24 / 57
第六話 最高ランククエスト その4「熱戦!ゲントンvsアストリア」
しおりを挟む
さて、それぞれの部屋の戦いを見ていこう。まずはゲントンの部屋から。
その部屋で待ち受けていたのはアストリアだった。
「お前はあの悪魔の声の!」
「どの悪魔だ?! それより自己紹介だ! 私はアストリアだ!!!」
部屋は戦うのに充分なスペースはあったが、それでも先程の広間より狭くてなっているため、声が今までで一番響いた。
「お、俺はゲントンだ」
「わかったゲントン!!じゃあ戦う!!うおりゃああああ!」
「いきなり!?」
勢いつけて向かってくるアストリアに対し、ゲントンは自慢の戦斧を振りかざした。
しかし、アストリアは自身に向かってくる斧の柄の部分を拳でへし折り、そのままゲントンごと殴り飛ばした。
「うおおお!?」
入ってきた扉まで飛ばされて激突するゲントン。そしてその衝撃音に外で待つタナカはびくっとなった。
「びくっ! は、激しいな」
さて、バカ力に吹っ飛ばされたゲントンだが、彼はその筋肉隆々とした体は伊達じゃなことを証明するかのように、立ち上がってみせた。
「ふう・・・・・こいつはすげえ。そのデカイ声が武器だと思ったら、真の力はその怪力だったとはな」
「声はただの地声だ!!!!!」
「そ、そう。とにかく俺も力が自慢なんでな、負けるわけにはいかん!行くぞ!」
斧での戦いを諦め、拳を構えて突進していくゲントン。彼は自分の全体重を載せたパンチをお見舞いする。
だが、アストリアにとってその重さや勢いは屁でもなかったのだろう。自身の手の平の2倍もする大きな拳を、その手の平だけで受け止めたのだ。
「くっ! まだまだぁ!」
ゲントンは空かさず連続パンチを繰り出すも、アストリアは軽々しく全て手の平で受け止める。そうして彼の疲れと焦りの色が見え始めた頃、アストリアは口を開く。
「お前は勘違いしているぞ!!!!」
至近距離の真正面から聞く彼女の声は、まるで衝撃波で、聞く者を吹き飛ばす勢いがあった。ゲントンもご多聞に漏れず、尻餅をついてしまう。
「な、何を勘違いしてるって言うんだ」
打ち付けた腰をさすりながら尋ねるゲントン。
「私の真の力は怪力じゃないぞ!!! 私の真の力は賢さだ!!!」
彼女の言葉に、一瞬彼の中で時間が止まる。明らかに賢い人間が出すとは思えない声量だからだ。
「私は賢者だ!! つまり賢い!!!」
「えと」
「何が言いたい!! 賢者の格好はしてるけど本当に賢者なのかと言いたいなのか!!!」
「え、あ、うん」
「なんだ言いたいことわかってるんじゃないかと言いたいんだな!!!」
「ま、まあ」
「なぜなら初対面の人みんなそう言うからだ!!!
だから私はいつもこう言う!!私は本物の賢者だ!!!」
「お、お」
「落ちてるパンを食べたらお腹痛くなった!!! そう言いたいんだな!!!」
「それは言いたくない!いや、言いたいとかじゃなく、そもそも食べてない」
「じゃあ私がバカに見えると言いたいのか!!!」
「うん!!」
その一言に鎮まりかえる部屋。
「じゃあ私が賢くないと証明できたらお前の勝ちにしてやる!!!」
「ええ!? そんなんでいいの!?」
「いいぞ!!!でも人の知能の証明は難しいぞ!!参ったか!!」
別に参ってはいないが、それでもゲントンは彼女の言う通り、知能の証明などどうやってすればいいのか検討がつかなかった。
もしかするとこの勝負は膠着するのではと焦り始める。
「ところで賢いってどうやって書くんだ!!!」
「もうできたよ証明!」
膠着しなかった。
「マジかよ!!?じゃあお前書けるのか!?賢いって!!!」
アストリアはベールを外して、中から紙を取り出した。
「ペンがない!!どこ行った!!さっきまであったのに!!家出か!!?」
ゲントンは黙って彼女の頭頂部に刺さっているペンを指差した。
「ここかー!!!!」
技でも出すかのように叫びながらペンを引っこ抜くアストリア。
そして頭から吹き出る血。
ゲントンは言いたいことを我慢して黙ってペンと紙を受け取り、彼の出身地の言葉で“賢い”と書いた。
おそらくこれは、彼が今まで生きてきた中で最も間抜けな瞬間であったろう。
「書けました」
「おう!!!字、綺麗だな!!!ところでこれなんて書いたんだ!!!?」
ゲントン、返り血を浴びながら、賢者アストリアが賢くないと証明して勝利した。
