泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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最悪の人生、その時に -新しい年、新しい自分、変わる切っ掛けは…… 一つの出逢い- 短編用

第7話 絡み合う

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「そんな、ひどい……」
 話した後、彼女はそうこぼす。

「さっき廃屋の前で君は何を考えた? 十年も前のことで、未だに俺も家族も苦しんだ。まあこの前、家族は事故で死んだが…… そんな、ひどく、むごいことを、君は自分が楽になるためだけに…… しようとしたんだ。高校の時に俺にそんな事をした紙工 麻依しこう あさいと言う最悪女と、どこが違う? そんな君を、誰が救おうと思うんだ?」
 そう言いながら、記憶も怒りもすっかり忘れていたことに気がついた。
 無論フラッシュバック的に、怒りはわき上がる。だがその時間は、確かに短くなっている。 

 かと言って、なかったことにはならない。
 この手のことは、騙されたとき以降、被害者が負う社会的損失は数億では収まらない。
 やった方は、『たいした金額じゃないし良いじゃ無い。』

 軽い感じでそう言うが、その奥に潜む損失は膨大なモノとなる。
 やられた方は、懲戒免職からがすべての始まり。
 職を失い、退職金は消え、年金、家族、統べてが消え、慰謝料が奥さん辺りから請求され、新たな職はなく、苦しみながら生きていくか、世を儚むか、世を恨む。
 それこそ数人巻き添えにして、襲ってしまうかもしれない。

 まあそれでも普通の神経をしていれば、ただ苦しみながら生きていく。
 その日、その時に、居合わせたというのが、どのくらい重い罪なのか。
 そんな事を思いながら。

 騙した加害者に見えるのは、たかだか数万円から数十万円。
 ちょっと真面目に働けば、稼げる金額。

 それを楽するために、人の人生を軽々けいけいにぶっ壊す。
 たまったもんじゃない。

 確かに痴漢がいて、被害者がいる。
 大変なことだ。
 だが、無実の人間を犯人にして、人生をぶっ壊すのはどうだ?
 痴漢された事で、一生苦しみ悩む?
 だが痴漢をしたことにされた人は、苦しまず一生悩まないのか? 証拠を出せば良い? 口で幾ら言っても誰も信じないのに、どうやって? していないことを証明をするのは二十四時間、自分を見張っていて貰わない限り、できやしない。
 
 そんな心の中を、彼女に愚痴っていく。
「あんた達が思いついた金稼ぎ、そいつは最悪な行為だ。まあ今考えたら、あの時誰も味方はいなかった。親ですらな。後日立野 獰意たちの どういと言う男と仕組んだ狂言だったのが判ったようだが、学校からは、何の言葉もなかったし、金も、示談書もどうなったのか知らない」
「ごべんなざい」

 彼女は目の前で土下座状態。
 全く以て、彼女と同じ発想、向こうが二十万程度で、こちらが一千万。
 余計に質が悪い。

 そう、彼女がやろうと思ったことを、客観的に…… 過去にそれを受けた被害者からの生の言葉で聞く、それは……
 文美に響いた。

 彼女は、金には困っているが、普通の常識がある。
 彼の言ったことを、想像できるし理解できる。

「だがまあ、君がいま困っていることは判った。たかだか一千万で死ぬことはない」
 笑顔ではない。少し困った顔で彼は告げる。
「えっ、でぼう」
 彼女の顔は、涙と鼻水でぐしゃぐしゃだ。

「看護師の資格があるなら、給料もそこそこ出るだろうし、すぐ返せるだろう。個人対個人だ金利も要らん」
「でぼう、わだじあにゃたを、だみゃぞうどじだのじぃ」
「ああ、そこで踏みとどまっただろう。やっていたら、そうだな弁護士を十人くらい雇って追い込む。そして金に困っていたことはすぐ判るからな。詐欺罪で逆に告訴かな」
「ごべんなさい」

 つい彼にすがりつき、彼女は泣いた。
 冬先の服をどべどべにして……

 その後に仲居さんが声をかけて入ってくるが、対応するために出てきた彼の服は何やら濡れているしぐしゃぐしゃだし、奥からは女の泣き声。
 ヤリやがったなと、警戒レベルが跳ね上がる。

 速やかに、おかみさんへと報告が行く。
「お食事の時に、女性の顔を見て判断。嬉しそうだったら、痛かっただけ、特別にお赤飯を炊きましょう」
「辛そうだったら?」
「お声がけして、確認が出来たら通報、責任は取らないけれど救出はするわよ」
「らじゃーです」

 そんな会話がなされた。

 そんな事は知らず、聞いていた振込先へ金を振り込んでいく。
 問題は金を作るために、彼女は携帯も売っていた。
 電話をするが、一月二日には取り立て屋も仕事をしていないようだ。
「仕事しろやこら。まあいい、銀行の振り込みデータはある、何らかアクションはあるだろう」
「ありがとうございます」
 そう言ってまた、文美は冬先の体にすがりつき抱きしめてくる。

 涙と鼻水でマーキング。
 さっき聞いた食事時間は、十八時からだと言った。
 まだ十六時、時間はある。
 涙かよだれか、肌に感じるほどにしみ込んできた。

「いい加減離れてくれ、俺は風呂に入って着替える。言い忘れたが十八時には食事になるそうだ」
「ふえっ、ふぁい」
 そう言って彼女は、やっと部屋を出ていった。


 話を聞いて、大変な人生を送って来た人だと理解をした。
 私の方は、さっきの振り込みで多分大丈夫。
 今度は私が…… 今度は彼に何かをしてあげたい。
 かの女の気質は……
 思い立てば行動。

 そして思い出す。
 いやじゃ無ければ、お家に上がり込んで家政婦をして、そこからお仕事へ行けば。
 そう家賃が払えず、解約となるなら、彼への御礼も出来るし私も助かる。
「問題は、彼の趣味。私で我慢をしてくれるかが問題。この十年近く、誰からの愛もなく暮らしてきた人…… かわいそう」

 そう考えた彼女は、服を脱ぎお風呂場へ突入。
 彼を襲う。

「なっどうした?」
 当然あわてる。

「気にしないで、御礼です」
 そう言いながら、彼女は彼を押し倒し、彼の上に乗る。
 冬先も男の子。
 目の前に裸の女の子、勝手に反応をする。


「思ったより、痛いです……」
 ゆっくり、じわじわとやっているようだが、彼女も初めて。

「それは、すまないと言った方が良いのか?」
 流石に冬先も呆れてしまう。
 驚く以外何も出来なかった。

「慰謝料とか言うなよ」
「言いません、でも、家も追い出されているんです。エッチもOKです。家事もしますので置いてくれませんか? ほら、お金を返すか心配でしょ?」
 それを聞いて、冬先は考える。

 今現在、まだ繋がっている途中。
 彼女が痛がるから動けない。
「それはプロポーズか?」
「えっあれ?」
 そう言われて、いきなり真っ赤になる彼女。
 良い感じに、力も抜けたようだが……
 慣れていないから、冬先も果ててしまう。

 彼女が、腰の上に乗っているから、動けなかった。
「あっ」
「えっ? あっ……」
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