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様々な夫婦のかたち
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世の中には色々な価値観が混在する。
当然だ、それだけの人がいるのだから考え方は個人により変わる。
私達夫婦もまた普通とは少し違うのだろうけれど、これはこれで上手くいってるのだ。
---------------------------------------
平日の夕方、突然家のインターホンが鳴った。
モニターを見ると見慣れない女性が立っている。
20代ぐらいだろうか、派手な顔のつくりだ。
「はい」
「あの、佐伯と申します。ご主人の件で話したいことがあり来ました。」
インターホン越しに話す女性の声は堂々としていた。
「少しお待ちください」
私はまたかという気持ちで、玄関に向かう。
玄関ドアを開けると目の前には小柄で華奢な女性が立っていた。
可愛らしい大きな目が印象的でそれを強調するようなメイクである。
「お待たせしました。どうぞ散らかってるけど入って」
「お邪魔します」
私はこの手の女が嫌いだ。
自分の立場を考えないで突っ走るタイプは愚かに思えてしまうから。
リビングに案内する。
「どうぞ、そこのソファに座って。今、お茶いれるわ。」
「失礼します。お茶は結構です。すぐ帰りますので……」
女は少し緊張しているのだろうか、声が少し小さくなっている。
「そう言わないで、良い紅茶が手に入ったからみんなに飲ませたいのよ。それに話すのに飲み物は必要だもの。」
すぐ帰るって自分勝手な話だ。
勝手に来て、自分の言い分を伝えたら帰りたいのだろう。
きっと気まずくて帰りたいというのが本音だと思う。
実際、私がキッチンに向かおうとすると彼女の表情が曇ったのを見逃さなかった。ならば、ゆっくりしていってもらいましょう。
キッチンからリビングは見渡す事が出来るようになっている。
湯を沸かして居る間も彼女が視界にはいる。
「ごめんなさいね。今日は主人が遅いみたいで」
彼がいないのをきっと知っている。
そうでなければ来るはずがない。
「いえ、大丈夫です。」
この子も可哀想と言えばそうなのかもしれない。
でも、家庭のある人に迫られたとしても唆されてはいけないのも事実だ。
「もうお湯が沸くわ。ねぇ、佐伯さんって下のお名前はなんていうの?私は美佐っていうんだけど」
「え……よしのです。佐伯 芳乃 」
「素敵なお名前ね。」
トレーにティーポットとカップを乗せ彼女の前に運び、正面に腰掛ける。
「芳乃ちゃんって、可愛らしい。親御さんの愛情を感じられるお名前ね。さぁ、まずは紅茶でもどうぞ。話はそれからね。」
彼女のティーカップに注ぎながら、私は微笑んでいた。
残念だけど、その恋はうまく行かないのごめんなさいね。
心で呟いた。
彼女はゆっくりとカップに口をつける。
そして、カップをソーサーに戻すと真剣な目でこちらを見つめる。
私は面倒でしかなかった。
「美佐さん、お願いがあって来たんです。私の立場から口にするのは間違っていると思うのですが……」
「間違っていると思うなら今が戻るチャンスよ。口にして現実を知るよりはあなたにとってもいいかもしれない」
「どういう意味ですか?」
彼女の目は動揺しているのが、手に取るようにわかった。
「さぁ?そのままの意味だけど?だって、芳乃ちゃん自分で言ったじゃない?間違ってると思うって。
だから、間違いに気付いたのなら引き返すチャンスじゃない?」
「……で、でも…私はあなたのご主人が好きなんです。二人で幸せになりたいんです。…だから、ご主人と別れて欲しいんです。お願いします。」
彼女は口にしてから、俯いた。
「芳乃ちゃん、私は芳乃ちゃんに幸せになってほしい。
でもね、これは芳乃ちゃんと私の問題で無いことは分かるよね?
