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第四章 経済共和制の国
第56話 お勉強
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「ありがとうございます」
夕食とお湯を受け取る。今日は早めだから、絡まれることも嫌な目を向けられることなく、宿の部屋へ入った。
振り返ると、すでにテレザは脱ぎ始めていた。
「あー分かった。体を拭こう」
そうして拭き合っていると、シルヴィが思いついたように言い始める。
「お風呂が付いた、お家が欲しいですね」
「あーあれ。気持ちよかったよねぇ」
「そうだが、ある程度したら、西にある港へ行きたいしな。ここには興味で寄っただけだし」
「そうですね、チトセに帰ってからの楽しみにしましょうか」
シルヴィがそう言うので、思わず言ってしまう。
「チトセの家には、すでに風呂がある」
そう言うと、二人の尻尾がぶんぶんと振られる。
「さすがです」
シルヴィに抱きつかれる。
裸だと、あれだな、まだ慣れないな。
この世界。基本的に、スキンシップは多いのだが。
「じゃあ、帰ってからのお楽しみだな」
「「はい」」
テレザが何故かクルクルと踊り出した。
「嬉しいのは分かるが、下に響く。踊るな」
「はーい」
それから食事を取り、お茶を飲みながら地図を眺める。
ぱっと見た感じ、六方向に向けて放射線状にダンジョンは広がっていく。
その中で、下へ降りる通路と、行く先の書かれていない枝道。
基本下へ降りるのが優先なので、そこから周囲へ探査は広がる。
人の多い、一層目でも同じはず。
「うーん、二層目の地図も欲しいな。重ね合わせて繋がりが見たい」
「繋がりですか?」
「そう。原初の呪いは、多分シンクホールと呼ばれる浸食による穴だろう。ダンジョン部分が、何故ダンジョン化したのかは分からないが、今日入った感じ、あの地層全体が石灰石だと思う」
「石灰石? 浸食ですか?」
「そうだ、ずっと流れる水の力により、土は削られ、ひび割れが大きな洞窟になる」
「そうなんですね」
シルヴィが驚く。そういう概念がないのかもしれない。むろん一部は知っているだろうが、一般にまで広がっていないのか?
「ひょっとすると下へ降りるところは、崩落で埋まっているだけで、元は縦穴型洞窟かもしれない。すると、底を壊せばそのまま下へ行けそうだが、下に人がいると危なそうだ」
「えーと、どういうこと?」
テレザが首をひねる。
「原初の呪いは、呪いじゃないかもしれない」
「「えっ」」
二人が驚く。
「こんな風に、地下に水の流れがあって、弱いところが順に崩れ始める。すると地下から段々と地上に向かって、その崩れた空間が伸びていく。そしてある日突然、轟音とともに地上に大きな穴ができあがる。昔の人がこれは邪神の呪いだと思ったのかもしれない。問題は、周囲がダンジョン化している事だが、地下に邪神の影響を受けた魔力が流れる流れが本当にあるのかもしれない。それが、穴が開いたことにより吹き出している。そう考えると、一応はつじつまが合いそうだけれど、どうかなあ?」
「それでは、恐れるものではないと」
「そうだね」
「色々理解ができませんが、先ほどの穴のでき方は理解できました。ですが、途中の石灰石というのは何でしょうか?」
シルヴィが聞いてくる。いいねぇ。疑問に貪欲なのは良い。
「石灰石は、主成分は炭酸カルシウム。昔この辺りが海だったと言うことだ」
「「海? 」」
二人同時に、驚く。
と、言うことは、海を知らない? すると幾度か言った港というのも地名と勘違いをしている可能性があるな。
「海はね、生命の母なる存在。大きな水の溜まったもの」
「水ですか?」
「そう。土から流れ出した、ミネラルや塩類が溶けていて栄養豊富でしょっぱい。とてもね。さっき言ったカルシウムの説明と合わせると、海の中に珊瑚とか貝とかカルシウムを利用する生き物がいる。人間達生き物も、骨の主成分にカルシウムが使われている。これが、海の底に溜まり石灰石の分厚い層ができる。何億年も掛けてね。地殻変動と言って地面が動き、海より高くなったのが此処の土地。途中にあった山脈部分がプレートと言って地面がぶつかっている部分で、多分今でも高くなっていると思うよ。実際高くなっても水に浸食されたり崩落して、変化は少ないかもしれないけどね。そうそう、海から取れるお塩、しょっぱいだろう」
そう言うと、分かったようだ。
「あの? 地面は、動くのですか?」
「地震は起きないの?」
「あー。お父さん達が子どもの頃に、地面がかなり揺れて邪神が起き掛かっていると、大騒ぎがあったそうです。その頃丁度奇妙な雲が現れたり、冬の雪が多く、多くの人が亡くなったと」
「そうなんだ、でも雪とか雲はどうかな?」
紙を使って説明をする。
此処がチトセ、これが山、そう言いながら山を書いた紙の端っこを少し山折りにしてチトセ側を、紙の裏側、谷折り部分に挟み込む。
「こっちの南側が共和国で、そっちの紙が王国。つまり、この紙が双方の大陸で、何もない紙の端、つまり海側から押されると、チトセとか山がある、この繋がっている部分に向けて力が掛かる、すると」
真ん中で、山折りにして繋いでいる紙の部分がぴょこんと高くなる。
「これが地面の隆起。この共和国全体は、海からこの山脈に向けて移動して地面が海より高くなった。この土地を作っている石灰石は、水に溶けやすいんだ。そのために雨で削られて穴が開いた。」
