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第7話 俺はトレーナーのコージンだっつってんだろ!
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勝利宣言後、プロミナは深く深く、息を吐いた。
さすがに怖かったんだろう。よく見れば、膝が細かく震えている。
まさに、一瞬の勝負だった。
ガルンドルの一刀十爪がプロミナの刃の軌道上に重なるごく短い刹那。
それを見逃さず、ぶっつけ本番で諸共に斬り飛ばした。
天性の勝負勘がなければ成立しえなかった、奇跡に近い一閃。
極度の緊張の中、プロミナはそれをモノにした。
よくやった。
よくがんばったぞ、プロミナ。
「プロミナ……」
俺は、彼女にねぎらいの言葉をかけようとした。しかし、それより先に、
「――ごめんなさいッ!」
プロミナは、ガルンドルに向かって深々と頭を下げていた。
「あなたは、違う。私の家族の仇は、あなたじゃない! なのに、ごめんなさい!」
声を張り上げ、彼女はそう謝った。
そうか、俺が言わずともおのずから気づくことができたか。大した子だ。
「……んにゃ、ワシの方こそ悪かったわい」
曲刀の残骸を背の鞘に納め、ガルンドルが振り返って詫び返す。
「おんしと立ち合いたいばっかりに、無理に煽ってしもうたわ。許せ」
敗れた竜人剣士もまた、プロミナに頭を下げる。
こいつは、プロミナが追いかけてる家族の仇じゃない。
彼女に仇呼ばわりされたとき、ガルンドルが一瞬だけ見せた呆けたような顔つき。
あれは、完全に『知らないことを言われたときの表情』だった。
俺はそこでガルンドルが仇じゃないと気づいたが、プロミナはどこで察したのか。
「思い出したの、私の家族の仇。竜人だったけど、角の片方が折れてたわ」
「なるほど、それで気づけたのか」
まぁ、でも同じ蒼い鱗の竜人で、剣士で、となれば勘違いも致し方なし。
なお謝るプロミナに、ガルンドルも「もうええわい」と軽々笑い飛ばそうとする。
「きっかけはどうあれ、ワシとおんしは剣士として堂々と立ち合った。違うか?」
「違わない。あなたから得た勝利を、私はこれから、誇っていくわ」
「うむ! ならばよし! 貴殿に敗れたことをワシもまた誇ろう! ……あー」
「あ、名乗ってなかったわね……。私は、プロミナ。プロミナ・エヴァンス」
「そうか、プロミナか。覚えておこうぞ、暁の剣士プロミナよ!」
「暁の、剣士……?」
「うむ。ほれ、こう、剣が光ってたじゃろ、太陽の色に。だから暁の剣士じゃ」
ガルンドルが言うと、プロミナはしばし「暁、暁の剣士……」と呟いて、
「うん、じゃあこれからそう名乗らせてもらうわ。ありがとう、ガルンドル!」
嬉しそうに、そう笑うのだった。
「気に入ってもらえたなら幸いじゃ。……っくぅ~、しっかし悔しいのぉ! 長い修行の末に辿り着いた、我が一刀十爪。まさか、真っ向勝負で後れを取るとは!」
「あ~、いや、それしか勝ち筋がなかったっつ~か……」
地団駄を踏むガルンドルに、つい俺は口を挟んでしまう。
すると、竜人がこっちに気づいて顔を向けてくる。
「そういえば何じゃい、そこのジャリは」
「その人は、私の先生よ。ガルンドルとの戦い方も、この人が教えてくれたの」
「なぬぅ~~~~!?」
プロミナの答えを聞いて、気色ばんだガルンドルが俺へと詰め寄ってくる。
「おうおうおうおう! つまりおんしがワシの一刀十爪をぶっ潰してくれたっちゅうことじゃのう! 何じゃあ! どんな作戦をプロミナに伝えたんじゃあ! 後学のために教えてくれんさいやぁ! 何なら頭下げるわい、だから教えんかい、コラァ!」
「上からなのか下からなのかわかんねぇ頼み方してくんじゃねぇ! 教えるから!」
まぁ、元々プロミナにはキチンとのちのち説明するつもりではあった。
いい機会だから、この場でそれをするとしよう。
「まず、俺はプロミナに伝えた作戦は『真正面からブチ破れ』。それだけ」
「え、それだけなんか……」
「そう、それだけなのよ。本当に。マジで」
