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第1話 黒狐さまと狐憑き
ジェネレーションギャップ
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「黒狐さま、なんでこんなところに?」
「家に帰るために決まっておるじゃろう」
「神社に住んでいるわけじゃないんですか?」
「別にあるんじゃよ」
神社を出て、上丸大橋入口交差点を通り過ぎる。田間川が右側を走り、景色は抜群にいいのだが、道幅が狭い。自転車とすれ違う時、体を半身にしなければならないほどだった。
肩が擦れた拍子に、自分のシャツを黒髪が撫でた。微かに伝わってきた食感に、びくっとしてしまう。
黒狐さま誇らしげに髪をなでると、懐かしそうにつぶやいた。
「昔はこの倍以上はあったんじゃがのう。八尺……じゃなくて、大体2メートルくらい」
「床に髪の毛ついてますよね」
「それは心配ない。十二単の丈はそれ以上に長かった。そもそも、十二単そのものが垂髪……じゃなくて、黒髪超ロングを引き立たせるための衣装に過ぎん」
「待って、どうやって髪の手入れをしていたんですか?」
十二単は、百人一首の時代のはず。平安だっけ? 少なくとも、上水道など存在しなかったはずだ。そんな時代に、どうやって2メートル以上もある髪を綺麗に保ったのか。
「確か……小豆の粉末を溶かしたものや、米のとぎ汁をタオルに浸して、それで拭いてケアしていたはずじゃ。仕上げにサカネカズラの根を水に浸すと出てくる粘液で、髪を整えて完成」
「え、拭くだけ? 洗わないの?」
「拭くだけでも女房数人がかりでやる大仕事じゃったんだからな! あれ! まっ、まあ、あの時代の女子は、外に出ることはおろか、立って歩くことすらしなかったんじゃ。お陰で現代に比べて髪の汚れはずっと少ない。だから、拭くだけで済んだんじゃ。決して不潔なわけではないぞ!」
引きこもりの極みみたいな言葉が出てきた。庶民はともかく、お姫様は皆こんなんだったのだろうか。
源氏物語はどろどろの愛憎劇が書かれていると言うが、娯楽がない以上、恋愛に依存してしまうのは仕方のないことだったのだろう。ジェネレーションギャップがすさまじすぎて、頭がくらくらする。だから思わず聞いてしまった。
「それって、何年前の話です?」
すると、黒狐さまの顔がみるみる顔が赤くなっていった。ポケットから扇子を取り出し広げると、口元を隠した。
「おのれ、謀りおったな、狐野郎!」
「人のこと言えますか!?」
両手で扇子を持ち恥じらう姿は、ひどくいじらしかった。
左に曲がり、田間川に別れを告げ、住宅地へ突入。東特大部駅前の踏切を超え、小川流れる八号用水路を横切った。ちなみに、右へ曲がり用水路を10分ほど行けば、先週から通い始めた都立東田高校に着く。
「あの、所で黒狐さまはどこの学校に通っているんですか?」
「秘密!」
「はい?」
「次会ったときに教えるから、楽しみじゃ」
にひひ、と含みのある笑みを黒狐さまは浮かべた。
「家に帰るために決まっておるじゃろう」
「神社に住んでいるわけじゃないんですか?」
「別にあるんじゃよ」
神社を出て、上丸大橋入口交差点を通り過ぎる。田間川が右側を走り、景色は抜群にいいのだが、道幅が狭い。自転車とすれ違う時、体を半身にしなければならないほどだった。
肩が擦れた拍子に、自分のシャツを黒髪が撫でた。微かに伝わってきた食感に、びくっとしてしまう。
黒狐さま誇らしげに髪をなでると、懐かしそうにつぶやいた。
「昔はこの倍以上はあったんじゃがのう。八尺……じゃなくて、大体2メートルくらい」
「床に髪の毛ついてますよね」
「それは心配ない。十二単の丈はそれ以上に長かった。そもそも、十二単そのものが垂髪……じゃなくて、黒髪超ロングを引き立たせるための衣装に過ぎん」
「待って、どうやって髪の手入れをしていたんですか?」
十二単は、百人一首の時代のはず。平安だっけ? 少なくとも、上水道など存在しなかったはずだ。そんな時代に、どうやって2メートル以上もある髪を綺麗に保ったのか。
「確か……小豆の粉末を溶かしたものや、米のとぎ汁をタオルに浸して、それで拭いてケアしていたはずじゃ。仕上げにサカネカズラの根を水に浸すと出てくる粘液で、髪を整えて完成」
「え、拭くだけ? 洗わないの?」
「拭くだけでも女房数人がかりでやる大仕事じゃったんだからな! あれ! まっ、まあ、あの時代の女子は、外に出ることはおろか、立って歩くことすらしなかったんじゃ。お陰で現代に比べて髪の汚れはずっと少ない。だから、拭くだけで済んだんじゃ。決して不潔なわけではないぞ!」
引きこもりの極みみたいな言葉が出てきた。庶民はともかく、お姫様は皆こんなんだったのだろうか。
源氏物語はどろどろの愛憎劇が書かれていると言うが、娯楽がない以上、恋愛に依存してしまうのは仕方のないことだったのだろう。ジェネレーションギャップがすさまじすぎて、頭がくらくらする。だから思わず聞いてしまった。
「それって、何年前の話です?」
すると、黒狐さまの顔がみるみる顔が赤くなっていった。ポケットから扇子を取り出し広げると、口元を隠した。
「おのれ、謀りおったな、狐野郎!」
「人のこと言えますか!?」
両手で扇子を持ち恥じらう姿は、ひどくいじらしかった。
左に曲がり、田間川に別れを告げ、住宅地へ突入。東特大部駅前の踏切を超え、小川流れる八号用水路を横切った。ちなみに、右へ曲がり用水路を10分ほど行けば、先週から通い始めた都立東田高校に着く。
「あの、所で黒狐さまはどこの学校に通っているんですか?」
「秘密!」
「はい?」
「次会ったときに教えるから、楽しみじゃ」
にひひ、と含みのある笑みを黒狐さまは浮かべた。
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