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第5話 妖狐
待ち合わせ
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八号用水復元路のちょっとした観光名所である小さな水車を眺めていた。ジャバラ(足踏み水車)と呼ばれる揚水用水車の模型だ。水車の奥は瓦屋根の塀があり、奥は神社。水車の右側には、ベンチが置かれた休憩スペースがあり、通学中に寄り道している学生でにぎわっていた。休憩スペースは大部駅前交差点に隣接しており、東特田間川線から降りた学生と、八号用水路を下ってきた学生と、桜通りを下ってきた学生が一堂に会する場所となっている。
「おっ、ツキじゃん。珍し!」
「何で住良木さんがここに?」
「あんたと違って、満開の桜を楽しむ程度の情趣は持ち合わせていますぅ~」
「お前なぁ~」
相変わらずの茶髪ボブで、丸っこく愛嬌ある笑顔を向けてきた。ぷにぷになほっぺといい、外見だけなら可愛い方だと思う。
普段出会う分には結構嬉しい。が、今回ばかりはお引き取り願いたかった。
「で、誰と待ち合わせしてんの? 幽霊? それとも妖怪?」
「せめて実在の人物を挙げろよ」
まさかの二言目でぶち当てられた。住良木さん、その勘の良さ、別の所で生かしてください!
ツキはとりあえず、露骨に迷惑がることにした。
「待ち合わせるような友達できたの?」
「それくらいいるさ。先行ってていいよ」
「うわっ、冷たッ! 昨日までとの反応の差ヤッバ! 本当、一体だれを待ってるの。遅刻してもいいから見てみたくなったわ~」
逆に興味を持たれてしまった。冗談抜きでマズイ。
「いや、今回ばかりは本当勘弁して。二人で登校したいって言われてるから」
「え~でもな~」
「頼む」
両手のひらをつけて、懇願した。住良木さんはゲラゲラ笑いながら、妥協案を提示した、
「じゃあ、『本当は一人で待つつもりだったけど、こいつが離れてくれなかった』って言い訳していいよ!」
「そういうことじゃなくて!? あ~もう!」
「苛つくあんた、本当に面白い」
「いや、マジでお前」
その後も、やり取りしたけれど、住良木さんはどかなかった。
スマホが振動した。待ち合わせのためのアラームだ。ヤバイ、もう、彼女が来てしま──。
田間川駅側から八号用水路を歩いてくる人だかり。その中心。遠目からでもすぐに分かる。黒狐さまだ。黒い髪と、校則にのっとった適切な長さのスカートを揺らしながら、こちらへ向かってくる。取り巻きの同級生が毎回違うことが、社交性の高さを示していた。
黒狐さまと視線が合う。黒狐さまの動きが止まった。一瞬、彼女の顔に深い落胆の色が浮かんだ。取り巻きが心配して寄り添ったのを、パーフェクトスマイルでいなす。痛々しかった。どう見ても無理をしている。またしても、黒狐さまを傷つけてしまったのだ。
「おっ、ツキじゃん。珍し!」
「何で住良木さんがここに?」
「あんたと違って、満開の桜を楽しむ程度の情趣は持ち合わせていますぅ~」
「お前なぁ~」
相変わらずの茶髪ボブで、丸っこく愛嬌ある笑顔を向けてきた。ぷにぷになほっぺといい、外見だけなら可愛い方だと思う。
普段出会う分には結構嬉しい。が、今回ばかりはお引き取り願いたかった。
「で、誰と待ち合わせしてんの? 幽霊? それとも妖怪?」
「せめて実在の人物を挙げろよ」
まさかの二言目でぶち当てられた。住良木さん、その勘の良さ、別の所で生かしてください!
ツキはとりあえず、露骨に迷惑がることにした。
「待ち合わせるような友達できたの?」
「それくらいいるさ。先行ってていいよ」
「うわっ、冷たッ! 昨日までとの反応の差ヤッバ! 本当、一体だれを待ってるの。遅刻してもいいから見てみたくなったわ~」
逆に興味を持たれてしまった。冗談抜きでマズイ。
「いや、今回ばかりは本当勘弁して。二人で登校したいって言われてるから」
「え~でもな~」
「頼む」
両手のひらをつけて、懇願した。住良木さんはゲラゲラ笑いながら、妥協案を提示した、
「じゃあ、『本当は一人で待つつもりだったけど、こいつが離れてくれなかった』って言い訳していいよ!」
「そういうことじゃなくて!? あ~もう!」
「苛つくあんた、本当に面白い」
「いや、マジでお前」
その後も、やり取りしたけれど、住良木さんはどかなかった。
スマホが振動した。待ち合わせのためのアラームだ。ヤバイ、もう、彼女が来てしま──。
田間川駅側から八号用水路を歩いてくる人だかり。その中心。遠目からでもすぐに分かる。黒狐さまだ。黒い髪と、校則にのっとった適切な長さのスカートを揺らしながら、こちらへ向かってくる。取り巻きの同級生が毎回違うことが、社交性の高さを示していた。
黒狐さまと視線が合う。黒狐さまの動きが止まった。一瞬、彼女の顔に深い落胆の色が浮かんだ。取り巻きが心配して寄り添ったのを、パーフェクトスマイルでいなす。痛々しかった。どう見ても無理をしている。またしても、黒狐さまを傷つけてしまったのだ。
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