絶句するガルンドルの隣に来て、プロミナがうんうんうなずく。
「だってそれしか勝つ手段なかったからね。なら、そうさせるしかないだろ」
「先生、さっきも言ってたけど、勝ち筋がそれしかなかったって、どういうこと?」
どういうこと、と、言われましても。言葉通りだよ。
「プロミナは血気の使い方がまだまだ未熟だからな。立ち合いの前にも言ったが、使い続ければ一分ももたずに限界が来る。だから、長期戦は元々不可能だったんだよ」
「ああ、そっか。……そうなるわね」
「かといって奇をてらったところで、できることなんてたかが知れてる。相手は人間より強靭な肉体を持つ竜人で、リーチの差も歴然。しかも一刀十爪には隙がない」
「ほぉほぉ、わかるか! いかにも! 一刀十爪は隙を作らぬ攻防一体の絶技よ!」
「自慢してるところ悪いが、今はそれに勝った方法の説明してるから」
「がはぁっ!!?」
ガルンドルはダメージを受け、その場に崩れ落ちた。はい、放置放置。
「と、いうワケで、長期戦は無理。下手な小細工は不利。だから初手決め技よ」
「最初に最強の一撃を持ってきて、最短でケリをつけるしかなかった、と?」
プロミナがあごに手を当てて言ってくる。
ま、そういうことですな。呑み込みが早くてコージン君大助かり。
この作戦のキモは、一撃で勝負を決められるかどうか、という点にある。
だがそこについては、俺は心配していなかった。
プロミナの血気量なら、ドラゴンの上位種だろうと仕留めきれるだろうからな。
「技を放つタイミングだのの細かい部分は、プロミナに任せたよ。俺がああだこうだ口を出すより、そうした方が絶対にマシだったからな」
「……そう、なの?」
「ああ。俺と出会う以前に、君には剣士として修練してきた。戦い方については君なりのやり方が確立されてるはずだ。余計な口出しはかえって邪魔なだけだよ」
血気を使った戦い方となれば、教えることは山百個分ほどあるんだけどな。
「コージン先生」
「ん?」
「私のこと、信じてくれてたんだ……?」
何を言ってるのやら、この子は。
「君が一人前の剣士であることは、誰よりも、俺の指先が知ってる。――だろ?」
カッコつけてウインクなどしてみると、プロミナはちょっと驚き、頬を赤らめる。
「……うん。嬉しい」
彼女は言葉少なに柔らかく微笑んでうなずいた。可愛いな、オイ。
「ヌ、ヌオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!」
うお、ビックリした。
いきなりガルンドルがその場で四つん這いになって、大声をあげて泣き出す。
「何たる、何たる美しき師弟愛じゃあ! ワシァ……、心から感動してしまいましたぞオオオオォォォォォォォ! プロミナの姐御、コージン先生ィィィィィィ!」
「待てや」
いや、本当に待って。
「ちょっといいかな、竜人剣士。……何かな、その姐御と先生って?」
「ワシを弟子にしてください」
ド直球で来やがったな、この野郎。しかも土下座で。
「いや、弟子って言われてもなァ……」
「お願いします! お願いしますッ! ワシァ、強くなりたいんですわい!」
そんな突然言われても、俺は困るだけだ。
ガルンドルが面白いヤツであることは認めるが、揉みたいかと問われれば、別に。
だって、竜人種って肉体が強靭すぎて本当の意味で疲れ知らずなんだもん。
そんなヤツ揉んでも、こっちは別に楽しくないっていうか――、ねぇ?
「ガルンドルは、何でそんなに強くなりたいの?」
「よくぞ聞いてくれました、姐御! ワシァ、実は『真武』様に憧れとるんです!」
げ。
「……『真武』って、すごい昔に起きた魔族との戦争のときに、十二人いた魔王のうち九人をやっつけたっていう、伝説の武闘家よね。確か?」
「その通り! 魔法を使わず徒手空拳にて多くの魔王を討ち果たし、その功績から『武の体現者』たる『真武』と称された最強無双の武闘家キサラギ様ですわい!」
げげ。
「……キサラギ?」
「『真武』様のお名前ですのぉ! フルネームは伝わっておらんのですわ!」
「へぇ、キサラギ……」
プロミナがこっちをチラ見する。ちょっと、ちょっとお嬢さん?
