泡沫の夢物語。-男と女の物語。短編集-

久遠 れんり

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人の縁とは不思議なもの

第1話 折節(をりふし) 

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「薫風で めざめとともに 気づきあり いとおかしくて 天をあおぐなり」
 ええええええっ? 言っている場合かぁ……

 しっかりと体に違和感? 感覚がある。
 やっちゃったのねぇ。
「でへへへへっ」


 田中 導希たなか みき。二十四歳。
 身長百五十八センチ。童顔というかかわいい系かなぁ。
 仕事をするのに、髪はミディアムで毛先だけ軽く巻いてある。

 バストはアンダー六十九センチで、トップ八十五センチ。
 そう性格に合わせて控えめな体型。
 ウエスト六十四センチでヒップ八十五センチ。
 控えめでしょ……

 経理系の短大をでて、大学がお勧めする中…… 小回りがききそうな会社へ就職。

 それは、お父さんが心配で家から出たくなかったから。
 お母さんが、中学生の時に「私は広い世界に出ていく」そんな謎の言葉と離婚届を置いて出て行った。

 近所のおばさんが言うのは、幾人か付き合っていたみたいだけれど、最近きていた羽振りのいい人に決めたのね。
 なんて言うことを、聞きたくもないのに教えてくれた。

 お父さんは、真面目だけが取柄で、可も無く不可も無く身長が百七十センチくらいで、ものを取るときに便利。

 だけど、家のことと仕事。
 無理をしてくれたのだと思う。

 就職をして、その夏から秋にかけて体調を崩していた。
 そう、肺炎かと思ったらガンが見つかる。
 それから宣告通りの半年では死なず五月に入って「実質勝ちだ」そんな事を言いながら息を引き取った。
 そう……
「花嫁姿でも見れれば良かったのだが、お前の人生。好きに生きなさいと」
 そんな言葉を言いながら……
 少し悲しそうな顔で、そんな言葉を残した。

 言いたくないけれど。
 確かにモテたこともないけれど。
 結婚をしたくないとか、全く考えていないし、高校の時に誰とも付き合わなかったり色々あったのは、色々とあったのよ。

「そう私だって、モテようと思えばモテる。きっと…… 多分。だから安心してよ。お父さん」
 そんな事を、ブチブチ言いながらお墓の前。
 お葬式の時はただ必死でゆっくりできなかった。
 四十九日まではまとめてできるというのでお願いして、だけど一週間で淋しくてきてしまった。
 

 母の葬儀が終わった後に注文をした、卒塔婆立てが届き再びやって来た。
 今まではあまり来ることがなかったのだが、この短時間に二回もやって来るとは思わなかった。

 墓に彫られた『田中家』の文字。
 俺は田中 憲雄たなか のりおなんていう、どこにでも居そうな名前。

 父親が事故で早く死に、母さんが一人で育ててくれた。
 まあ、慰謝料があるから大丈夫とは言っていたのだが。
 小学校高学年? いや、中学校の時だったか? あれ? そう言えば葬式の記憶が無いな。辛いからと遺影もなかったし……?



 ―― 母さんは疲れていたのか、急いでいたのか、自分の自転車とともに川へ転落をしていた。買い物も散乱をしていたから、事故だろうと言われた。

「まったくもう。向こうでは神さまに迷惑をかけるなよ」
 母さんは色々伝説を残した。

 学校で、部活の応援とかという、奇妙な授業があったときには弁当が必要だった。
 タッパーを開けると、ご飯と卵焼き。
 そしてご飯の上に、ゴメンとの文字が海苔で書かれていた。
「それって達筆ねぇ」
 覗き込んだクラスメイトが言うように、流麗な筆文字で書かれていた。
 これを作っている間に、二・三品は作れたのじゃないかと思う。

 そうそう、ご飯とごま塩。桜デンプとウインナーで、砂浜が表現されていたときもあった。そう手間を掛けた割にまともな弁当が作れない。
 綺麗な、カニさんやイカさんが踊っていたのだが、それ以外は真っ白なご飯だった。

 そう、息子から見ても不思議な人だったのだが、不思議な事故で死んでしまうとは……


 大学に入ってからは、なぜか一人暮らしを強要されたから料理も出来るようになったし、ついでに居酒屋さんでアルバイトをして、料理の幅が増えた。


「さてと…… この古い卒塔婆とか卒塔婆立てはどうしたらいいんだろう」
 お坊さんに聞いておけば良かった。
 とりあえずは、お墓の隅にまとめておいておく。

 俺は立ち上がり歩き始める。
 女の人がさっき、何かものすごく一生懸命拝んでいた墓も『田中家』だ。

 この霊園には、田中家が多い。
 今はすっかり落ちぶれたが、母の実家が本家で、この周囲の墓は分家だそうだ。
 だけど、数個離れるともう他人だな。
 系図でもあれば分かるが、母も完全には知らなかったようだし、母さんはあんな感じだから祖父達が教えなかったのかもしれない。


 そうして俺は、遺品の整理を行い始めて、衝撃の事実を知る。

 隠されていた母の手帳。
 死んだと思っていた父親は、浮気を理由に追い出されていた……
 そして最近、母につきまとい。金の無心をしていたこと……

 遡った日記には、とんでもない事が書かれていた。
 家の都合で結婚をしたが、彼は性格的にも合わないし尊敬もできない。
 周りは早く子どもを作れとやかましいから、あの人の元を訪ねてお願いをする。

 アリバイのために抱かれるのが苦痛……
 でも、上手く行ったと思う。
 この子は、あの人。
 京哉兄ちゃん。
高橋 京哉たかはし きょうやのこどもだわ。

 『あこがれだったあの人。今、本当に幸せ……』
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