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第六話 最高ランククエスト その3「急に戦いの後の話するやつらと柱に立つやつら」
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落ちた先は仄暗い洞窟であった。しかし、道はタイルで舗装されているので城内の一部であることに違いなかった。
「みなさん大丈夫でしょうか?」
ペリーヌが起き上がりながら皆の心配をする。
「もちろんだとも」
「ああ、俺も無事だ」
「大した高さじゃないようだ」
他のパーティメンバーも無事だったが、突然ザイモンが悲鳴をあげた。
「わあっ!?」
「どうしたんですか!?」
「あ、あいつ・・・・・あいつが」
ザイモンが指差す方には、血の海で倒れているタナカの姿があった。
「きゃああああ!」
他のメンバー達も悲鳴をあげる。そのうるささにタナカは立ち上がった。
「うるせえ!洞窟だからキンキン響くんだよ!」
「い、生きてる!?」
「不死身か君は!?」
「死んでねーよ俺は」
もちろん先程のは血の海などではなく、バケツが一緒に落ちて、赤い塗料をぶち撒けただけである。
「まさかこんなところにも入口があるとは」
「知らなかったのか?」
「所詮俺は捕虜だし、ここに来て一週間も経ってないからな。多分まだまだ隠してることありそう」
「タナカ君、ならいっそ捕虜生活とはおさらばしまいか?俺のパーティに入るのさ!」
「はあ?」
またもやザイモンが馴れ馴れしく肩に手を置いてくる。今回はタナカに不着した塗料が自分の手についたため、すぐに手を離したが。
「俺は勇者のザイモン。リーダーだ。そして名前はもう知ってると思うが、回復術師のペリーヌ」
「よろしくお願いしますわ」
「こっちの大男が、戦士のゲントン」
「歓迎するぜ」
「で、こっちの眼鏡かけたのがトマズ。帽子と杖からわかるように彼は魔法使いだ」
「仲間は多い方がいいさ」
「自己紹介どうも。でもなんで参加すること前提で話進めてんだ」
タナカはここでキッパリ断るつもりだったが、突如洞窟の奥からする怒号に遮られてしまう。
「お前ら早く来い!!!!」
その声はアストリアのものであった。彼女の普段から耳障りなあの大声は、反響のせいでまるで殺人音波のように、全員の鼓膜に刺さった。
「なんだこの恐ろしい声は!」
「背筋が凍りましたわ」
「既に攻撃が始まっている?!」
「悪魔の声だ・・・・・」
いいえ、バカの声です。なんてことは言えず、とりあえずタナカは先に進むように催促する。
「なんか待たせてるみたいだし行こうや」
「待て、リーダーは俺だから先頭は俺。新入りは最後尾だいいな?」
「いや、だからなんで入る前提で」
タナカの声も聞かずに一行は進み始める。
「ああもう、どいつもこいつも勝手に」
とりあえず一番後ろに着くタナカ。
洞窟の中は仄暗く、ザイモンがランタンで照らしてくれてはいるが、足元も見えない程の暗闇であった。
すると突然魔法使いトマズが指輪を取り出しこう言った。
「僕、戦いが終わったら、故郷に住む幼馴染にこの指輪をプレゼントするんです」
突然のことで全員、一瞬黙ってしまったが、すぐさまタナカがツッコんだ。
「いや、今はそういうのやめといた方がいいぞ!」
「え?でも彼女が今してる指輪、だいぶくすんでて」
「プレゼント自体を問題にしてるわけでなく!」
なぜタナカが焦っているのか、トマズは理解出来なかった。そこにザイモンが割って入る。
「そうだぞトマズ。そんなこと言うもんじゃない」
「うんうん」
タナカはわかってくれてる人がいると安堵の気持ちで頷く。
「俺も戦いが終わったら好きな人に告白するんだって今から言うつもりだったのに、先を越しやがってこんちくしょう」
「お前も言わんでいい!」
「え?なんか悪いのかよ?」
ザイモンとトマズが不思議そうにタナカを見る。実のところ、タナカもなぜこのタイミングで戦いの後の話をするのがまずいのか、具体的な理由はわかっていない。
わかってはいないが、直感で止めなきゃと思ったのだ。
「タナカが言いたいのは、色事で浮かれているようではこの先の戦いで命を落とすぞということだ。だろ?タナカ!いいこと言うなタナカ!」
