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16 その笑顔に酔いしれて
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私は、ため息をついてしまいます。
「本当に、もう……」
普段は威厳溢れるラングリフ様ですが、部下にはこうも砕けてしまうのです。
ですが、それもこの人の魅力の一つであることを知る私は、強く出られません。
全く、惚れた弱み、というのはこういうことをいうのでしょうね。
「ってワケで団長、ちょっと俺の話し相手になってくださいよぉ~。さっきから御令嬢さん達が話しかけてきてマジうっと~しいですよぉ~!」
「おまえがこれから貴族としてやっていけるのか、急に不安になってきたぞ……」
私が見ている前で、また二人が話し始めました。
レントさんを応援することも目的だったので、これはこれでよしでしょうか。
ラングリフ様も面倒げに見えて、あれは確実に楽しんでますね。
少し前から、表情を変えない彼の気持ちが、少しわかるようになってきました。
「もし、そちらの御婦人」
私が会話する二人を眺めていると、急に男性に声をかけられました。
「はい?」
くるりと振り返ると、そこには三人の青年が並んでいます。
私の顔を見るなり、彼らは「おお……」と小さくどよめきました。何でしょう?
「お初の目にかかる。私はクラヴィル伯爵家の嫡男レイオットと申します」
まとめ役らしき銀髪の青年――、レイオットさんが私に向かって一礼します。
「えぇと、はい。あの、私に何か……?」
「お一人で寂しそうにしていらしたので、話し相手になるべく参上した次第」
「私と、お話を……?」
いまいちピンと来ずに首をかしげると、三人はまた驚いた風な顔をしました。
そして、何事かヒソヒソと話し、レイオットさんがまたこちらに向き直ります。
「麗しき方、どうかあなたの貴重なひとときを、私共にお預けいただけませんか」
彼は、やけに芝居がかった身振り手振りで私にそんなことを言ってくるのです。
えっと、これってもしかして、私がこの方々にお誘いを受けて――、
「ならぬ」
声は、すぐ後ろからしました。
「うわッ!」
レイオットさんが仰天し、大きくのけぞります。傍らにいる二人も同様でした。
「おまえ達、この御婦人を我が妻と知った上で声をかけたのか?」
「……ラングリフ様」
「ひ、ラ、ラングリフ殿下にあらせられますか……!?」
不機嫌そうな雰囲気を纏わせたラングリフ様に睨まれて、レイオットさん達三人が一様に顔色を青くします。周りの方々も、何事かとこちらを見ます。
「彼女は我が妻たるリリエッタである。おまえ達はを知った上で声をかけたのか」
私を庇うようにして前に立ち、ラングリフ様が三人を睨みつけます。
その眼力に圧倒された様子の彼らは、ブンブンと勢いよくかぶりを振ります。
「いえいえ、滅相もございません! 臣下である我々がそのような無礼を働くわけがないではありませんか! ただ、奥方様の笑顔がまばゆいほどに素敵であらせられましたので、それで声をかけてしまったのでございます!」
「ぉ、おい、それはぶっちゃけすぎ……!」
「何だ、本当のことを言っただけじゃないか! 実際、見惚れてただろう!」
三人は、慌てふためきながら互いにそんなことを言い合っていました。
それを聞いたラングリフ様は、ジッと三人の睨み据えて、
「ほほぉ、我が妻の笑顔に見惚れたと、おまえ達はそう申すのだな?」
「うぅ、その通りです……。あの、本当に殿下の奥方とは知らずに……」
「それは、別によい」
「え、いいんですか……?」
え、いいんですか……?
レイオットさんの驚きの声と私の胸中の呟きが、見事に重なりました。
「それより、リリエッタの笑顔がおまえ達にはどのように映ったかを知りたい。世辞はいらん。本音のみを語って欲しい。教えてくれれば、この場は見逃そう」
「……ラングリフ様!?」
な、何を言われるのですか、この人はッ!
「許せ、リリエッタ。君の笑顔の美しさをこの世で最も知っているのは俺で、独占したいという思いもある。だが同時に、他者に自慢したいという欲もあるのだ!」
「や、やめ、やめてくださいッ!」
急に何を言い出すのです、この人。本当に、何を言い出してるんですか!
「え、え~? そうですね……。率直に言わせていただきますと、見ていて心の濁りが除かれていくような、とても純粋で透き通った笑顔でした。目にしたこちらが同じように笑顔にさせられてしまう、とでも申しましょうか……」
「うむ、うむ。わかっているじゃないか」
「ラングリフ様、腕組みして深々とうなずかないでくださいませ!」
あああああああ、騒ぎに気づいた方々がどんどん周りに集まってきています。
視線が、数多の視線が私に集中しています。
今さら注目なんてされたって、恥ずかしさに顔を赤くすることしかできません。
いつの間にか、レントさんもいなくなっています。
逃げましたね、あの人!