「お、何ですかいのう、姐御。キサラギ様について、何かご存じで?」
そう尋ねるガルンドルに、プロミナは俺の方を指さした。
「この人、コージン・キサラギ」
「…………え?」
ガルンドルが俺を見た。プロミナも一緒に、俺を見た。
二人の視線が、俺に『まさか、そうなの?』と訴えかけてきてる。……気がした。
いや、だが待て。まだだ、まだ何とかなる。
こいつらだって確信には至っていないはず。誤魔化せる。いける。誤魔化せ、俺!
「違うよ、俺はただの趣味で冒険者のトレーナーをしてるコージン君だよ?」
「骸魔王ディスロスが三年前に復活したのはご存じですかいのう?」
「は、嘘? あいつはばっちり肉体殺したし、魂の封印だって完全なはずだぞ!?」
「ええ、真っ赤な嘘ですわい」
あ。
「……間抜けが見つかっちゃったようだね、先生」
沈痛な面持ちで告げられたプロミナの一言が、俺の心の柔らかい部分を抉った。
「ヌオオオオオオオオオ! 本物の『真武』様じゃあああああああああああッッ!」
うああああ、感極まって熱い抱擁を求めてくるな、このデカブツゥ――――ッ!?
「違ッ、違う、ち~が~う! 俺はトレーナーのコージン君だっつってんだろ!」
「いや~、これは無理だよ、コージン先生。大人しく観念しなって……」
やめてよ、プロミナ。
そんな『諦めなよ』って感じの薄い苦笑い浮かべてないで、俺を助けて!
「は~い、バカ騒ぎは一旦そこまでにしてねぇ~」
と、いきなり割り込んでくる、新たな登場人物の声。
ふと見れば、俺達三人は多数の兵士によって完全に包囲されていた。
声の主が、兵士たちの間から出てきて、俺達の前に立つ。
「とっても興味深いお話だったけど、続きはのちほどにしてくれないかしらぁ~?」
そう言って、長い金髪を掻き上げたのは、俺にとってのお得意様。
「ちょっと、お姉さんと一緒に来てもらうわよ、お三人さん?」
冒険者ギルド統括するギルド長ルクリアが、俺達に優しく笑いかけた。
さすがに怖かったんだろう。よく見れば、膝が細かく震えている。
まさに、一瞬の勝負だった。
ガルンドルの一刀十爪がプロミナの刃の軌道上に重なるごく短い刹那。
それを見逃さず、ぶっつけ本番で諸共に斬り飛ばした。
天性の勝負勘がなければ成立しえなかった、奇跡に近い一閃。
極度の緊張の中、プロミナはそれをモノにした。
よくやった。
よくがんばったぞ、プロミナ。
「プロミナ……」
俺は、彼女にねぎらいの言葉をかけようとした。しかし、それより先に、
「――ごめんなさいッ!」
プロミナは、ガルンドルに向かって深々と頭を下げていた。
「あなたは、違う。私の家族の仇は、あなたじゃない! なのに、ごめんなさい!」
声を張り上げ、彼女はそう謝った。
そうか、俺が言わずともおのずから気づくことができたか。大した子だ。
「……んにゃ、ワシの方こそ悪かったわい」
曲刀の残骸を背の鞘に納め、ガルンドルが振り返って詫び返す。
「おんしと立ち合いたいばっかりに、無理に煽ってしもうたわ。許せ」
敗れた竜人剣士もまた、プロミナに頭を下げる。
こいつは、プロミナが追いかけてる家族の仇じゃない。
彼女に仇呼ばわりされたとき、ガルンドルが一瞬だけ見せた呆けたような顔つき。
あれは、完全に『知らないことを言われたときの表情』だった。
俺はそこでガルンドルが仇じゃないと気づいたが、プロミナはどこで察したのか。
「思い出したの、私の家族の仇。竜人だったけど、角の片方が折れてたわ」
「なるほど、それで気づけたのか」
まぁ、でも同じ蒼い鱗の竜人で、剣士で、となれば勘違いも致し方なし。
なお謝るプロミナに、ガルンドルも「もうええわい」と軽々笑い飛ばそうとする。
「きっかけはどうあれ、ワシとおんしは剣士として堂々と立ち合った。違うか?」
「違わない。あなたから得た勝利を、私はこれから、誇っていくわ」
「うむ! ならばよし! 貴殿に敗れたことをワシもまた誇ろう! ……あー」
「あ、名乗ってなかったわね……。私は、プロミナ。プロミナ・エヴァンス」