戦士ゲントンがタナカの背中を叩いて言う。
「まあ、多分だいたいそういうところだ・・・・・と思う。ていうか一番馴れ馴れしいな」
「だいたい戦いに身を投じるなら、そんな浮ついた心は捨てることだな。
俺の心は、この自慢の戦斧のように硬く・・・・硬く・・・・・ペリーヌたんハァハァ」
「お前が一番浮ついてんじゃねえか!」
「しかも同じパーティとかタブー中のタブー!」
「ふにゃふにゃだなお前の戦斧!」
今バラバラだったタナカ、ザイモン、トマズの3人の心が一つになった。
「あの、口動かすより足動かしません?」
「すみませんでした」
ペリーヌの冷静な一言で、4人の男は頭を下げて歩みを進めた。
そして一行は大きな広間に出た。広間といってもただ洞窟内に大きな空洞ができているだけで、周囲は舗装もされていないただの岩壁だけの空間だった。
そして広間の中央には四つの岩で出来た柱があり、その一つ一つに人が立っていた。
「よく来たなお前たち!!!!!」
またしても響くアストリアの声。しかも距離が近いので、入口よりも響いた。
「アストリア、挨拶をありがとう。でもさっき相談しあったように、ここからの案内は僕がやるから、少し静かにしててくれないかな」
「わかった!!!!!!!!」
わかったと言ってるはずなのに、未だ耳に響く大声。
「あれがあの悪魔の声の」
「あの格好賢者に見えるがまさかな」
上を見上げ、件の声の持ち主を見上げる一行。もちろんタナカだけは柱の上に立つ四人が誰なのかわかっている。デーツ以外のムテ騎士団員だ。
そしてここからの案内を引き受けたバーベラが喋り出す。
「よく来たね勇者達。歓迎するよ」
「お前達がムテ騎士団だな!どいつがリーダーだ!」
ザイモンは剣を手に取りながら言う。
「僕達の団長はこの上にいるよ。君たちのような馬の骨の相手はしないのさ」
「なんだと!」
「もし彼女に会って戦いたいのなら、僕達を倒すことだね。そう、僕達」
そしてムテ騎士団四人が同時に口を開く。
「四天王をね!」「幹部を」「親衛隊!」「なんか余ったの!!!」
「全員バラバラじゃねえか!」
最早すっかりツッコミ役が板についたタナカのツッコミが入る。
しかしそれにムカついたのか、ローナがむすっとした顔で降りてくる。
「タナカ君うるさいよ。勇者の一行に話してるんだけど。それとも、もしかしてこいつらの仲間にでもなった?」
「そうだ!タナカは俺たちの仲間だ!」
ゲントンが叫ぶ。
「ほうほう、敵対するなら容赦なく葬っていいよね」
「違う違う!あいつらが勝手に言ってるだけだ!俺は関係ない!」
「じゃあ、部外者は部外者席で待ってて」
ローナが指差す先に、木製のボロっちい椅子が何故か置いてあった。タナカは大人しくそこに座る。
「タナカ!裏切るのか!」
「うるせえ!だから散々参加すること前提で話進めるなっつったろ!」
「初めて聞いたぞ、そんなこと・・・・・」
驚愕するザイモンズパーティを見て、話聞けよアホどもと思うタナカ。
「あー、話戻すけど僕達四天王」
「幹部でしょ」
「親衛隊のがいい」
「なんか余ったのだろ私達って!」
「じゃあ、僕達なんか余った親衛隊の幹部四天王を倒すんだね!」
(力技だなぁ)
タナカは完全に部外者として頭の中でツッコむ。
「いいだろう!まとめて相手してやる!」
ザイモン一行は柱に向かって走り出した。
「話は最後まで聞くんだ。誰がまとめて戦うと言ったんだい?」
「え?誰か言ってなかった?」
「言ってない言ってない。
ちょうど四人いるんだ。各自一対一で戦おうじゃないか。
この奥に四つの部屋がある。今から僕らが待機するから、各自誰が行くか決めて5分後に来てくれないか。
あっ!そこの女の子、君は僕のところに来て。これ絶対、絶対の絶対ね」
バーベラがものすごい早口でペリーヌに懇願する。だがその返事に答えたのはゲントンだ。
「彼女は回復術師だぞ!一人じゃ戦えない!その代わりに俺が相手になってやる!」
「あ?指名してるのはこっちなんだ、イキがるなよこのフニャチンがよぉ!」
バーベラはタナカには見せたこともない、恐ろしい形相でゲントンを睨む。
「ひっ!」
「大丈夫ですゲントンさん。相手はわたくしと戦いたいようですので、その勝負引き受けますわ」
