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第八話 今更の世界観説明 その2「男の娘、風俗説教おばさんと遭遇する」
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さて、ここで話をムテ騎士団の二人ではなく、デーツが買った男娼に話を移そう。
「ベバニー、指名が入ったぞ。相手はかなり持ってる御婦人だ。失礼のないように、そしてできるだけ搾り取れいいな」
「はーい」
気怠い返事で答えるベバニーと呼ばれるネグリジェ姿の男娼。
彼は淡い栗毛の巻き毛で、後ろ髪は肩にまでかかるほど長く、そして大きなつぶらな瞳をしているので、一見すると少女のようであった。
そしてその見た目から男性、女性共に人気が高く、相手をした人数は100を超えたところで数えるのをやめてしまったという。ちなみに今現在の悩みはムダ毛の処理頻度が増えたこと。
「失礼します」
デーツの部屋にノックして入るベバニー。そしてベッドに座るデーツを見た。
普段は相手の容姿など気にはしない彼だが、目に飛び込んできたデーツの顔の美しさに少しドキッとしてしまった。
(今日の客は当たりだな)
心の中でそう思った瞬間、首から下を見ると、目の中に飛び込んでくるのはビキニ姿の脂肪と肉の塊。
(うわ、ひっでえ体)
「おい、今ひっでえ体だなこの豚って思ったな」
「いえ、思ってません! 思ってませんよお客様!」
少なくとも豚とまでは思っていないので、彼の言葉は嘘ではない。
「ご指名ありがとうございます。ベバニーと申します。
ふふっ、お客様もう脱いじゃって、僕のこと待ちきれなかったんですね」
「いや、これは普段着だ」
「普段着!?」
こんな醜い体を半裸で練り歩くとか重罪だよ。と思うも、客相手にこれ以上失礼がないようにと口はもちろん、顔にも出さないで堪えるベバニー。
「じゃあ早速楽しい時間を過ごしましょうか。どこから始めるかはお客様が望む通りに」
ベバニーはデーツの足元に跪き、甘える子犬のような上目遣いをしながら、ネグリジェの肩紐を少し下ろす。
だが、デーツはそんなあざとい誘惑など知ったことかと、彼の顔を片手で掴む。
「いや、脱がなくていい」
「ええ!?」
「別にオチョメチョメしにきたわけじゃない。
我はな、こういう店に身を堕とした人間の素性や経緯を根掘り葉掘り聞いて説教するのが好きなんだ」
「わーお人間のクズ」
思わず素直に失言が出るベバニーだが、デーツは気にせず話を続ける。
「お前のような男娼は初めてだからいっそう興味深い。どうだ話してくれないか」
「いや、ちょっとサービス外のことはちょっと」
「ほーれ、お金だぞー」
デーツは硬貨を一枚投げる。お金をくれるのであれば話は別だと素直にそれを受け取るベバニー。
「話しますけど、面白いものじゃないですよ?」
「そういうこと言う奴に限って結構面白い話が出るんだよな。
とりあえず何歳からこの仕事に?」
「5年ぐらい経つから、まあ10歳?」
「つまり今は15、マァチよりも若いか。それ以前は何をやってた?」
「特に何も、家が農家だったからその手伝いぐらいですね」
「ふーん」
「でも戦争で家族も畑も無くなって、流されてるうちに稼ぐ方法として身体を売り始めた、そんなところです」
「戦争ってどの戦争だ?」
「え? どのって言われましても自分はよく知らないです。国が勝手に始めたことですし」
「まずどこの国のどの区のどの地域のどの町の出身なんだ」
「そんないっぺんに言われても困るよぉ~!」
ベバニーは叱られた子供のように涙を滲ませる。
そもそもおばさんに、急に身の上話を強要されることほど残酷なものはないので仕方がない。
「まず歴史とか色々わかってるのか? いくら流れ者の男娼でも生きていくには最低限の知識ぐらいは知っておかないと生きてけないぞ」
「ま、まずは整理させてください!」
「よかろう。ならばこれを使え」
デーツは幾重にも重なったお腹のお肉の間からチョークを一本取り出した。
「なんてところから出してるんですか」
「時間と金はいくらでもかけてやるから説明できそうになったら、先生に見せなさい」
そしてお腹の肉の間から硬貨を5枚も取り出す。ベバニーはさっきから受け取っていたお金はそんなところから出していたのかという失望と、まあ貰える物は貰っておかないとねという二重の気持ちで受け取り、そして壁にチョークで色々と書き始める。
「字は書けるんだな」
「母さんが独学で教えてくれて」
「字が書けるなら、もっと仕事を選べたんじゃないか?」
デーツのその言葉にベバニーは答えなかった。
「まあ好きでやってるやつもいるし、これ以上は聞くまい」
部屋の扉を叩く音が聞こえる。かなり早く叩くのでデーツはすぐにバーベラだと気づいた。
「バーベラか、入れ」
扉を開けるバーベラ。彼女はワイシャツ一枚の状態で、頭に大きなリボンをつけた裸の女性が彼女に抱きついていた。
「やあ団長。また変なことやらせてるみたいだね」
「そっちこそ変態なことやらせてるんだろ」
「そういう店だもの、それだけの額払ってるもの」
「で、何かあったか?」
「ああ、あったとも。この子の胸がね、ものすっ・・・・・・ごく」
「帰れ」
団長命令なので大人しく帰るバーベラ。
「なんですか今の人」
「我の連れだ。何しに来たかは本気でわからん。まあ気にするな」
「気になりますよ」
「ベバニー、指名が入ったぞ。相手はかなり持ってる御婦人だ。失礼のないように、そしてできるだけ搾り取れいいな」
「はーい」
気怠い返事で答えるベバニーと呼ばれるネグリジェ姿の男娼。
彼は淡い栗毛の巻き毛で、後ろ髪は肩にまでかかるほど長く、そして大きなつぶらな瞳をしているので、一見すると少女のようであった。
そしてその見た目から男性、女性共に人気が高く、相手をした人数は100を超えたところで数えるのをやめてしまったという。ちなみに今現在の悩みはムダ毛の処理頻度が増えたこと。
「失礼します」
デーツの部屋にノックして入るベバニー。そしてベッドに座るデーツを見た。
普段は相手の容姿など気にはしない彼だが、目に飛び込んできたデーツの顔の美しさに少しドキッとしてしまった。
(今日の客は当たりだな)
心の中でそう思った瞬間、首から下を見ると、目の中に飛び込んでくるのはビキニ姿の脂肪と肉の塊。
(うわ、ひっでえ体)
「おい、今ひっでえ体だなこの豚って思ったな」
「いえ、思ってません! 思ってませんよお客様!」
少なくとも豚とまでは思っていないので、彼の言葉は嘘ではない。
「ご指名ありがとうございます。ベバニーと申します。
ふふっ、お客様もう脱いじゃって、僕のこと待ちきれなかったんですね」
「いや、これは普段着だ」
「普段着!?」
こんな醜い体を半裸で練り歩くとか重罪だよ。と思うも、客相手にこれ以上失礼がないようにと口はもちろん、顔にも出さないで堪えるベバニー。
「じゃあ早速楽しい時間を過ごしましょうか。どこから始めるかはお客様が望む通りに」
ベバニーはデーツの足元に跪き、甘える子犬のような上目遣いをしながら、ネグリジェの肩紐を少し下ろす。
だが、デーツはそんなあざとい誘惑など知ったことかと、彼の顔を片手で掴む。
「いや、脱がなくていい」
「ええ!?」
「別にオチョメチョメしにきたわけじゃない。
我はな、こういう店に身を堕とした人間の素性や経緯を根掘り葉掘り聞いて説教するのが好きなんだ」
「わーお人間のクズ」
思わず素直に失言が出るベバニーだが、デーツは気にせず話を続ける。
「お前のような男娼は初めてだからいっそう興味深い。どうだ話してくれないか」
「いや、ちょっとサービス外のことはちょっと」
「ほーれ、お金だぞー」
デーツは硬貨を一枚投げる。お金をくれるのであれば話は別だと素直にそれを受け取るベバニー。
「話しますけど、面白いものじゃないですよ?」
「そういうこと言う奴に限って結構面白い話が出るんだよな。
とりあえず何歳からこの仕事に?」
「5年ぐらい経つから、まあ10歳?」
「つまり今は15、マァチよりも若いか。それ以前は何をやってた?」
「特に何も、家が農家だったからその手伝いぐらいですね」
「ふーん」
「でも戦争で家族も畑も無くなって、流されてるうちに稼ぐ方法として身体を売り始めた、そんなところです」
「戦争ってどの戦争だ?」
「え? どのって言われましても自分はよく知らないです。国が勝手に始めたことですし」
「まずどこの国のどの区のどの地域のどの町の出身なんだ」
「そんないっぺんに言われても困るよぉ~!」
ベバニーは叱られた子供のように涙を滲ませる。
そもそもおばさんに、急に身の上話を強要されることほど残酷なものはないので仕方がない。
「まず歴史とか色々わかってるのか? いくら流れ者の男娼でも生きていくには最低限の知識ぐらいは知っておかないと生きてけないぞ」
「ま、まずは整理させてください!」
「よかろう。ならばこれを使え」
デーツは幾重にも重なったお腹のお肉の間からチョークを一本取り出した。
「なんてところから出してるんですか」
「時間と金はいくらでもかけてやるから説明できそうになったら、先生に見せなさい」
そしてお腹の肉の間から硬貨を5枚も取り出す。ベバニーはさっきから受け取っていたお金はそんなところから出していたのかという失望と、まあ貰える物は貰っておかないとねという二重の気持ちで受け取り、そして壁にチョークで色々と書き始める。
「字は書けるんだな」
「母さんが独学で教えてくれて」
「字が書けるなら、もっと仕事を選べたんじゃないか?」
デーツのその言葉にベバニーは答えなかった。
「まあ好きでやってるやつもいるし、これ以上は聞くまい」
部屋の扉を叩く音が聞こえる。かなり早く叩くのでデーツはすぐにバーベラだと気づいた。
「バーベラか、入れ」
扉を開けるバーベラ。彼女はワイシャツ一枚の状態で、頭に大きなリボンをつけた裸の女性が彼女に抱きついていた。
「やあ団長。また変なことやらせてるみたいだね」
「そっちこそ変態なことやらせてるんだろ」
「そういう店だもの、それだけの額払ってるもの」
「で、何かあったか?」
「ああ、あったとも。この子の胸がね、ものすっ・・・・・・ごく」
「帰れ」
団長命令なので大人しく帰るバーベラ。
「なんですか今の人」
「我の連れだ。何しに来たかは本気でわからん。まあ気にするな」
「気になりますよ」
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