「そうか、プロミナか。覚えておこうぞ、暁の剣士プロミナよ!」
「暁の、剣士……?」
「うむ。ほれ、こう、剣が光ってたじゃろ、太陽の色に。だから暁の剣士じゃ」
ガルンドルが言うと、プロミナはしばし「暁、暁の剣士……」と呟いて、
「うん、じゃあこれからそう名乗らせてもらうわ。ありがとう、ガルンドル!」
嬉しそうに、そう笑うのだった。
「気に入ってもらえたなら幸いじゃ。……っくぅ~、しっかし悔しいのぉ! 長い修行の末に辿り着いた、我が一刀十爪。まさか、真っ向勝負で後れを取るとは!」
「あ~、いや、それしか勝ち筋がなかったっつ~か……」
地団駄を踏むガルンドルに、つい俺は口を挟んでしまう。
すると、竜人がこっちに気づいて顔を向けてくる。
「そういえば何じゃい、そこのジャリは」
「その人は、私の先生よ。ガルンドルとの戦い方も、この人が教えてくれたの」
「なぬぅ~~~~!?」
プロミナの答えを聞いて、気色ばんだガルンドルが俺へと詰め寄ってくる。
「おうおうおうおう! つまりおんしがワシの一刀十爪をぶっ潰してくれたっちゅうことじゃのう! 何じゃあ! どんな作戦をプロミナに伝えたんじゃあ! 後学のために教えてくれんさいやぁ! 何なら頭下げるわい、だから教えんかい、コラァ!」
「上からなのか下からなのかわかんねぇ頼み方してくんじゃねぇ! 教えるから!」
まぁ、元々プロミナにはキチンとのちのち説明するつもりではあった。
いい機会だから、この場でそれをするとしよう。
「まず、俺はプロミナに伝えた作戦は『真正面からブチ破れ』。それだけ」
「え、それだけなんか……」
「そう、それだけなのよ。本当に。マジで」
絶句するガルンドルの隣に来て、プロミナがうんうんうなずく。
「だってそれしか勝つ手段なかったからね。なら、そうさせるしかないだろ」
「先生、さっきも言ってたけど、勝ち筋がそれしかなかったって、どういうこと?」
どういうこと、と、言われましても。言葉通りだよ。
「プロミナは血気の使い方がまだまだ未熟だからな。立ち合いの前にも言ったが、使い続ければ一分ももたずに限界が来る。だから、長期戦は元々不可能だったんだよ」
「ああ、そっか。……そうなるわね」
「かといって奇をてらったところで、できることなんてたかが知れてる。相手は人間より強靭な肉体を持つ竜人で、リーチの差も歴然。しかも一刀十爪には隙がない」
「ほぉほぉ、わかるか! いかにも! 一刀十爪は隙を作らぬ攻防一体の絶技よ!」
「自慢してるところ悪いが、今はそれに勝った方法の説明してるから」
「がはぁっ!!?」
ガルンドルはダメージを受け、その場に崩れ落ちた。はい、放置放置。
「と、いうワケで、長期戦は無理。下手な小細工は不利。だから初手決め技よ」
「最初に最強の一撃を持ってきて、最短でケリをつけるしかなかった、と?」
プロミナがあごに手を当てて言ってくる。
ま、そういうことですな。呑み込みが早くてコージン君大助かり。
この作戦のキモは、一撃で勝負を決められるかどうか、という点にある。
だがそこについては、俺は心配していなかった。
プロミナの血気量なら、ドラゴンの上位種だろうと仕留めきれるだろうからな。
「技を放つタイミングだのの細かい部分は、プロミナに任せたよ。俺がああだこうだ口を出すより、そうした方が絶対にマシだったからな」
「……そう、なの?」
「ああ。俺と出会う以前に、君には剣士として修練してきた。戦い方については君なりのやり方が確立されてるはずだ。余計な口出しはかえって邪魔なだけだよ」
血気を使った戦い方となれば、教えることは山百個分ほどあるんだけどな。
「コージン先生」
「ん?」
「私のこと、信じてくれてたんだ……?」
何を言ってるのやら、この子は。
「君が一人前の剣士であることは、誰よりも、俺の指先が知ってる。――だろ?」
カッコつけてウインクなどしてみると、プロミナはちょっと驚き、頬を赤らめる。
「……うん。嬉しい」