その部屋で待ち受けていたのはアストリアだった。
「お前はあの悪魔の声の!」
「どの悪魔だ?! それより自己紹介だ! 私はアストリアだ!!!」
部屋は戦うのに充分なスペースはあったが、それでも先程の広間より狭くてなっているため、声が今までで一番響いた。
「お、俺はゲントンだ」
「わかったゲントン!!じゃあ戦う!!うおりゃああああ!」
「いきなり!?」
勢いつけて向かってくるアストリアに対し、ゲントンは自慢の戦斧を振りかざした。
しかし、アストリアは自身に向かってくる斧の柄の部分を拳でへし折り、そのままゲントンごと殴り飛ばした。
「うおおお!?」
入ってきた扉まで飛ばされて激突するゲントン。そしてその衝撃音に外で待つタナカはびくっとなった。
「びくっ! は、激しいな」
さて、バカ力に吹っ飛ばされたゲントンだが、彼はその筋肉隆々とした体は伊達じゃなことを証明するかのように、立ち上がってみせた。
「ふう・・・・・こいつはすげえ。そのデカイ声が武器だと思ったら、真の力はその怪力だったとはな」
「声はただの地声だ!!!!!」
「そ、そう。とにかく俺も力が自慢なんでな、負けるわけにはいかん!行くぞ!」
斧での戦いを諦め、拳を構えて突進していくゲントン。彼は自分の全体重を載せたパンチをお見舞いする。
だが、アストリアにとってその重さや勢いは屁でもなかったのだろう。自身の手の平の2倍もする大きな拳を、その手の平だけで受け止めたのだ。
「くっ! まだまだぁ!」
ゲントンは空かさず連続パンチを繰り出すも、アストリアは軽々しく全て手の平で受け止める。そうして彼の疲れと焦りの色が見え始めた頃、アストリアは口を開く。
「お前は勘違いしているぞ!!!!」
至近距離の真正面から聞く彼女の声は、まるで衝撃波で、聞く者を吹き飛ばす勢いがあった。ゲントンもご多聞に漏れず、尻餅をついてしまう。
「な、何を勘違いしてるって言うんだ」
打ち付けた腰をさすりながら尋ねるゲントン。
「私の真の力は怪力じゃないぞ!!! 私の真の力は賢さだ!!!」
彼女の言葉に、一瞬彼の中で時間が止まる。明らかに賢い人間が出すとは思えない声量だからだ。
「私は賢者だ!! つまり賢い!!!」
「えと」
「何が言いたい!! 賢者の格好はしてるけど本当に賢者なのかと言いたいなのか!!!」
「え、あ、うん」
「なんだ言いたいことわかってるんじゃないかと言いたいんだな!!!」
「ま、まあ」
「なぜなら初対面の人みんなそう言うからだ!!!
だから私はいつもこう言う!!私は本物の賢者だ!!!」
「お、お」
「落ちてるパンを食べたらお腹痛くなった!!! そう言いたいんだな!!!」
「それは言いたくない!いや、言いたいとかじゃなく、そもそも食べてない」
「じゃあ私がバカに見えると言いたいのか!!!」
「うん!!」
その一言に鎮まりかえる部屋。
「じゃあ私が賢くないと証明できたらお前の勝ちにしてやる!!!」
「ええ!? そんなんでいいの!?」
「いいぞ!!!でも人の知能の証明は難しいぞ!!参ったか!!」
別に参ってはいないが、それでもゲントンは彼女の言う通り、知能の証明などどうやってすればいいのか検討がつかなかった。
もしかするとこの勝負は膠着するのではと焦り始める。
「ところで賢いってどうやって書くんだ!!!」
「もうできたよ証明!」
膠着しなかった。
「マジかよ!!?じゃあお前書けるのか!?賢いって!!!」
アストリアはベールを外して、中から紙を取り出した。
「ペンがない!!どこ行った!!さっきまであったのに!!家出か!!?」
ゲントンは黙って彼女の頭頂部に刺さっているペンを指差した。
「ここかー!!!!」
技でも出すかのように叫びながらペンを引っこ抜くアストリア。
そして頭から吹き出る血。
ゲントンは言いたいことを我慢して黙ってペンと紙を受け取り、彼の出身地の言葉で“賢い”と書いた。
おそらくこれは、彼が今まで生きてきた中で最も間抜けな瞬間であったろう。
「書けました」
「おう!!!字、綺麗だな!!!ところでこれなんて書いたんだ!!!?」
ゲントン、返り血を浴びながら、賢者アストリアが賢くないと証明して勝利した。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる