峻烈のムテ騎士団

いらいあす

文字の大きさ
29 / 57

第七話 ちびっ子ナイトパーリィ その1「ミートボールミートボール」

しおりを挟む
その日の夕方、タナカはくたびれながら食卓についた。先日のザイモンズパーティとの戦いの後始末を一人でやっていたからだ。
トイ・レットーの穴の中に顔を埋めるタナカ。そこにローナとアストリアがやってきた。

「うわ。何やってるの?」
「最近この穴の中が妙に落ち着くようになって」
「かわいそうな奴だな!!!」
「俺自身が一番そう感じてる」

マァチもエレベーターから料理を乗せたワゴンと共にやって来たが、顔を突っ込み中のタナカを見て腹を抱えてうずくまってしまう。

「お腹痛いのか!!!?」
「いや、笑ってるんだと思う」
「騎士団の中で一番、俺の惨めな姿で笑うんだよなこいつ」

タナカの言う通り、団員の中で彼の事を一番嫌っているのはマァチであることは誰の目にも明らかだった。
例えば、廊下ですれ違う際に舌打ちするし、彼が誰かに褒められると「でもこいつ私たちの命狙ってたし」とか言うし、あと、唐突に「こいつ嫌い」とか言うし。
さて、そんなマァチの笑いが止まったところで、ようやく料理が運ばれた。待ち時間だいたい10分。
蓋を取ると、そこには30センチほどの高さのミートボールの山が。

「すごい盛ったな」
「みんな大好きミートボール」

マァチがそれぞれの取り皿によそっていく。

「もう食べるのか? デーツとバーベラがいないようだが」
「二人なら出かけてる!!」
「どこに?」
「お金出して肉体のご奉仕を受けるお店ー」

ローナは何食わぬ顔でミートボールの魂を摘み食いしながら言う。

「またか。ていうかバーベラだけでなくデーツも行くんだな」
「団長の場合、快楽が目当てじゃない。
店で働いてる人がどういう経緯でその仕事をやるハメになったのかの身の上を、根掘り葉掘り聞いたり説教したりするのが目的」

マァチは苦虫を噛み潰したような顔で答える。

「わーお人間のクズ」

デーツの趣味にタナカ至極まっとうな反応。
すると、突然ローナが楽しそうに宙を舞った。

「つまり今夜は子供達だけ! なのでちびっ子ナイトパーティを始めるよー!」
「子供? ちびっ子?」

確かにローナは子供ではあるが、他のメンバーが子供と言えるかどうか疑問に思うタナカ。

「えーとね、ローナちゃんの国の基準では21歳からが大人だから、それ以外は子供扱いでいいんだよ。まずアスティが」
「19歳だ!!!!」
「割とギリギリじゃないか」
「でも基準を満たしてるのでセーフ。それでマァチが」
「16歳」
「じゃあ俺と同じなのか」
「え、じゃあ本当は17歳ってことで」
「歳上マウントをしようとするんじゃない!」
「ちっ」
「それよりタナカ君て結構若かったんだね。ちなみにローナちゃんの享年は10歳。
だから今は死んでからは、えーと1、2・・・・・ああ私今年で26歳か」
「バリバリ大人じゃん!」
「でも幽霊は成長しないからセーフ」
「都合いいな」
「都合のよさは子供の特権でーす。
ちなみにバーベラが24歳。団長は年齢不詳だけど40代なのは確か」
「50以上でも俺は驚かないが」

そんなことを話しているうちに、マァチはそれぞれの前に、よそったミートボールを配膳し終えた。

「何はともあれ、まずは食事だよ! ミートボールパーティ!
ミートボール! ミートボール!」
「ミートボール ミートボール」
「ミートボール!!! ミートボール!!!」

響き渡るミートボールコール。そして3人ともコールしながらタナカを見る。

「え?」
「ミートボール!」
「な、なんだよ」
「ミートボール」
「俺も言えってのか?」
「ミートボール!!!!!!」
「わ、わかったからミートボールだけで会話するのやめろ!
ミートボール! ミートボール!」