彼女は言葉少なに柔らかく微笑んでうなずいた。可愛いな、オイ。
「ヌ、ヌオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッッ!」
うお、ビックリした。
いきなりガルンドルがその場で四つん這いになって、大声をあげて泣き出す。
「何たる、何たる美しき師弟愛じゃあ! ワシァ……、心から感動してしまいましたぞオオオオォォォォォォォ! プロミナの姐御、コージン先生ィィィィィィ!」
「待てや」
いや、本当に待って。
「ちょっといいかな、竜人剣士。……何かな、その姐御と先生って?」
「ワシを弟子にしてください」
ド直球で来やがったな、この野郎。しかも土下座で。
「いや、弟子って言われてもなァ……」
「お願いします! お願いしますッ! ワシァ、強くなりたいんですわい!」
そんな突然言われても、俺は困るだけだ。
ガルンドルが面白いヤツであることは認めるが、揉みたいかと問われれば、別に。
だって、竜人種って肉体が強靭すぎて本当の意味で疲れ知らずなんだもん。
そんなヤツ揉んでも、こっちは別に楽しくないっていうか――、ねぇ?
「ガルンドルは、何でそんなに強くなりたいの?」
「よくぞ聞いてくれました、姐御! ワシァ、実は『真武』様に憧れとるんです!」
げ。
「……『真武』って、すごい昔に起きた魔族との戦争のときに、十二人いた魔王のうち九人をやっつけたっていう、伝説の武闘家よね。確か?」
「その通り! 魔法を使わず徒手空拳にて多くの魔王を討ち果たし、その功績から『武の体現者』たる『真武』と称された最強無双の武闘家キサラギ様ですわい!」
げげ。
「……キサラギ?」
「『真武』様のお名前ですのぉ! フルネームは伝わっておらんのですわ!」
「へぇ、キサラギ……」
プロミナがこっちをチラ見する。ちょっと、ちょっとお嬢さん?
「お、何ですかいのう、姐御。キサラギ様について、何かご存じで?」
そう尋ねるガルンドルに、プロミナは俺の方を指さした。
「この人、コージン・キサラギ」
「…………え?」
ガルンドルが俺を見た。プロミナも一緒に、俺を見た。
二人の視線が、俺に『まさか、そうなの?』と訴えかけてきてる。……気がした。
いや、だが待て。まだだ、まだ何とかなる。
こいつらだって確信には至っていないはず。誤魔化せる。いける。誤魔化せ、俺!
「違うよ、俺はただの趣味で冒険者のトレーナーをしてるコージン君だよ?」
「骸魔王ディスロスが三年前に復活したのはご存じですかいのう?」
「は、嘘? あいつはばっちり肉体殺したし、魂の封印だって完全なはずだぞ!?」
「ええ、真っ赤な嘘ですわい」
あ。
「……間抜けが見つかっちゃったようだね、先生」
沈痛な面持ちで告げられたプロミナの一言が、俺の心の柔らかい部分を抉った。
「ヌオオオオオオオオオ! 本物の『真武』様じゃあああああああああああッッ!」
うああああ、感極まって熱い抱擁を求めてくるな、このデカブツゥ――――ッ!?
「違ッ、違う、ち~が~う! 俺はトレーナーのコージン君だっつってんだろ!」
「いや~、これは無理だよ、コージン先生。大人しく観念しなって……」
やめてよ、プロミナ。
そんな『諦めなよ』って感じの薄い苦笑い浮かべてないで、俺を助けて!
「は~い、バカ騒ぎは一旦そこまでにしてねぇ~」
と、いきなり割り込んでくる、新たな登場人物の声。
ふと見れば、俺達三人は多数の兵士によって完全に包囲されていた。
声の主が、兵士たちの間から出てきて、俺達の前に立つ。
「とっても興味深いお話だったけど、続きはのちほどにしてくれないかしらぁ~?」
そう言って、長い金髪を掻き上げたのは、俺にとってのお得意様。
「ちょっと、お姉さんと一緒に来てもらうわよ、お三人さん?」
冒険者ギルド統括するギルド長ルクリアが、俺達に優しく笑いかけた。
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