ルーズベルト亡き世

エトーのねこ(略称:えねこ)

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東欧協定1936/12/20(?)

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 1936年12月のことである。日独防共協定を結んだその足である画期的な協定が結ばれた。通称、「日波協定」と称されるそれは、ドイツとの協定は飽くまでも防共協定である旨を考慮した上でそれが同盟関係に発展しないであろう有力な説明であった。その、協定相手とは……。
「今ひとつ、日本の意図が読めんな……」
 呟くナルトヴィッツィ。何せ、日独防共協定を結んだ翌週のことなのである、彼が訝しむのも無理は無かった。だが、外交文書として彼の手元に残った文面は要約すると以下の通りだ。
「東欧北欧の皆様へ、世界共通の敵であるソ連を倒すためにご協力ください。その代わりと言ってはなんですが、ドイツ相手の交渉は、我らにお任せ下さい。」
 それは、日独防共協定がそこまで重要な同盟関係ではないことを意味した。何せ、その文面を額面通り信じるならば、日独防共協定は飽くまでも防共のための協定であり、ドイツの東欧侵略を許す協定ではないからだ。
 無論、外交とは騙し合い、欺し騙され罵り合う関係をより口当たりをなめらかにしたものである。額面通り信じる莫迦は居なかった。……通常ならば。
 発言者が日本であることが、事態をややこしくしていた。何せ、日本の当時の外交評は「莫迦正直の律儀者」である。故に、ナルトヴィッツィはこの東欧協定に国運を掛けることにした。何せ、相手はかの日露戦争でロシアを屠り、第一次世界大戦でも縦横無尽に欧州を駆け回り、そして今尚世界最強の陸海軍や航空隊を誇る大帝国である、頼り切るのは拙いが、信用しておいても、決して損では無かった……。

「良いな宇垣、決して陸軍の利権など考えず、朕の良き臣でいてくれよ」
「ははっ!!」
 1937年1月のことである、廣田内閣が総辞職した結果、宇垣一成にお鉢が回ってきた。折しも、満州事変や五・一五事件、二・二六事件、国際連盟脱退など、様々な危険因子がこの時代の本朝を取り巻いていた。そして、大帝と後に讃えられる昭和帝は、ついに西園寺の意見に折れた。
 そして、1937年1月25日、宇垣内閣が誕生した。その主要大臣は以下の通り。
首相:宇垣一成
外相:石井菊次郎   内相:長谷川清   蔵相:藤井真信   陸相:梅津美治郎   海相:堀悌吉
法相:信夫淳平    文相:伊東精一   農相:石橋湛山   通相:山下奉文    鉄相:末次信正
 通称が「決戦内閣」と呼ばれたのは、この混迷の政局にあって、超党派内閣にして、古今未曾有の適材適所にして有能精鋭揃いの、大日本帝国の奇蹟とも称された内閣だからだとされている。事実、この大日本帝国第三十三代宇垣内閣によって未曾有の大戦争は防がれたのだから。
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