すると3人は満足したのか、再度ミートボールコールを開始する。そしてしばらく続いた後にローナがこう言った。

「で、これいつまでやるの?」
「お前が知らないことを俺たちが知るか!」
「じゃあミートボールコールはここまでにしてみんな食べよう!」

すると3人とも勢いよくミートボールをかきこむ。

「そんなに慌てなくても」
「パーティだからこれでいいんだ!!!!!」

アストリアは皿を持ち上げ、ミートボールを直に口の中へ流し込んで食べている。
普段はおとなしいマァチも、フォークを両手に一本ずつ持ち、二刀流で食べている。

「タナカ君も早く食べなよ。おかわり無くなっちゃうよ」

ミートボールの魂を山のように抱え、それを摘みながらローナが言う。


「いや、お前らの食べっぷりに、逆に食欲失せたわ」
「甘いなタナカ!!! そんなことじゃ、パーティについていけなくなるぞ!!!!」
「もう既についてけない。むしろついていきたくない」

なので、タナカは最初によそわれた一皿10個入りのミートボールだけで食事を終えた。
しかし、食事はまだ終わらない。ワゴンにはもう一皿残っているからだ。

「ごちそうさま!!!!」
「じゃあデザートね」

アストリアが食べ終わったと同時に、マァチがもう一つの皿の蓋を開ける。そこには山盛りのホイップクリームがあった。

「盛るの好きだな」
「ちびっ子ナイトパーティの基本は盛ることだからね。
うん、甘くて美味しい」

ローナがクリームの魂を指ですくいあげ舐めた。しかしあくまで魂なせいか、指にクリームのついた跡はない。

「タナカ、いる?」
「いや、俺はいらねえや」
「甘いもの嫌いか!!!?」
「嫌いってわけでもないが、世の中には沢山の甘いものを見て喜ぶ奴と、うんざりする奴と2種類いる。俺は後者なんだ」
「団長も後者なんだよねー。山盛りの油物とかスイーツとか見ると食欲無くすって。
だから今夜はこれでもかってぐらいに盛るわけ」
「そりゃおばさんの胃には重たかろう」

その時、マァチが杖を持って不敵な笑みを浮かべているのにタナカ早く気がついた。

「なんだその顔は」

すると、杖から先程のタナカの発言が流れる。

【「そりゃおばさんの胃には重たかろう」】
「おい、何してんだ」

マァチはにやつきながら音声を何度も流す。

【「そりゃおばさんの胃には重たかろう」】
【「そりゃおばさんの胃には」】
【「おばさんの」】
【「おばさん」】
【「おばさん」】
【「お ば さ ん」】
「もうやめろー! それをどうするつもりだ!」
「ザ・言質」
「ちくしょう!」
「ゲンチってなんだ!!!?」
「なんらかの証拠になる発言って意味。だから、これを脅しに使えるってわけ」
「わかった!!!!! で、脅して何させるんだ!!!!」

アストリアの疑問にマァチは頭を掻いて考える。

「じゃあ、空気をいっぱい吸い込んで・・・・・破裂するとか?」
「出来ること出来ないこと考えて脅せよ」
「じゃあさじゃあさ、これからやるゲームの賭けにしてもらうとかどう?」

ローナが元気よく手を挙げて言う。

「ゲーム?」
「ああ!! これから三人それぞれがやりたいゲームを順にするんだ!!!」
「で、その内タナカ君が2回勝利できれば音声は消してあげる。
で、負けたら音声を団長に聞かせた上に破裂してもらうね」
「破裂は確定なのかよ」
「とにかく、わたし達はゲームの準備するから20分、いや30分後にマッチョ石像の前に集合ね」

こうして3人はタナカと食べ残したクリームの山を置いて去って行った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

【完結】番としか子供が産まれない世界で

さくらもち
恋愛
番との間にしか子供が産まれない世界に産まれたニーナ。 何故か親から要らない子扱いされる不遇な子供時代に番と言う概念すら知らないまま育った。 そんなニーナが番に出会うまで 4話完結 出会えたところで話は終わってます。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

処理中です...