まず、それを言うべきは彼よ。」
私は彼女を見つめたが、彼女は視線をそらしたままだ。
「あの…その…私」
彼女は純粋に主人の事が好きなのだ。
きっと周りの事が見えなくなっている。
誰だって幸せになりたいはずだ、自分の幸せを望むのは当然のこと。
でも、それは冷静さも必要なのだ。
私は紅茶を飲みながら昔を思い出した。苦い思い出だ。
「芳乃ちゃん、落ち着いて。
私は彼が別れを望むならいつでも別れるわ。これは私の意思ではどうにも出来ないことなのよ。」
主人は女癖が悪い。
次から次へと女性を騙してくる。
その騙された一人が私とも言える。
彼が結婚していることを知らないまま付き合っていた。
当時、私も彼の家に乗り込んだ事があった。
奥さんは笑っていた。
離婚するから、どうでもいいのよと。
私は彼に言いくるめられたまま結婚した。
そんな付き合いだ。
私は昔夢見た甘い結婚生活など訪れるはずがなった。
年をとっても彼は彼だった。
また同じ事を繰り返している。
愛してるか?そんなものはとうの昔の話だ。
いつでも離婚すればいい。
そう思いながら20年の結婚生活が過ぎた。
この芳乃という子の前にも乗り込んできた子はいるし、主人には他にも彼女がいる。
それでも彼は絶対に私と別れないつもりだ。
離婚を切り出した時も必死に誤魔化していた。
何度となくそれを繰り返した20年。
それでも仲が悪いわけではない。
普通の会話も他の家庭以上にあると思う。
これはこれでこんな家庭も世の中に存在していても良いのかと私は思っている。
「彼には話をしたの?」
「…彼は奥さんとは別れない。別れられないと…だから、だから…」
彼女は目の前で泣き出す。
何で彼はこういう残酷なことを……
「ごめんなさいね。彼はそういう人なの。」
彼女が帰る背中を見つめながら、そっと溜息をつき見送った。
「私はこの手の女が嫌いだ。
自分の立場を考えないで突っ走るタイプは愚かに思えてしまうから。」
この言葉は昔の自分を思い出すから、嫌いなんだ。
私は目の前にいる女性に知らぬ間に自分と重ね合わせていたのかもしれない。
人の幸せを奪い幸せになろうなんて都合の良い話だ。
私も同じことだったのだ。
当然だ、それだけの人がいるのだから考え方は個人により変わる。
私達夫婦もまた普通とは少し違うのだろうけれど、これはこれで上手くいってるのだ。
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平日の夕方、突然家のインターホンが鳴った。
モニターを見ると見慣れない女性が立っている。
20代ぐらいだろうか、派手な顔のつくりだ。
「はい」
「あの、佐伯と申します。ご主人の件で話したいことがあり来ました。」
インターホン越しに話す女性の声は堂々としていた。
「少しお待ちください」
私はまたかという気持ちで、玄関に向かう。
玄関ドアを開けると目の前には小柄で華奢な女性が立っていた。
可愛らしい大きな目が印象的でそれを強調するようなメイクである。
「お待たせしました。どうぞ散らかってるけど入って」
「お邪魔します」
私はこの手の女が嫌いだ。
自分の立場を考えないで突っ走るタイプは愚かに思えてしまうから。
リビングに案内する。
「どうぞ、そこのソファに座って。今、お茶いれるわ。」
「失礼します。お茶は結構です。すぐ帰りますので……」
女は少し緊張しているのだろうか、声が少し小さくなっている。
「そう言わないで、良い紅茶が手に入ったからみんなに飲ませたいのよ。それに話すのに飲み物は必要だもの。」
すぐ帰るって自分勝手な話だ。
勝手に来て、自分の言い分を伝えたら帰りたいのだろう。
きっと気まずくて帰りたいというのが本音だと思う。
実際、私がキッチンに向かおうとすると彼女の表情が曇ったのを見逃さなかった。ならば、ゆっくりしていってもらいましょう。
キッチンからリビングは見渡す事が出来るようになっている。
湯を沸かして居る間も彼女が視界にはいる。
「ごめんなさいね。今日は主人が遅いみたいで」
彼がいないのをきっと知っている。