「本当に、もう……」
普段は威厳溢れるラングリフ様ですが、部下にはこうも砕けてしまうのです。
ですが、それもこの人の魅力の一つであることを知る私は、強く出られません。
全く、惚れた弱み、というのはこういうことをいうのでしょうね。
「ってワケで団長、ちょっと俺の話し相手になってくださいよぉ~。さっきから御令嬢さん達が話しかけてきてマジうっと~しいですよぉ~!」
「おまえがこれから貴族としてやっていけるのか、急に不安になってきたぞ……」
私が見ている前で、また二人が話し始めました。
レントさんを応援することも目的だったので、これはこれでよしでしょうか。
ラングリフ様も面倒げに見えて、あれは確実に楽しんでますね。
少し前から、表情を変えない彼の気持ちが、少しわかるようになってきました。
「もし、そちらの御婦人」
私が会話する二人を眺めていると、急に男性に声をかけられました。
「はい?」
くるりと振り返ると、そこには三人の青年が並んでいます。
私の顔を見るなり、彼らは「おお……」と小さくどよめきました。何でしょう?
「お初の目にかかる。私はクラヴィル伯爵家の嫡男レイオットと申します」
まとめ役らしき銀髪の青年――、レイオットさんが私に向かって一礼します。
「えぇと、はい。あの、私に何か……?」
「お一人で寂しそうにしていらしたので、話し相手になるべく参上した次第」
「私と、お話を……?」
いまいちピンと来ずに首をかしげると、三人はまた驚いた風な顔をしました。
そして、何事かヒソヒソと話し、レイオットさんがまたこちらに向き直ります。
「麗しき方、どうかあなたの貴重なひとときを、私共にお預けいただけませんか」
彼は、やけに芝居がかった身振り手振りで私にそんなことを言ってくるのです。
えっと、これってもしかして、私がこの方々にお誘いを受けて――、
「ならぬ」
声は、すぐ後ろからしました。
「うわッ!」
レイオットさんが仰天し、大きくのけぞります。傍らにいる二人も同様でした。
「おまえ達、この御婦人を我が妻と知った上で声をかけたのか?」
「……ラングリフ様」
「ひ、ラ、ラングリフ殿下にあらせられますか……!?」
不機嫌そうな雰囲気を纏わせたラングリフ様に睨まれて、レイオットさん達三人が一様に顔色を青くします。周りの方々も、何事かとこちらを見ます。
「彼女は我が妻たるリリエッタである。おまえ達はを知った上で声をかけたのか」
私を庇うようにして前に立ち、ラングリフ様が三人を睨みつけます。
その眼力に圧倒された様子の彼らは、ブンブンと勢いよくかぶりを振ります。
「いえいえ、滅相もございません! 臣下である我々がそのような無礼を働くわけがないではありませんか! ただ、奥方様の笑顔がまばゆいほどに素敵であらせられましたので、それで声をかけてしまったのでございます!」
「ぉ、おい、それはぶっちゃけすぎ……!」
「何だ、本当のことを言っただけじゃないか! 実際、見惚れてただろう!」
三人は、慌てふためきながら互いにそんなことを言い合っていました。
それを聞いたラングリフ様は、ジッと三人の睨み据えて、
「ほほぉ、我が妻の笑顔に見惚れたと、おまえ達はそう申すのだな?」
「うぅ、その通りです……。あの、本当に殿下の奥方とは知らずに……」
「それは、別によい」
「え、いいんですか……?」
え、いいんですか……?
レイオットさんの驚きの声と私の胸中の呟きが、見事に重なりました。
「それより、リリエッタの笑顔がおまえ達にはどのように映ったかを知りたい。世辞はいらん。本音のみを語って欲しい。教えてくれれば、この場は見逃そう」
「……ラングリフ様!?」
な、何を言われるのですか、この人はッ!
「許せ、リリエッタ。君の笑顔の美しさをこの世で最も知っているのは俺で、独占したいという思いもある。だが同時に、他者に自慢したいという欲もあるのだ!」
「や、やめ、やめてくださいッ!」
急に何を言い出すのです、この人。本当に、何を言い出してるんですか!
「え、え~? そうですね……。率直に言わせていただきますと、見ていて心の濁りが除かれていくような、とても純粋で透き通った笑顔でした。目にしたこちらが同じように笑顔にさせられてしまう、とでも申しましょうか……」
「うむ、うむ。わかっているじゃないか」
「ラングリフ様、腕組みして深々とうなずかないでくださいませ!」
あああああああ、騒ぎに気づいた方々がどんどん周りに集まってきています。
視線が、数多の視線が私に集中しています。
今さら注目なんてされたって、恥ずかしさに顔を赤くすることしかできません。
いつの間にか、レントさんもいなくなっています。
逃げましたね、あの人!
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