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21、対決(ラスト2)

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「今のを聞いて、母が誘拐の犯人であったとしても自らの命を断った母を許してあげようと思います。ただ、どうしても許せないことがあります」
エリはここで一呼吸おいた。
「美久さんは私の大切な親友の一人でした。私や麻美さんにとって美久さんの死はとてもショックでした。美久さんを死なせた原因は母です。ですが、元はといえば谷崎さん、貴方にもあります」
ずっと俯いていた谷崎が驚いて顔をあげ言った。
「君はいったい何を言い出すんだね。美久を誘拐した君のお母さんのせいじゃないか」
「確かに誘拐事件は母ですが、事の起こりは貴方です」
「何を言うんだ。娘を誘拐されて失った私は被害者なんだ」
谷崎は両手の拳を握りしめ怒鳴った。
「確かに貴方は娘を失いました。しかし、私は貴方のせいで両親と親友まで失ったんです。全ての原因を母のせいにしたいならどうぞ警察に行ってください」
ここでエリは谷崎から手紙を取りあげた。
「その代わりこの手紙をマスコミに公表します。誘拐した母はもう居ませんし、私は構いません。会社の信用取り引きの意味では貴方の方が困ることになるでしょう」
エリは言い捨てると、やおらベンチから立ちあがった。
「谷崎さん、きっと、いえ、もう二度とお目にかかることは無いでしょう」
返す言葉もなく黙り込んでいる谷崎を置き去りにして、エリは駅に向かい歩きだした。
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