「だ、だけど!」
「回復術師には回復術師の戦いがありますわ。任せてください!」
胸を強く叩き、勇ましい表情を見せるペリーヌ。バーベラはそれを見ると静かに笑みを浮かべて、柱から飛び降りてくる。
「その覚悟。しっかり受け取ったよ。じゃあ行こうか」
ペリーヌの手を取り、奥の部屋に入っていくバーベラ。その後ろ姿にタナカは嫌な予感しかしなかったが、部外者なので口を閉ざした。
「じゃあ私達も行こうか」
「はーい」
「おう!!!!」
マァチ、ローナ、アストリアも柱から飛び降りる。その様子を見ていたタナカは手を上げる。
「なあ、これだけは言わせてくれ。どうせ部屋に行くなら、その柱に登る必要あったか?」
降りたばかりの3人がお互い顔を見合わせ、誰が答えるのかアイコンタクトを行う。そして代表に選ばれたマァチが一歩前に出る。
「じゃあタナカ。ハゲても人は生きてはいけるんだから、その髪全部抜いていい?」
「ダメに決まってるだろ!」
「つまりそういうこと」
そう言うと、3人は各自の部屋に入った。
「わかるようなわからないような」
疑問を浮かべるタナカの後ろでザイモンズパーティの男3人が相談しあっている。
「作戦はどうする?」
「スラッシュ作戦Aで」
「よし行こう」
3人は意を決して歩み出し、そして一つの部屋へと向かった。
「お前ら話聞いてた!?」
タナカが3人の前を塞ぐ。
「ええと、お前の髪が抜かれるって話?」
「そっちじゃない!ていうか俺の話は聞かんでいいんだ!
いいか、今からみんなそれぞれ一対一で戦うから一人一人別々の部屋に行くの!」
待たしても聞いてないぞという疑問の顔をするザイモンズパーティ。
そしてザイモンが口を開いた。
「それよりペリーヌはどこに?」
「話どころか目の前のことも筒抜けか!
もういい俺が決める!ザイモン、お前はあの扉!ゲントン、お前はその右手隣!メガネはザイモンの左隣!わかったら今すぐ行け!」
足蹴りしながらそれぞれを散り散りに走らせるタナカ。しかし、メガネことトマズが立ち止まる。
「メガネって誰?」
「お前しかメガネいねえだろうがメガネ!」
メガネを蹴って扉に進ませる。そして椅子に座ってタナカは呟いた。
「俺は一体誰の味方なんだ・・・・・」
「みなさん大丈夫でしょうか?」
ペリーヌが起き上がりながら皆の心配をする。
「もちろんだとも」
「ああ、俺も無事だ」
「大した高さじゃないようだ」
他のパーティメンバーも無事だったが、突然ザイモンが悲鳴をあげた。
「わあっ!?」
「どうしたんですか!?」
「あ、あいつ・・・・・あいつが」
ザイモンが指差す方には、血の海で倒れているタナカの姿があった。
「きゃああああ!」
他のメンバー達も悲鳴をあげる。そのうるささにタナカは立ち上がった。
「うるせえ!洞窟だからキンキン響くんだよ!」
「い、生きてる!?」
「不死身か君は!?」
「死んでねーよ俺は」
もちろん先程のは血の海などではなく、バケツが一緒に落ちて、赤い塗料をぶち撒けただけである。
「まさかこんなところにも入口があるとは」
「知らなかったのか?」
「所詮俺は捕虜だし、ここに来て一週間も経ってないからな。多分まだまだ隠してることありそう」
「タナカ君、ならいっそ捕虜生活とはおさらばしまいか?俺のパーティに入るのさ!」
「はあ?」
またもやザイモンが馴れ馴れしく肩に手を置いてくる。今回はタナカに不着した塗料が自分の手についたため、すぐに手を離したが。
「俺は勇者のザイモン。リーダーだ。そして名前はもう知ってると思うが、回復術師のペリーヌ」
「よろしくお願いしますわ」
「こっちの大男が、戦士のゲントン」
「歓迎するぜ」
「で、こっちの眼鏡かけたのがトマズ。帽子と杖からわかるように彼は魔法使いだ」
「仲間は多い方がいいさ」
「自己紹介どうも。でもなんで参加すること前提で話進めてんだ」
タナカはここでキッパリ断るつもりだったが、突如洞窟の奥からする怒号に遮られてしまう。
「お前ら早く来い!!!!」
その声はアストリアのものであった。彼女の普段から耳障りなあの大声は、反響のせいでまるで殺人音波のように、全員の鼓膜に刺さった。
「なんだこの恐ろしい声は!」