そうでなければ来るはずがない。
「いえ、大丈夫です。」
この子も可哀想と言えばそうなのかもしれない。
でも、家庭のある人に迫られたとしても唆されてはいけないのも事実だ。
「もうお湯が沸くわ。ねぇ、佐伯さんって下のお名前はなんていうの?私は美佐っていうんだけど」
「え……よしのです。佐伯 芳乃 」
「素敵なお名前ね。」
トレーにティーポットとカップを乗せ彼女の前に運び、正面に腰掛ける。
「芳乃ちゃんって、可愛らしい。親御さんの愛情を感じられるお名前ね。さぁ、まずは紅茶でもどうぞ。話はそれからね。」
彼女のティーカップに注ぎながら、私は微笑んでいた。
残念だけど、その恋はうまく行かないのごめんなさいね。
心で呟いた。
彼女はゆっくりとカップに口をつける。
そして、カップをソーサーに戻すと真剣な目でこちらを見つめる。
私は面倒でしかなかった。
「美佐さん、お願いがあって来たんです。私の立場から口にするのは間違っていると思うのですが……」
「間違っていると思うなら今が戻るチャンスよ。口にして現実を知るよりはあなたにとってもいいかもしれない」
「どういう意味ですか?」
彼女の目は動揺しているのが、手に取るようにわかった。
「さぁ?そのままの意味だけど?だって、芳乃ちゃん自分で言ったじゃない?間違ってると思うって。
だから、間違いに気付いたのなら引き返すチャンスじゃない?」
「……で、でも…私はあなたのご主人が好きなんです。二人で幸せになりたいんです。…だから、ご主人と別れて欲しいんです。お願いします。」
彼女は口にしてから、俯いた。
「芳乃ちゃん、私は芳乃ちゃんに幸せになってほしい。
でもね、これは芳乃ちゃんと私の問題で無いことは分かるよね?
まず、それを言うべきは彼よ。」
私は彼女を見つめたが、彼女は視線をそらしたままだ。
「あの…その…私」
彼女は純粋に主人の事が好きなのだ。
きっと周りの事が見えなくなっている。
誰だって幸せになりたいはずだ、自分の幸せを望むのは当然のこと。
でも、それは冷静さも必要なのだ。
私は紅茶を飲みながら昔を思い出した。苦い思い出だ。
「芳乃ちゃん、落ち着いて。
私は彼が別れを望むならいつでも別れるわ。これは私の意思ではどうにも出来ないことなのよ。」
主人は女癖が悪い。
次から次へと女性を騙してくる。
その騙された一人が私とも言える。
彼が結婚していることを知らないまま付き合っていた。
当時、私も彼の家に乗り込んだ事があった。
奥さんは笑っていた。
離婚するから、どうでもいいのよと。
私は彼に言いくるめられたまま結婚した。
そんな付き合いだ。
私は昔夢見た甘い結婚生活など訪れるはずがなった。
年をとっても彼は彼だった。
また同じ事を繰り返している。
愛してるか?そんなものはとうの昔の話だ。
いつでも離婚すればいい。
そう思いながら20年の結婚生活が過ぎた。
この芳乃という子の前にも乗り込んできた子はいるし、主人には他にも彼女がいる。
それでも彼は絶対に私と別れないつもりだ。
離婚を切り出した時も必死に誤魔化していた。
何度となくそれを繰り返した20年。
それでも仲が悪いわけではない。
普通の会話も他の家庭以上にあると思う。
これはこれでこんな家庭も世の中に存在していても良いのかと私は思っている。
「彼には話をしたの?」
「…彼は奥さんとは別れない。別れられないと…だから、だから…」
彼女は目の前で泣き出す。
何で彼はこういう残酷なことを……
「ごめんなさいね。彼はそういう人なの。」
彼女が帰る背中を見つめながら、そっと溜息をつき見送った。
「私はこの手の女が嫌いだ。
自分の立場を考えないで突っ走るタイプは愚かに思えてしまうから。」
この言葉は昔の自分を思い出すから、嫌いなんだ。
私は目の前にいる女性に知らぬ間に自分と重ね合わせていたのかもしれない。
人の幸せを奪い幸せになろうなんて都合の良い話だ。
私も同じことだったのだ。
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