより慰謝料の金額がどうたら。気がつけば、三百万円とか払えと言われた。
 できなければ、裁判だと……

 課長さんは言う。そこに優しかった姿は無い。
「当然だが、関係は終わりだ。慰謝料に養育費。俺は終わりだ」
 そう言って、彼は私の元から離れていった。

 そうなのよ。
 呆然としていたけれど、借金が三百万円……
 親に相談に行ったら、仁君はどうしたと聞かれ、別れたと説明。よりを戻せと言われ、振ってしまったから無理と話す。
 あげく、不貞行為。
「あんたが、こんなにバカだと思わなかったよ」
 母さんにバカ呼ばわりされた。
 お父さんは、何も言わないと思ったら、呆れて声が出なかったとか。

 二人は、仁のことを気に入っていたみたい。

 だけど、今更ら……

 …… ……
 ―― まだ間に合う?

 もし彼がまだ、私のことを好きでいてくれれば…… あーいえ。
 私でも、そんなの出戻ってきても許せないわ。
 幾ら彼が優しくて、私に甘々でも……

 少しだけ。
 そう思い、彼のマンションへと向かった。

 よく考えたら、このマンションも、賃貸じゃなく買っているのよね。でも、お金持ちの実家とは聞いていないし。

 何あの子?
 彼の部屋に、女が我が家のように入って行く。

「えっあっ、デリヘル?」
 私が出て行ったから、って風俗に頼るなんて不潔ね。
 そう三百万円の工面を考えて、その辺りも勉強をした。

 でも、病気とか怖いし。
 地道に払うしかない。そう思った矢先のこと。
「あんたに言っていなかったけれど、前に百万円ほど借りたことがあったのよ。あの子若いのにしっかりしているのよ」
 母さんが暴露をした。

 そう、蔓延した病気の時、潰れそうになったらしい。
「知らなかった、何故言ってくれなかったのよ」
「日にち的に言うと、お前が浮気しているときだな」
 父さんが冷静に突っ込んできた。

 私は言い訳をする。
「いえまあ、あの時はそれが最善だと思ったのよ」
「ばかだ」
「ばかね」
 そう、両親はこの所ずっとこんな感じ。

 事あるごとに、仁君と一緒に居ればとか、彼のいう事さえ守っていればとかもうね。
「そんなに言うなら、彼を養子にでもすれば良いじゃない」
 つい言ってしまった。
 だけど……
「それは良いな」
「でも、なってくれると思う? この子の実家よ……」
 そう言って、じとっと睨まれる。
「この子さえ、馬鹿なことをしなければ……」
 そしてまた、同じことを言われ、ため息を付かれる。

 お金はないし、アパートは解約をして、実家へ戻ってくるのは確定している。
 通勤時間は、三十分ほど延びるけれどその方が安い。


「女がでてこない」
 二時間経っても、三時間経ってもでてこない。
「あの女、そんなに良いの? 延長するなんて」
 私がこんなにやきもきしているのに、待っている間、出てこなかった。

 でも行くたび出会う。
 ゴミ出しまでしてる。
 横で並び嬉しそうな彼の顔。
 犬っころのように、後ろをちょろちょろと付いていく女。

 高そうな服。
 完璧な化粧。
 ひょっとして、一年しか経っていないのに、もうあんな女と付き合っている?
 仁の浮気者ぉ……
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