「背筋が凍りましたわ」
「既に攻撃が始まっている?!」
「悪魔の声だ・・・・・」
いいえ、バカの声です。なんてことは言えず、とりあえずタナカは先に進むように催促する。
「なんか待たせてるみたいだし行こうや」
「待て、リーダーは俺だから先頭は俺。新入りは最後尾だいいな?」
「いや、だからなんで入る前提で」
タナカの声も聞かずに一行は進み始める。
「ああもう、どいつもこいつも勝手に」
とりあえず一番後ろに着くタナカ。
洞窟の中は仄暗く、ザイモンがランタンで照らしてくれてはいるが、足元も見えない程の暗闇であった。
すると突然魔法使いトマズが指輪を取り出しこう言った。
「僕、戦いが終わったら、故郷に住む幼馴染にこの指輪をプレゼントするんです」
突然のことで全員、一瞬黙ってしまったが、すぐさまタナカがツッコんだ。
「いや、今はそういうのやめといた方がいいぞ!」
「え?でも彼女が今してる指輪、だいぶくすんでて」
「プレゼント自体を問題にしてるわけでなく!」
なぜタナカが焦っているのか、トマズは理解出来なかった。そこにザイモンが割って入る。
「そうだぞトマズ。そんなこと言うもんじゃない」
「うんうん」
タナカはわかってくれてる人がいると安堵の気持ちで頷く。
「俺も戦いが終わったら好きな人に告白するんだって今から言うつもりだったのに、先を越しやがってこんちくしょう」
「お前も言わんでいい!」
「え?なんか悪いのかよ?」
ザイモンとトマズが不思議そうにタナカを見る。実のところ、タナカもなぜこのタイミングで戦いの後の話をするのがまずいのか、具体的な理由はわかっていない。
わかってはいないが、直感で止めなきゃと思ったのだ。
「タナカが言いたいのは、色事で浮かれているようではこの先の戦いで命を落とすぞということだ。だろ?タナカ!いいこと言うなタナカ!」
戦士ゲントンがタナカの背中を叩いて言う。
「まあ、多分だいたいそういうところだ・・・・・と思う。ていうか一番馴れ馴れしいな」
「だいたい戦いに身を投じるなら、そんな浮ついた心は捨てることだな。
俺の心は、この自慢の戦斧のように硬く・・・・硬く・・・・・ペリーヌたんハァハァ」
「お前が一番浮ついてんじゃねえか!」
「しかも同じパーティとかタブー中のタブー!」
「ふにゃふにゃだなお前の戦斧!」
今バラバラだったタナカ、ザイモン、トマズの3人の心が一つになった。
「あの、口動かすより足動かしません?」
「すみませんでした」
ペリーヌの冷静な一言で、4人の男は頭を下げて歩みを進めた。
そして一行は大きな広間に出た。広間といってもただ洞窟内に大きな空洞ができているだけで、周囲は舗装もされていないただの岩壁だけの空間だった。
そして広間の中央には四つの岩で出来た柱があり、その一つ一つに人が立っていた。
「よく来たなお前たち!!!!!」
またしても響くアストリアの声。しかも距離が近いので、入口よりも響いた。
「アストリア、挨拶をありがとう。でもさっき相談しあったように、ここからの案内は僕がやるから、少し静かにしててくれないかな」
「わかった!!!!!!!!」
わかったと言ってるはずなのに、未だ耳に響く大声。
「あれがあの悪魔の声の」
「あの格好賢者に見えるがまさかな」
上を見上げ、件の声の持ち主を見上げる一行。もちろんタナカだけは柱の上に立つ四人が誰なのかわかっている。デーツ以外のムテ騎士団員だ。
そしてここからの案内を引き受けたバーベラが喋り出す。
「よく来たね勇者達。歓迎するよ」
「お前達がムテ騎士団だな!どいつがリーダーだ!」
ザイモンは剣を手に取りながら言う。
「僕達の団長はこの上にいるよ。君たちのような馬の骨の相手はしないのさ」
「なんだと!」
「もし彼女に会って戦いたいのなら、僕達を倒すことだね。そう、僕達」
そしてムテ騎士団四人が同時に口を開く。
「四天王をね!」「幹部を」「親衛隊!」「なんか余ったの!!!」
「全員バラバラじゃねえか!」
最早すっかりツッコミ役が板についたタナカのツッコミが入る。
しかしそれにムカついたのか、ローナがむすっとした顔で降りてくる。
「タナカ君うるさいよ。勇者の一行に話してるんだけど。それとも、もしかしてこいつらの仲間にでもなった?」