「そうなんですね」
シルヴィは目をキラキラさせて聞いているが、テレザはこっくりとし始めた。
夕食とお湯を受け取る。今日は早めだから、絡まれることも嫌な目を向けられることなく、宿の部屋へ入った。
振り返ると、すでにテレザは脱ぎ始めていた。
「あー分かった。体を拭こう」
そうして拭き合っていると、シルヴィが思いついたように言い始める。
「お風呂が付いた、お家が欲しいですね」
「あーあれ。気持ちよかったよねぇ」
「そうだが、ある程度したら、西にある港へ行きたいしな。ここには興味で寄っただけだし」
「そうですね、チトセに帰ってからの楽しみにしましょうか」
シルヴィがそう言うので、思わず言ってしまう。
「チトセの家には、すでに風呂がある」
そう言うと、二人の尻尾がぶんぶんと振られる。
「さすがです」
シルヴィに抱きつかれる。
裸だと、あれだな、まだ慣れないな。
この世界。基本的に、スキンシップは多いのだが。
「じゃあ、帰ってからのお楽しみだな」
「「はい」」
テレザが何故かクルクルと踊り出した。
「嬉しいのは分かるが、下に響く。踊るな」
「はーい」
それから食事を取り、お茶を飲みながら地図を眺める。
ぱっと見た感じ、六方向に向けて放射線状にダンジョンは広がっていく。
その中で、下へ降りる通路と、行く先の書かれていない枝道。
基本下へ降りるのが優先なので、そこから周囲へ探査は広がる。
人の多い、一層目でも同じはず。
「うーん、二層目の地図も欲しいな。重ね合わせて繋がりが見たい」
「繋がりですか?」
「そう。原初の呪いは、多分シンクホールと呼ばれる浸食による穴だろう。ダンジョン部分が、何故ダンジョン化したのかは分からないが、今日入った感じ、あの地層全体が石灰石だと思う」
「石灰石? 浸食ですか?」
「そうだ、ずっと流れる水の力により、土は削られ、ひび割れが大きな洞窟になる」
「そうなんですね」
シルヴィが驚く。そういう概念がないのかもしれない。むろん一部は知っているだろうが、一般にまで広がっていないのか?
「ひょっとすると下へ降りるところは、崩落で埋まっているだけで、元は縦穴型洞窟かもしれない。すると、底を壊せばそのまま下へ行けそうだが、下に人がいると危なそうだ」
「えーと、どういうこと?」
テレザが首をひねる。
「原初の呪いは、呪いじゃないかもしれない」
「「えっ」」
二人が驚く。
「こんな風に、地下に水の流れがあって、弱いところが順に崩れ始める。すると地下から段々と地上に向かって、その崩れた空間が伸びていく。そしてある日突然、轟音とともに地上に大きな穴ができあがる。昔の人がこれは邪神の呪いだと思ったのかもしれない。問題は、周囲がダンジョン化している事だが、地下に邪神の影響を受けた魔力が流れる流れが本当にあるのかもしれない。それが、穴が開いたことにより吹き出している。そう考えると、一応はつじつまが合いそうだけれど、どうかなあ?」
「それでは、恐れるものではないと」
「そうだね」
「色々理解ができませんが、先ほどの穴のでき方は理解できました。ですが、途中の石灰石というのは何でしょうか?」
シルヴィが聞いてくる。いいねぇ。疑問に貪欲なのは良い。
「石灰石は、主成分は炭酸カルシウム。昔この辺りが海だったと言うことだ」
「「海? 」」
二人同時に、驚く。
と、言うことは、海を知らない? すると幾度か言った港というのも地名と勘違いをしている可能性があるな。
「海はね、生命の母なる存在。大きな水の溜まったもの」
「水ですか?」
「そう。土から流れ出した、ミネラルや塩類が溶けていて栄養豊富でしょっぱい。とてもね。さっき言ったカルシウムの説明と合わせると、海の中に珊瑚とか貝とかカルシウムを利用する生き物がいる。人間達生き物も、骨の主成分にカルシウムが使われている。これが、海の底に溜まり石灰石の分厚い層ができる。何億年も掛けてね。地殻変動と言って地面が動き、海より高くなったのが此処の土地。途中にあった山脈部分がプレートと言って地面がぶつかっている部分で、多分今でも高くなっていると思うよ。実際高くなっても水に浸食されたり崩落して、変化は少ないかもしれないけどね。そうそう、海から取れるお塩、しょっぱいだろう」
そう言うと、分かったようだ。
「あの? 地面は、動くのですか?」
「地震は起きないの?」
「あー。お父さん達が子どもの頃に、地面がかなり揺れて邪神が起き掛かっていると、大騒ぎがあったそうです。その頃丁度奇妙な雲が現れたり、冬の雪が多く、多くの人が亡くなったと」
「そうなんだ、でも雪とか雲はどうかな?」
紙を使って説明をする。
此処がチトセ、これが山、そう言いながら山を書いた紙の端っこを少し山折りにしてチトセ側を、紙の裏側、谷折り部分に挟み込む。
「こっちの南側が共和国で、そっちの紙が王国。つまり、この紙が双方の大陸で、何もない紙の端、つまり海側から押されると、チトセとか山がある、この繋がっている部分に向けて力が掛かる、すると」
真ん中で、山折りにして繋いでいる紙の部分がぴょこんと高くなる。
「これが地面の隆起。この共和国全体は、海からこの山脈に向けて移動して地面が海より高くなった。この土地を作っている石灰石は、水に溶けやすいんだ。そのために雨で削られて穴が開いた。」
「そうなんですね」
シルヴィは目をキラキラさせて聞いているが、テレザはこっくりとし始めた。
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