「そうだ!タナカは俺たちの仲間だ!」
ゲントンが叫ぶ。
「ほうほう、敵対するなら容赦なく葬っていいよね」
「違う違う!あいつらが勝手に言ってるだけだ!俺は関係ない!」
「じゃあ、部外者は部外者席で待ってて」
ローナが指差す先に、木製のボロっちい椅子が何故か置いてあった。タナカは大人しくそこに座る。
「タナカ!裏切るのか!」
「うるせえ!だから散々参加すること前提で話進めるなっつったろ!」
「初めて聞いたぞ、そんなこと・・・・・」
驚愕するザイモンズパーティを見て、話聞けよアホどもと思うタナカ。
「あー、話戻すけど僕達四天王」
「幹部でしょ」
「親衛隊のがいい」
「なんか余ったのだろ私達って!」
「じゃあ、僕達なんか余った親衛隊の幹部四天王を倒すんだね!」
(力技だなぁ)
タナカは完全に部外者として頭の中でツッコむ。
「いいだろう!まとめて相手してやる!」
ザイモン一行は柱に向かって走り出した。
「話は最後まで聞くんだ。誰がまとめて戦うと言ったんだい?」
「え?誰か言ってなかった?」
「言ってない言ってない。
ちょうど四人いるんだ。各自一対一で戦おうじゃないか。
この奥に四つの部屋がある。今から僕らが待機するから、各自誰が行くか決めて5分後に来てくれないか。
あっ!そこの女の子、君は僕のところに来て。これ絶対、絶対の絶対ね」
バーベラがものすごい早口でペリーヌに懇願する。だがその返事に答えたのはゲントンだ。
「彼女は回復術師だぞ!一人じゃ戦えない!その代わりに俺が相手になってやる!」
「あ?指名してるのはこっちなんだ、イキがるなよこのフニャチンがよぉ!」
バーベラはタナカには見せたこともない、恐ろしい形相でゲントンを睨む。
「ひっ!」
「大丈夫ですゲントンさん。相手はわたくしと戦いたいようですので、その勝負引き受けますわ」
「だ、だけど!」
「回復術師には回復術師の戦いがありますわ。任せてください!」
胸を強く叩き、勇ましい表情を見せるペリーヌ。バーベラはそれを見ると静かに笑みを浮かべて、柱から飛び降りてくる。
「その覚悟。しっかり受け取ったよ。じゃあ行こうか」
ペリーヌの手を取り、奥の部屋に入っていくバーベラ。その後ろ姿にタナカは嫌な予感しかしなかったが、部外者なので口を閉ざした。
「じゃあ私達も行こうか」
「はーい」
「おう!!!!」
マァチ、ローナ、アストリアも柱から飛び降りる。その様子を見ていたタナカは手を上げる。
「なあ、これだけは言わせてくれ。どうせ部屋に行くなら、その柱に登る必要あったか?」
降りたばかりの3人がお互い顔を見合わせ、誰が答えるのかアイコンタクトを行う。そして代表に選ばれたマァチが一歩前に出る。
「じゃあタナカ。ハゲても人は生きてはいけるんだから、その髪全部抜いていい?」
「ダメに決まってるだろ!」
「つまりそういうこと」
そう言うと、3人は各自の部屋に入った。
「わかるようなわからないような」
疑問を浮かべるタナカの後ろでザイモンズパーティの男3人が相談しあっている。
「作戦はどうする?」
「スラッシュ作戦Aで」
「よし行こう」
3人は意を決して歩み出し、そして一つの部屋へと向かった。
「お前ら話聞いてた!?」
タナカが3人の前を塞ぐ。
「ええと、お前の髪が抜かれるって話?」
「そっちじゃない!ていうか俺の話は聞かんでいいんだ!
いいか、今からみんなそれぞれ一対一で戦うから一人一人別々の部屋に行くの!」
待たしても聞いてないぞという疑問の顔をするザイモンズパーティ。
そしてザイモンが口を開いた。
「それよりペリーヌはどこに?」
「話どころか目の前のことも筒抜けか!
もういい俺が決める!ザイモン、お前はあの扉!ゲントン、お前はその右手隣!メガネはザイモンの左隣!わかったら今すぐ行け!」
足蹴りしながらそれぞれを散り散りに走らせるタナカ。しかし、メガネことトマズが立ち止まる。
「メガネって誰?」
「お前しかメガネいねえだろうがメガネ!」
メガネを蹴って扉に進ませる。そして椅子に座ってタナカは呟いた。
「俺は一体誰の味方なんだ・・・・・」
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